大勢の人の前で話すときに緊張感を覚えることは誰にもであることですが、話すことそのものに苦痛を感じたり、誰かと合うことまでにも苦痛を感じてしまう人がいます。
いわゆるコミュニケーションをするのが苦手な「コミュ障(コミュニケーション障害の略)」の人は、人と話すことが苦手で学校や職場で浮いたり、人間関係のストレスを強く感じてしまう傾向があります。
コミュ障という言葉は若者でよく使われていますが、年配の方でもコミュ障と思われる人も見かけます。ただし、その場合はコミュ障というよりも、人見知り、不器用、口下手と言ったほうが理解されやすいのではないかと考えています。
今回はコミュ障と呼ばれる人の心理や特徴、抱える問題点についてお話しいたします。
コミュ障の人に見られる心理・性格
真面目である
コミュ障の人は真面目な性格であるために、何気ない会話であっても「もっと相手を気遣った方が良かったかな」「あの時はああ言えば良かったのではないか」とひとりで反省を繰り返していることがよくあります。
会話に対して真摯に向き合うことは素晴らしいのですが、向き合えば向き合うほど自分の未熟さやいたらなさばかりに目を向けてしまい、気分が沈んでしまうことがあります。
反省するにしても、自分の改善点ばかりに目を向けてばかりで、自分から見て良かった点を振り返ることをしないので、話せば話すほど自分の改善点をいつも向き合い、話すことそのものへの自信を失いことになります。
完璧主義である
人前で話す場面にて「噛まずに完璧に話さなければいけない」「相手に好かれるように話さなければいけない」という完璧主義もコミュ障の人によく見られます。
完璧に話そうとする意気込みが強いあまりに、ちょっとした言い間違いや、相手に気づかれていないミスが起きると「自分は完璧ではない、ダメな人間なんだ」と自分で自分を強く否定してしまいます。
完璧を求め過ぎるあまりに、話をするときはいつも緊張感に襲われて、冷や汗が出たり心臓がバクバクしたりと、話すだけでも身体的な負担が大きくなってしまうこともあり。
なんとか話が終わったあとも、緊張の糸がほぐれてしまい燃え尽きてしまったり、ぐったり疲れて何もやる気が起こらない状態になることもあります
責任感が強い
責任感が強い人は、会話の中でも余計なことを言わなかったり、相手に失礼だと感じさせるような言葉に対して敏感です。
責任感のある人は誰かと話すときでも「自分は責任を任さられる人です」と相手に伝わるために、例えば品性を疑われるような言葉であったり、相手にとってタブーとなる言葉について事前に調べて、話の最中にそのことを言わないよう気を張り詰めることがあります。
例えば、仕事相手のライバル企業の話を宴会の場で言わない、恋愛関係やお金の話など下世話だと思われる話はしてはいけない。
もしも、そんな話をすれば、自分は責任感がない人だと思われてしまうので、人知れずストレスを抱えてしまうことも多く、どんなときでも話してはいけない話題について考えすぎる結果、話すことそのものが嫌になってしまうこともあります。
責任感のある人間として振る舞うためには、自分を厳しく律することが大事であり、それはコミュニケーションも同じ。
しかし、言いたいことが言えないという苦しさを募らせてしまった結果、話すのが苦手になる人もいるのです。
失敗を想像する癖がある
コミュ障の人は、自分が話をする場面について、ネガティブなイメージを想像してしまう癖があります。
例えば
- もしも、話の途中に噛んでしまって笑われたらどうしよう。
- 相手が自分の話に興味を持ってくれなかったらどうしよう。
- この話をしたら、ひょっとして相手を傷つけてしまうのではないか。
- 自分の話はわかりにくい、難しすぎるといわれるのではないか
と、まだ話してもいないのに、「もしも失敗したらどうしよう…」という悪い想像を働らかせてしまい、緊張したり気分が悪くなることがあります。
「もしも嫌なことが起きたらどうしよう」と思うことは予期不安とも呼ばれており、神経症(不安障害)の人によく見られる考え方のひとつでもあります。
