友達(friend)のフリをして近寄りつつ、実は他人を貶めたり支配しようとする敵(enemy)の側面を持っているフレネミーは、職場の人間関係においては非常に困った存在でしょう。
同僚・同期として接する時は自分の足を引っ張ったり手柄を横取りされるという実害を被る。そして、上司としてフレネミーな部下に接する場合には「同僚の手柄を横取りするような人物を評価してしまう人を見る目がない上司」とフレネミーに悩まされている他の部下から思われて、人望を失うリスクがあります。
学生時代のフレネミーとは違い、職場でのフレネミーは、金銭的な利益や社会的信用の失墜という、その後の人生のみならず現在の生活状況をも大きく左右してしまう損失を招くため、厄介さは際立ちます。
今回は、そんな職場のフレネミー問題について、お話いたします。
目次
金銭面、生活面での損害に直結しやすい職場のフレネミー
職場におけるフレネミーは、同僚のように対等な関係で成り立つ集団において、
- その集団内での手柄を独り占め&横取りする。
- 自分の気に入らない同僚の根も葉もない悪口や噂を広める、周囲が過小評価するように仕向ける。
- 同僚が困っていても手助けをせず、孤立して困り果てるように仕向ける。
- 必要な連絡事項を同僚に伝えようとしない。あるいは、連絡そのものが非常に遅い。
- しかし、表面的には同僚に対して優しく「自分は味方ですよ」という態度を見せる。自分の醜さを覆い隠すための演出が上手。
- 上司など自分を評価する人物に取り入られようとゴマすりをする。
など、友達と敵の二つ役割の演じ分けをしつつ、個人的なの利益や手柄を増やすために自分勝手な言動をする困った存在です。
それゆえに、そんなフレネミーが同じ職場の、それも同僚・同期として入ってきた場合は、フレネミーの悪行の数々に振り回されて疲れるだけでなく、フレネミーのせいでいつしか自分の職場内での評価や評判は下がってしまい、職場にいづらさを感じてしまう。
下手をすれば人間関係の居心地の悪さから、メンタル面の不調を招き休職or退職せざるを得なくなり、金銭面・生活面での安定を失うまでに追い込まれてしまうことも起こりうる困った存在です。
冒頭でも触れているように職場の被害は金銭面、生活面での損害に直結するため、学生時代のフレネミーと比較すると、社会人でのフレネミーがいかに厄介な存在であるかが理解できるでしょう。
フレネミーが出世して権力を手にしてしまう事の怖さ
仮に職場をやめずに済んだとしても、職場内にてフレネミーがうまく立ち回って上司や他の同僚からの高評価を受けて、ある程度の立場や権力を手にしてしまうと、フレネミーの自分勝手な言動がエスカレートすると同時に、権力を有しているために異論や疑問の声が出にくい環境が作られてしまいます。
早めに出世して部下を持とうものなら、今度は同僚ではなく部下の手柄を横取りする、気に入った部下は厚遇し気に入らない部下は冷遇する、立場に物を言わせてハラスメントに及ぶなど、自分勝手な言動で部下を不当に虐げてしまう恐れがあります。
また、そんな格上の存在にはへつらい、格下の存在に厳しく当たるフレネミーに嫌われようものなら、出世が遠のく不安、面倒事を押し付けられる役になる不安、職場内での居場所を失い孤立する不安など、あらゆる不安を感じてしまうからこそ、多くの人は(フレネミーに反感や不満を抱きつつも、それを表沙汰にせず)フレネミーの人に従うようになります。
要するに、フレネミーに対するイエスマンが出てくると同時に、イエスマンにならない人には排他的になってしまいます。フレネミー視点から見れば、まさに自分が中心の居心地のよい関係かもしれませんが、傍から見ればフレネミーという名の裸の王様を擁護する歪んだ人間関係を形成してしまうのです。
パワハラ、セクハラの温床になりやすい
上でも触れましたが、フレネミーが出世して権力を持つようになると、その権力に物を言わせてパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、モラルハラスメントなどの各種ハラスメントに及んでしまう可能性があります。
