どうしてぼっちがつらいと感じるのか

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友達がいない一人ぼっちで孤独な人のことをインターネット上では「ぼっち」といます。

「ぼっち」という単語は最近はインターネット上だけでなく、リアルの生活でも気軽に言う人が出てきており、自虐を込めて「実は学生時代はぼっちでして… 」と口にする人も多く見かけます。

なお、一般的には一人ぼっちで孤独な状態をエンジョイしている人と言うものは少なく、寂しさや不安を感じて人とのつながりを求め、なんとかしてぼっちから脱出しようとする人が多いものです。

また、「自分はぼっちキャラで…」と孤独である事を個性として他人と関わりを持とうとする人も、根っから1人が好きと言うわけではなく、ぼっちと言う共通点を持つ人とのつながりを求めて孤独の辛さから回避していることがあります。

今回は、そんなぼっちのひとが感じる辛さの背景や心理についてお話ししたいと思います。

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「ぼっち」に辛さを感じる背景

ぼっちと言う言葉は、中高年の方よりも中高生や大学生、20代などの若者世代の方が使ういわゆる若者言葉の1つです。

ぼっちが辛く感じる理由も知るためには、ぼっちと言う言葉を使っている若者世代の孤独に対する価値観や人間関係に対する考え方について知識があると理解しやすくなります。

「友達の数=その人の価値」という考え

若者世代の考えの1つとして、「友達の数=その人の価値」という考え方があります。これは特にSNSで友達とつながっているのが当たり前の状況にある人によく見られます。

この考えは友達が多いければ多いほどその人には

  • コミュニケーション能力
  • 人望、人脈
  • リーダーシップ
  • 勉強やスポーツでの才能
  • 他の人の役に立つ心配りや気配りができる社会的に評価できる性格、

などの人間としての魅力があることだと考えてしまいます。

なお、心理学で言うハロー効果には、人間はある1つの才能やスキルといったものが優れていると感じるだけで、その人全体が優れているように錯覚してしまう現象があります。

SNSで友達の数が多いとは、ハロー効果により「なんとなく良い人である」「たくさんの友達がいるにふさわしい魅力や才能を持っている」と捉えるのです。

友達の数そのものが勉強ができる、運動神経がある、顔がイケメン(あるいは美人)、お金持ちであるなどの特徴と並ぶ価値あるものとして考えているのです

「友達ゼロ=その人には価値がない」と考えてしまう

友達のその多さがその人の価値だという考え方は、同時に「友達の数が少なければその人の価値は低い」という考えや「友達の数がゼロ(要するにぼっち)=その人の価値は無し」と言う考え方を招きます。

もちろん冷静に考えれば友達の数の多さそのものが、人間としての価値に直結している、人間の価値を決める唯一の材料である…と言うのは強引な考え方だと思います。

しかし、友達の数がその人の価値を決めると言う考え方を持つ人の集団の中に入ると、その集団の考えに対して自分独りだけ抵抗するのは難しく、また仮に抵抗すると集団の和を乱したことで孤立し人間としての価値を失う不安を感じることで、集団の価値観から逃れにくくなるのです。(=参考:同調圧力同調行動)

なお、リアルの人間関係では、具体的な友達の数と言うものがデータではっきりと表されるものではありませんが、SNSでは友達の数が客観的な数字で表されます。

そしてSNSには

  • 友達の数はリアルタイムで変化する。
  • 他の人と簡単に比較することができる
  • 不特定多数の人から友達の数が閲覧されてしまう。

というリアルの人間関係には見られない特徴があることで、友達をたくさん持つ人とそうでないとの格差が如実に可視化されてしまう特徴があります。

このような特徴もあって、なおさら「友達の数=その人の価値」と言う考え方を気にする人が多くなり、日頃から「他人から見て自分には人間としての価値があるか」と言う評価を気にせざるをえないのも無理はありません。

友達は数だけでなく質も問われる

友達の数が多ければ多い価値がある人だという考えは、量だけでなく質も見られます。

単純に友達の数が少ないのなら、積極的に馴れ合い駄サイクルに加わったり、媚びるように友達申請にすれば友達の数も増やすことができます。

しかし、増えた友達が

  • 陰キャラで口下手である
  • 運動神経が悪く冴えないである
  • ぼっち・友達が少ない人
  • スクールカーストで下層にいる人

というような、あまり友達として自慢できない人ばかりでは、いくら友達が多くても自分の人としての価値は上がりにくいと感じるのです。

それだけでなく、そんな質の低い人と友達になっている自分も同様に質の低い人種である、と周囲から評価されてしまう不安に悩まされるリスクもあります。

友達を増やすためにはなるべく魅力的な友達であることが大前提。

  • コミュニケーション堪能で社交性のある人
  • クラスや学校内、グループ内で立場がある人
  • 勉強やスポーツができる人
  • 気配りができる人

といった、自分の価値をより効果的にあげる質の高い人とのつながりが求められるのです。

「友達がいない人」と積極的に仲良くなろうとする人は少ない

ぼっちのレッテルがついてしまった人は、どうしても積極的に友達になるだけの材料が乏しい人だと判断されてしまいがちです。

上でも述べたように、友達作りはただ無機質に数を増やす作業感のあるゲームのようなものではなく、できるだけレベルの高い友達、お互いの評価を上げるwin-winの関係になる友達を増やしていくことが重要なのです。