話すことへの予期不安が強まると、話すことを考えただけで気持ちが悪くなったり、人と会うだけ気分が沈んでしまう事態に発展してしまいます。
コミュ障の人が抱える問題
会話がうまくできず職場や学校で孤立してしまう
コミュ障の人は会話がうまくできない、または会話そのものがコンプレックスになってしまうことから職場や学校などの人間関係が孤立してしまうことがあります。
職場で孤立してしまうと、仕事を回されない、組織全体での意思疎通が取れず迷惑をかけてしまう、取引先などの社外の人と話す場面でミスをしやすいなどのトラブルが起こす原因となります。
学校で孤立してしまうと、いじめのターゲットとなってしまう、不登校や引きこもりになってしまう、友達がいないことがコンプレックスになってしまうなどのトラブルが起こす原因となります。
もちろん、友達がいないことや孤立することそのものが絶対悪いというわけではありませんが、仕事や学校などの集団生活をする場面において孤立してしまうことは、集団に迷惑をかけるだけでなく、自分自身で生きづらさを増やしてしまう側面があるということを頭の片隅にでも入れておくようにしましょう。
電話やスピーチが苦手
コミュ障の人が働くとなると、電話やスピーチなどの話す場面で強い不安を感じてしまうことがあります。
電話のように相手の顔が見えず、声のトーンや喋り方だけで話をしなければいけないのは、コミュ障の人に対面で話すことよりも難しく「一体何をどうやって話せばいいのかわからない」と困り果てることがあります。
また、スピーチの場合は大勢の人に見られながら自分の話をすることに過度に緊張してしまい、うまく話せなくなる、声が震えてしまい、スピーチができなくなることもあります。
友達ができにくく悩み事を一人で抱え込んでしまう
コミュ障の人は、人と話すのが苦手で人付き合いに苦痛を感じるために友達ができにくい、あるいはいないということがよくあります。
友達ができなくなると、自分が困ったときに身近に相談できる人がおらず、一人で抱え込んでしまうことがよくあります。
仕事の場合なら、困ったことっや誰かの協力が欲しい場面も相談できないので、仕事を抱え込んで自分で自分を追い込む癖もあります。
また、相談することも見方を変えれば誰かとコミュニケーションをすることに変わりはありません。
コミュ障の人は、たとえ自分が困ってて助けを求めるための相談であっても、人と話すことそのものに強い不安を感じるために打ち明けることができず、一人で抱え込んでしまいます。
人付き合いが怖くなり引きこもりやニートになることも
コミュ障の人は人付き合いそのものが怖くなる、人と会うことが怖くなり、引きこもりや不登校、ニートになってしまう事もあります。
人と話すことに恐怖感を覚えると、例えば休日が終わる頃になると頭の中が人と会うことばかりで一杯になり、不眠、吐き気、倦怠感、めまいなどの症状に襲われる事もあります。
症状がひどくなると学校や仕事にいけなくなる、日常生活に支障が出てしまうこともあります。
コミュ障は社会不安障害に繋がる可能性も
コミュ障に見られる人と話す事への不安が強まると、社会不安障害を引き起こすことがあります。
社会不安障害とは、人付き合いや社会と接することに不安を強く感じて、日常生活に支障が出る症状のことをいいます。
社会不安障害は対人恐怖症とも呼ばれることがあり、ストレスやショック、疲労によって起きる不安障害の一種です。
人付き合いが苦手で社会生活を送れなくなってしまった場合は、ひとりで抱え込まずに、心療内科などを受診して投薬治療や心理療法などの適切な治療を受けることで改善することがあります。
「コミュ障だから…」と言って自分の苦しさを諦めるのではなく、本当に困っていたり、普段から抱え込む癖があったり精神的に疲れてしまい日常生活に支障が出ている場合は、診療にかかったり、カウンセリングを受けてみるのも方法のひとつです。
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