大学で心理学部に進学したが、心理職に就くのを断念した理由・背景について

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筆者は某国立大学の教育学部の中の心理学部(というかコース)へ進学し、卒業した経歴を持ってはいますが、現在は心理系の仕事(代表的なところで言えばスクールカウンセラーなど)とは全く関係のない仕に就いています。

大学に入学した当初は、時代の流れとしてカウンセラーや心理学に関する職のニーズの高まりもあって、なんとなく「心理に関わる職に就くのだろう」という淡い思いを抱いていたものの、在学中の研修などを通して、その思いは消滅しました。

今回は、そんな心理学部に進学しながらも、心理職に就くのを断念した理由について、お話いたします。

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実習経験で人と関わることの難しさを痛感

筆者が在籍していた大学の心理学部のコースでは、1年は一般教養と教員養成コース(幼児教育・小中高等学校)の学生と一緒に講義を、2年以降は心理学部独自のカリキュラムを履修。

そして、心理学部では児童養護施設やフリースクールなど、複数の実習先に行くことが必須となっておりました。教員養成コースにおける、小中高等学校への教育実習に当たるものと言っていいでしょう。

しかし、その実習先にて、家庭などの養育環境の凄まじさ、心に傷を抱えた子供たちと関わることの難しさ、複雑さを知ってしまった。「迂闊な気持ちで踏み込んでならないし、ましてやそんな気持ちで仕事にするのはもってのほか」という、一種のカルチャーショックに近いものを味わいました。

誤解を恐れずに言えば、養育環境なり心に問題を抱えている子供たちに、仕事として長期間に渡り関わり続けるだけの義務や責任を果たすだけの度胸の無さを痛感したといいいますか、根気よく関わり続けるだけの意気込み、使命感、自信が自分には無いように感じてしまった。

その結果として、心理系の仕事に就くことそのものに対する意欲が失せてしまい、院進学はおろか心理職そのものを断念するという結果になりました。

他の志の高さや強い使命感を持っている学生の方々から見れば、筆者のような人は実に中途半端で軟弱な意思しか持っていない、まさに教育学部生の反面教師のように見えるかもしれません。

心理学そのものは興味はあるが、悩みを抱えた他人と関わることへの興味は別だと悟った

研修を通していく中でもう一つ感じたのが、心理学そのものには興味はあるものの、それを応用した知識や技術を必要としている人と関わることについては、興味や熱意がそこまで沸かなかったということです。

筆者自身、高校時代の時から現代社会や哲学、倫理など、心理学の要素を感じさせる教科(主に社会科)に対して興味があった。そして、テストや模試で比較的いい成績を残せていたので、大学選びの時は心理系の学部の有無に注目していました。

加えて、その当時はうつ病や精神疾患、発達障害、スクールカウンセラーに関する情報などの需要が、なんとなく上がり始めそうであった…そんな、心理学に対する追い風が吹いているように感じられた時代でした。

また、簡易な心理テストや血液型占いなど、心理「学」を名乗れないにしても、人の心理に関連するネタがブームになっていたこよ。これらもまた、筆者の進路選択に大きな影響を与えていたと、過去を振り返って感じています。

現に、大学の講義にて心理学に関する講義を聞くことやレポートをまとめることは、非常に性にあっており、そこまで苦痛を伴うものではありませんでした。

一人で黙々と文献や書籍を漁ったり、教授や学部生と心理学について話すことについては、たいへん充実した時間を過ごせていたと感じています。

しかし、上でも述べたように実習を通して、精神的・社会的な悩みを持っている人と関わることの難しさを知り、心理系の仕事に就くことを断念しました。

いまにして思えば、心理学の知識を仕事に還元し他者と関わることを主とする現場向きの人間ではなく、心理学という学問そのものを一人で探求する方が向いている…つまり、学者気質な部分が、筆者は強かったのではないかと感じてます。

給料・待遇面での魅力の乏しさも断念した理由の一つ

そして、心理職の断念した理由としては、(身も蓋もありませんが)給料面、待遇面の魅力が他業種と比較して非常に欠けていることです。

そもそも、医学部ではなく教育学部の中の心理学コースにすぎず、開業医になるという将来図は、まず描けない。

スクールカウンセラーになるにしても、その多くは非常勤であり、安定した収入が確保できるとは到底言い難い。加えて倍率も高いので、ますます仕事にすることのハードルの高さが顕著。

臨床心理士の資格を取り、開業カウンセラーとして活躍するにしても、仕事が軌道に乗るまで不安定な時期を過ごすことを考えると、これもまた働き方の候補から除外してしまった。(そもそも、必ず軌道に乗ると言い切れないのは自明)

もちろん、病院や児童養護施設などの組織に所属して働くことも考えられたが、上でも触れたように現場で働けるだけの意欲、熱意、度胸はなかった。

そんな給料面、待遇面、意欲や熱意の問題などが複雑に絡み合った結果、筆者は心理学を大学で学んだものの、現在心理とは全く関係がない仕事…それも、言い方は悪いが大学に行かなくても問題なく出来ている仕事に就いている次第です。

余談 自分が卒業した大学の心理学部が無くなっていた件

最後に余談になりますが、つい先日に在籍していたし大学の心理学コースが消滅していたことが判明。そのことが、今回の記事を書こうと心に決めたきっかけです。

自分が通っていた学部が無くなるというのは、なんだか寂しいものですが、心理学部が消滅してしまった理由や背景については、筆者なりに思いつく点が多々あります。

  • 心理学コースという学部そのものが、社会においてそれほどニーズの無いものとして見られるようになっている可能性。社会的・経済的な発展に貢献してはいるが、医学部や理系学部などの学部と比較すると、心理学は非常に地味である。
  • そもそも教育学部の中の心理学コースであるのにもかかわらず、(筆者含め)教員や教職関係以外の道に進む人がさほど多くないという状況。教員不足が叫ばれている昨今、教職とは無縁の仕事に就く人を多く輩出するコースは、非常に肩身が狭かったであろうことは容易に想像できる。
  • もちろん、心理学という学問自体は存在意義はあるものの、その学部を活かした仕事につく人材を大学側が輩出できていたとは言い難い。専門知識を学んだ学生が、即戦力として活躍することを期待する昨今の状況に、大学・学生が熱心に応えていたとはお世辞にも言えない。

以上の理由により、心理学部そのものの存在意義が疑問視され、消滅されるに至ったのだと筆者は推測しています。

現に大学にて心理学を専攻しながらも、現在は全く心理職とは関係のない仕事に就き、心理学そのものを個人的な趣味レベルとして嗜んでいる筆者だからこそ、「心理学コースがなくなるのも、まぁ無理はないよなぁ…」と、率直な感想を抱く次第です。

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