また、ぼっちの人はスクールカースト(学校のヒエラルキー)の中でも最下層に位置することが多く、自分よりも格下の人と友達になるだけのメリットがないと感じて、友達作りの対象にされないことが多いのです。

そして、スクールカーストは基本的に1度下がってしまったら上がることが難しいために、スクールカースト上位・中位の人は、あえてリスクを犯してまで好材料に乏しいぼっちの人と仲良くなることにメリットを感じません。

それこそをカーストのランクが落ちてしまったら、今まで付き合っていた人たちから見下されたり、村八分からのいじめ・嫌がらせに発展するリスクもあるので、スクールカースト上位の人や自分と同じレベルの人との関係を構築していくのです。

結果として友達が多く質の高い関係になれる見込みのある人ほど友達を増やしていき、逆に友達が少なく質の低い人間関係になることが容易に想像できてしまうぼっちの人ほど、さらに孤立を深めてしまうのです。

なお、心理学では、一緒にいる人が魅力的であればあるほど自分の評価も高まると言う現象を同伴者効果と呼びます。

ぼっちの人はそもそもが孤独であるために、同伴者効果が起きず魅力的に見られない…すなわち友達になりたいと思われなくなると言う、厳しい現実があります。

ぼっちの辛さは誰からも「友達として選んでもらえない」ことにある

友達関係は数だけでなく質も求目られて選ばれると言う背景を踏まえて考えると、ぼっちの人は、自分は他人から友達として選んでもらえないことに辛さを感じているのだと思います。

学生時代にぼっちの経験をした人になら分かると思いますが、グループワークの場面で「2人組を作ってください」と言われ、自分だけグループが作れずにあぶれてしまったことがトラウマになっている人が多いものです。

「誰からも2人組になろうと声をかけられず選ばれなかった」ことが、ぼっちの人が感じる辛さ、ひいては大きな不安や恐怖の根源なのです。

選ばれないことの辛さは、2人組作りだけでなく、就職活動で多くの企業から不採用通知を受けたり、部活動でレギュラーメンバーとして選ばれなかった、と言うような場面でも多くの人が感じることでしょう。

社会や集団から選ばれないことは、言い換えれば自分は社会や集団から必要とされていないこと同じです。

友達として選ばれない事は、ぼっちの人にとっては身近な友達という狭い社会だけの問題ではなく、自分は自分が生きる社会や集団から必要とされていないことと同じです。

ぼっちはネット上の人間関係でも「選ばれないこと」の不安をより強く感じる

なお、ぼっちでもリアルの人間関係がダメなら、インターネット上で新たな人間関係を開拓して居場所を作ることもできます。

しかしインターネット上の人間関係は学校だけでなく立場・性別・国境を超えて自由且つ簡単に作れる一方で、友達関係を解消して絶交するのも簡単に来てしまうという特徴もあります。

今まで友達だった人から些細なことでアカウントごとブロックされたり、所属しているグループから追い出される、というリスクもはらんでいます。

また、インターネットの人間関係は自分自身が自由に付き合う友達を選べる一方で、自分が友達として付き合うにふさわしい人間であるかどうかを、他者も自由に見極め選べると言う側面も持っています。

自由に友達を選べるのは自分も相手も同じで、リアルの人間関係以上に友達として選んでもらえなかった経験を何度も重ねてショックを受けることも否定できません。

ぼっちの人は、リアルの人間関係で孤立してしまったからこそインターネット上の人間関係で一発逆転して友達を作りたいと言う人が少なからずおられると思います。

しかしネット上では気軽に人間関係を作って楽しく盛り上がれる一方で、ささいなことで関係が崩れてしまうと言うもろく壊れやすい側面も持っています。

誰とでも繋がれる一方で、急に友達関係を解消されたり、気軽であるがゆえに誰からも選んでもらえない危うさがあります。

また仮に友達ができたとしても、常に「私たち友達だよね」と言うようなベタベタとした距離感が近すぎる関係になって、お互いにお互いを束縛してネットやスマホに依存することもあります。

友達の数がその人の価値だと言う考え方を持っているぼっちの人ほど、ネット上でイキってとにかくアピールしたり、過剰なまでにオーバーリアクションなコメント返しをして繋がりを求める事が多いものです。

しかし、その行動の裏にはネット特有の自由すぎて不安定な人間関係ゆえに「一度友達として選ばれた以上は、何としてでもしがみついて関係を維持したい!」と言う、誰からも必要とされず選ばれない事を恐れる心理が隠されているのです。

参考書籍

https://mental-kyoka.com/wp-content/uploads/2019/05/hitonohukou-kyoukan.jpg

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