フレネミー自身は友達のフリをして近づくだけの社交性があるため、部下に接する時もその社交性を発揮して「自分は味方ですよ」とでもいいたげな態度で部下に接してくる。
しかし、長く付き合うに連れて、部下もとい味方に対してするとは到底思えないような行為をしてくるようになる…たとえば、
- 職場内にて誰かを孤立させようとする(=パワハラの六類型の人間関係からの切り離し、派閥に入らない人の排除)
- 立場を利用して自分の仕事やほかの部下の仕事を大量に押し付ける。
- 仕事に関係のないプライベートの詮索、口出し。恋愛関係の強要。
など、どれもハラスメントに当たるような行為を敵とみなした相手に見せる。味方らしくない一面を見せてくるようになります。
最初から冷たい態度を見せる人ならともかく、第一印象は非常にいい人であるために、ハラスメントを受けたとしても「これは社会人なら当たり前のこと」「これぐらいでハラスメントというのはさすがに失礼」と感じてしまいやすく、被害者が被害を受けているという実感が湧きづらい。
結果として、被害者がハラスメントを受けている事実を自覚せず、むしろハラスメントを受けている状況そのものを容認してしまうことが、職場にてフレネミーが出世してしまうことの恐ろしさです。
なお、余談ですが仕事にてメンタルを病んでしまう人を詳しくみていくと、その裏にはフレネミーのように関わることで不要なストレスを与えてしまう人物が背後にいるケースが多々あります。
フレネミーの存在を容認し続けることは、メンタルを病んでしまうようなブラックな職場の雰囲気作りに、その気がないとしても貢献しているとも言えるでしょう。
(とはいえ権力や立場を持ってしまったフレネミーを改心させることは、そう簡単なことではないのも実情。フレネミーを改心させるぐらいなら別の職場に移ったほうが楽と考えてしまうのも無理はないので、実に悩ましい問題である。)
上司の立場から見ても、フレネミーの存在は厄介
上司の立場から見ても、フレネミーな部下は悩みの種です。
同僚内でリーダーシップをとりつつも同僚の手柄を横取りする、気に入らない同僚には冷たく当たる、陰湿な嫌がらせや騙すような真似をしてしまう。
上司である自分に見せてくるポジティブな部分ばかりに気を取られて、お気に入りの部下とみなそうものなら、他の部下から上司としての見る目の無さや資質を疑われるようになります。
まっとうな部下の視点から見れば「あの上司は、仲間を蹴落としてまでのし上がろうとする人物の危なさに気づけない人」と思われたり「仲間を生贄にしてでも成果を上げる人を贔屓して評価してしまうので、心を開くのには抵抗がある人」だと思わてしまうのも無理はありません。
次第にフレネミーのせいで人間関係がギクシャクしてしまい、仕事の質や職場の雰囲気にも悪影響が出てしまう。フレネミーの陰湿な悪行のせいで抜けた人員をカバーするために新しく人が入ってきても、定着しづらい問題がつきまといます。
もしも、自分が上司・リーダーの立場で集団をまとめる役目を任されている場合、自分によく接してくる人が、フレネミーとして活動しており集団内の不和を生みだしていないか…について、よく見ておくことが肝心です。
そして、集団に所属する人達となるべくコミュニケーションをしっかりとり、フレネミーとして近づいてくる人がほかの人からどう思われているのかについての、情報を入手しておくことが欠かせません。
…なお、この行為事態、場合によっては集団の和をかき乱す犯人探しをしているように思えて気が進まないこともあるために、結果としてフレネミーの存在を把握そのものを放棄してしまう。仮に見つけたとしても見て見ぬふりをしてしたほうが楽であり無難とも言い切れないのが、職場のフレネミーの厄介な点だと感じます。
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