繊細で些細なことですぐ反応してしまい気苦労が絶えない気質であるHSPの人は、HSPだからと言って働かずに毎日暮らせる…というわけではありません。
普通の社会人同様に、どこかに勤めて日々の生活を送るために社会人として働いているものです。
また、社会人として生きていく上では、仕事ばかりをこなすだけではなく、歓迎会や忘年会・新年会などの飲み会や宴会に顔を出すことも、円滑な社会生活や人間関係、コミュニケーション能力を身に付けるためには必要です。
しかしHSPの人は、飲み会のように多くの人が集まり、たわいもない雑談や交流をする場面は刺激が多すぎるため苦手としている人が多くいます。
また、飲み会会場での話し声、騒々しい雰囲気そのもの、アルコール、タバコの臭いなどに関しても敏感に反応してしまい、人知れず飲み会で消耗してしまうこともあります。
今回はHSPの人が抱える飲み会に抱く悩みとその対策についてまとめました。
HSPの人が飲み会に感じる辛さ
何気ない雑談をしなければいけない雰囲気が苦手
HSPの人には、人と話す場面になると
- いまどんな話題をすることが望まれているのか。
- どんな話題ならこの場の雰囲気を壊さずに済むか。
- この話題を話したら他の人はどう感じるのか…。
と、自分が話したらその場がどうなってしまうのかについて一人で考え込んでしまうことで、人知れず疲れてしまうことがあります。これは、コミュ障な気質ゆえのものとも言えます。
なお、事務的な会話やミーティングなどの議題が決まっている話なら、そこまで苦手意識を感じにくく精神的にも楽に感じます。
しかし、飲み会のみたいにテーマが決まってなくたわいもない話をする場面になると、言葉につまってしまいうまく話せなくなる、過度に緊張しすぎてうまくおしゃべりができなくなってしまいます。
…かと言って聞き役に徹するにしても「なにも話をしていないので、変に思われていないか」と周囲に対して疑心暗鬼になってしまい、話し合いの場そのものに苦手意識を感じてしまうこともあります。
話し声、雑音が多すぎて情報過多になる
飲み会の場には、当然ながら自分以外のお客さんや店員さんもおり、その話し声が絶えず耳に入ってくるものです。
とくに大学生や若者がいて奇声や悪ノリをしているのが傍から見てもわかる場合や、ひどく酔っ払って周囲に迷惑をかけている人が出ている場合は、自分に関係ないことだと分かっていてもそのことが気になりすぎて消耗してしまいます。
飲み会という場面の特徴としても、普段の仕事のように静かで落ち着いた場になることは現実的ではなく、羽目を外したりお祭り騒ぎをするように賑やかになるのが普通であるため、身も蓋もない言い方をすれば、HSPの人は飲み会そのものが根本的に合っていないともみることができます。
お説教、大声で話す人にビクビクしてしまう
HSPの人は自分が怒られる場面や自分以外の誰かが怒られている場面に対して強い苦手意識を感じます。
飲み会では、アルコールが入ったことで気分が増長し、自分がお説教を食らったり自分以外の誰かがお説教を食らってしまうことがあるものですが、HSPの人にとってはこのお説教が苦手であり飲み会が辛く感じることがあります。
また、共感性羞恥のように、自分に関係のない他人の飲みの席での会話(お説教)であっても、その会話がさも自分に向けて言われているように感じる、聞こえてくる話し声や話のトーンからわかる話し手の感情が、まるで自分に向けて言われているように感じることで疲れてしまうのです。
アルコール、タバコの臭いに不快感を感じる
HSPの人は話し声や雰囲気のほかにも、アルコールやタバコの煙、臭いなどの味覚・嗅覚で感じる物質的な感覚に対して過敏に反応することで不快感を感じる人もいます。
なお、若者のお酒離れやたばこ離れ、アルハラやスメハラなどの言葉が広がったことで、飲酒・喫煙をしない人の立場もある程度確立されてはいますが、それが自分の所属している職場で認められていなければ、HSPの人は生きづらさを感じてしまうものです。
とくに男性のHSPの場合は、「男なのに繊細なのは男らしくない。酒やタバコでネチネチ言う人はノリが悪くて集団の和を乱す」と思われることから、合っていないのにもかかわらず無理に飲酒・喫煙をすることで、しんどさを抱えてしまうこともあります。
飲み会の後に心身ともにぐったりしてダウンする
飲み会が苦手と言っても、飲み会時にずっと嫌そうな表情を浮かべていれば、せっかくの雰囲気を壊してしまう原因になります。
そのため、自分にとっては合わない雰囲気であっても無理にテンションを上げて盛り上げようとしたり、自らの「繊細」というキャラを使っていじられキャラに徹するなどの慣れない行動を飲みの席でしてしまうことで、心身ともに疲弊してしまいます。
これにより「普段は物静かなのに飲みの席ではノリがいい」とキャラが定着することで職場内でのポジションは安定しますが、一方で自分の気質にあっていない行動をしていることから人知れず疲れたり、「本当は繊細なことで苦しんでいる」という気持ちが理解されないもどかしさを抱える原因にもなります。
HSPの人の飲み会への対処法
飲み会に参加するにしても、そのせいで辛い思いをしてしまうばかりでは状況は改善しません。
休肝日を作って肝臓を休めるように、飲み会に対して自分なりに疲れないためのルールを作っておくことが、飲み会で心身ともに消耗しないために重要です。
一次会だけに絞って参加する
飲み会が二次会、三次会と続くことが多い場合は、一次会だけに絞って参加するのもルールの一つです。
大抵の飲み会の場合、一次会は多くの人が集まり仕事を円滑に進める上でも欠かせない会である一方、二、三次会は気の合う人や同期・同じ部署などで行わものであり、普段から交流がある人同士なら無理に付き合ってまで参加するものでもありません。
また、一次会だけに限定しておけば、早めに家に帰って飲み会で失った体力を回復できたり、余計な出費が抑えられるというメリットもあります。
歓迎会・忘年会・送別会などに絞って参加する
普段から行われる飲み会は不参加で、歓迎会・忘年会(新年会)・送別会などの節目の飲み会だけに絞って参加するのもルールの一つです。
飲み会はただお酒を飲むだけの場面ではなく、職場における人間関係の把握や構築をするという側面もあります。
ですので、より多くの社内の人が参加する節目の飲み会にだけは顔を出しておくことは、職場で仕事を円滑に進めるためにも、参加すると決めるのもやり方の一つです。
禁煙席や個室など静かで落ち着けるロケーションを選ぶ
もしも自分が幹事となって飲み会のロケーションを自由に決めることができたり、飲み会場所に対して提案ができる立場ならば、禁煙席や個室などの刺激が少なく落ち着けるロケーションを選ぶのも方法の一つです。
社会人と言っても学生時代のような、騒ぎ立てて羽目を外すような飲み会ばかりが飲み会ではありません。
時には高級感あふれる和食のコース料理を個室で楽しむという贅沢をして、上品な雰囲気を楽しむといった趣向を凝らした飲み会をセッティングしてみるのも、大人ならではの楽しみとも言えます。
無理に会話に参加しようとしない
飲み会で特にテーマが決まっていないたわいもない話をする雰囲気になった時は、無理に話に加わって盛り上げようとせず、聞き役になってうまく乗り切るのも方法の一つです。
飲み会だと、どうしても「何か話をして場を盛り上げなければいけない!」と感じて、無理に飲んでテンションを上げてスベってしまったり、慣れないキャラを演じたことを、冷静になってから一人反省してしまうことはあるものです。
そういった反省があるのなら、しっかり活かして聞き役メインで参加したり、ほどほどに酔うに留めてその場や酒に飲まれないようにすることも大事と言えます。
場合によっては飲み会がない職場や働き方を選ぶのも手だが…
HSPの人に限ったことではないですが、飲み会が苦手な人は飲み会がない職場を選んだり、独立して在宅で働けば、飲み会のストレスとは無縁の生活を送ることができます。
しかし、普通に正社員として働くのと比べると、独立してフリーランスとして働くのは
- 収入が不安定
- 自制心がないと怠けてしまう
- 孤独感や不安感が強い
- 確定申告などの事務・雑務を自分でやることも必要
などのハードルが高く、簡単におすすめできる…というものでないと感じます。
飲み会や仕事での人間関係が苦手と感じているときは、何としてでも会社に雇われない生き方をしたい、好きなことで生きていきたいという気持ちが強まって悶々とすることがあろうかと思いますが、自分のその後の人生に関わることなので衝動的に決めないことが長い目で見れば大事だと思います。
ネットやSNSだと脱サラして成功した話をよく見かけますが、その話は「脱サラして成功した」というネタで脱サラしたい人に狙いを定めた胡散臭いビジネスだったというケースもありますので、なるべく落ち着いて慎重に自分のキャリアを考えるのはHSPに限らず大事だと感じます。
参考書籍