趣味を仕事にすると失敗してしまう理由を心理学で解説

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趣味でやっていたことが高じて仕事(プロ)になったものの、仕事としてやっていくとどうしてもやる気が継続しなくなったり、今まで好きだった趣味が一転して嫌いになってしまう…という人は意外と多いものです。

若い人の間ではユーチューバーのように「好きなことで生きていく」と、自分の好きなことや趣味を極めて生計を立てている人に影響されて「自分も好きなことだけで生きていく!」と意気込んでいる人も多いものです。

しかし、心理学の動機付けの知識を元に考えると、好きなことをただ極めるという目的から、お金を稼ぐ、生計を立てていくという目的に変わってしまうと、今まで好きだったことが長続きしなくなり挫折してしまう。

つまり「趣味を仕事にすると失敗してしまう」のです。

動機付けから見る「趣味」と「仕事」

一般的に、やる気やモチベーションと呼ばれるものは、心理学では「動機付け」と呼ばれています。

動機付けには、食欲・睡眠欲などの生理的な行動に働く生理的動機付けのほかに「内発的動機付け」と「外発的動機付け」があります。

内発的動機付け

内発的動機付けは、自分の興味があることや知りたいこと、好きなことや楽しみたいことに基づくモチベーションのことです。

自分の内面から湧き上がるモチベーションであり、いわゆる趣味を楽しんでいる場面では、内発的動機付けが強く影響していると考えられます。

外発的動機付け

外発的動機付けは、お金のため、生活のため、過去に受けた恩や義理人情のため、のように、義務や責任として行動しなければいけない状況に基づくモチベーションのことです。

大学に合格して学歴を取得するために勉強をする、飢えて死なないためにも働いて収入を得る、などの社会生活を営む上で当たり前のようにやっていることは、どれも外発的動機付けが強く影響していると考えられます。

また、「働く」という行動を詳しく見ていくと

  • 自分の働きっぷりにより業績が上がれば昇給や高評価を得る。
  • 逆に自分のせいで業績が下がれば、ペナルティや低評価を食らってしまう。

という、アメとムチがセットになっているものが多いものです。こうしたアメとムチによって、やる気を出させることも外発的動機付けにあたります。

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続きやすさは「好きでやる趣味」>「義務でやる趣味(仕事)」

アメとムチによる外発的動機付けは、一時的には意欲を高める効果はありますが長続きしないことがわかっています。

  • 報酬アップが見込めなければ積極的に仕事をしない
  • 妥当な評価が得られなくなれば仕事の手を抜く

など、自分の目的としているものが手に入らないことが明らかになれば、一時的に沸いたやる気が減退してしまうのは、簡単に想像できることでしょう。

一方で、「純粋に好きだからやりたい、興味があるうから」という内発的動機付けは、外発的動機付けと比較すると長続きしやすく、たとえ金銭・周囲からの承認・評価などの労力に見合う対価が得られなくとも続けることができるものです。

以上のことをふまえると、

  • 「まだ」趣味を仕事にせず、純粋な趣味として楽しんでいる。(内発的動機付け)
  • 「既に」趣味を仕事にしてしまい、金銭や周囲の評価を得るために、義務として趣味を行っている。(外発的動機付け)

とでは、前者の方が長続きしやすくなるのです。動機付けに基づけば、趣味が仕事になった時点で、純粋な趣味と比較して長続きしなくなるのです。

趣味の中に、仕事、金、評価・評判、義理人情、義務感などの、自分の興味や好奇心、探究心以外の他者や社会的な目的が入ってしまうと、趣味は仕事になると同時に外発的動機付けにより突き動かされるものになる。

そして、他者や社会的な目的が得られないことが明らかになってしまうと、今まで好きだったはずの趣味をやる理由や目的を見失ってしまい、簡単に挫折を招いてしまうのです。

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「好きなことを仕事にしたけど、やっぱり辛いです」と言いづらい状況もある

…とはいえ、実際に世の中を見渡してみると、スポーツ、芸能、芸術などの各分野にて、趣味をを仕事にしつつも、それに対して「好きなことを仕事にして満足しています」「趣味を仕事にできてとても充実しています」という、ポジティブな言葉を言っている人は多いものです。

こうした光景に対して(ややひねくれた目線で)見てみると、ひょっとしたら「実は好きなことを仕事にしたけど、やっぱり辛いです」とは正直言いづらい状況があるのではないかと思います。

今や大企業も安泰とは言えず、働いてもロクに給料アップが見込めず仕事に対して不安が募っている状況をふまえると、好きなことで食っていってる人というのは、多くの人(とくに若者)にとっての憧れの対象であり、まさに人生の勝ち組でありスター的存在のように見えるかもしれません。

しかし、世の中で好きなことを仕事にしている人は、内心は好きだった趣味が嫌いになっているのを感じているものの、その事を口に出してしまえば「好きなことなのに、いやいや仕事をやっている」という悪いイメージがついてしまうので、建前としては口にしたくても言えない事情もあるでしょう。

小中学生のなりたい職業ランキングで上位を占める

  • プロスポーツ選手
  • 芸能人(youtuberも含む)や声優
  • 漫画家やイラストレーターなどのクリエイター職
  • ファッション関係の仕事
  • ゲームクリエイター

など、どれもキラキラとして華やかな世界の仕事は、どれも子供にとっての遊びや好きなことの延長線上にある職業であると同時に、多くの子供に夢を与える使命を与えられている職業というイメージも強いものです。

だからこそ、最初は好奇心や興味で仕事をしていたと言っても「実は最近この仕事が面倒になってきまして…」といえば、子供の夢を壊してしまう恐れがあります。そのため内心は辛いし弱音も愚痴も吐きたい欲求があっても、建前としては「好きなことを仕事にして幸せです」と言わざるをえない状況があるようにも感じます。

また「好きなことを仕事にしている人は、皆充実していて幸せであるべきだ」という、好きなことを仕事にすることを夢見ている人達が求めているであろう耳障りのいい言葉を口にして、自分のファンをより喜ばして長く定着させることも、好きなことを仕事にしている人が生き残るための手段のようにすら思えてきます。

趣味を仕事にする上で覚えておくべきこと

それでも趣味や好きなこと仕事にしたいという人に伝えておきたいのが

  • 「好きなことを仕事にする=必ず満足、幸福が手に入る」と短絡的に考えないこと。
  • 「好きなことを仕事にする」ためには、やりたくない勉強や苦手な経験があることを理解しておくこと。
  • 「好きなことを仕事にする」と言って、自分がやるべき義務(勉強、今している仕事)を放棄することを自己正当化しないこと。

が大事だと思います。

また、趣味を仕事にすれば、内発的動機付けではなく外発的動機付けになってしまうという、知識を学んでいるだけでも、自分の仕事(=趣味)でスランプになったときに、なぜスランプになったのかという原因を自分で理解して、気持ちを落ち着けることにもつながります。

もしも、内発的or外発的動機付けという心理学の知識を知らないと「趣味を仕事にしたのに、弱音を吐いている自分はなんて弱くて、未熟で、情けないんだろう…」と、過度な自己嫌悪に陥ってしまい、そのまま趣味が嫌いになって脱落してしまうかもしれません。

しかし、知識として内発的or外発的動機付けを知っておけば「そもそも外発的動機付けによるものだから不調は来てもおかしくない」と、自分の気持ちに対して冷静に対処することが可能です。

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国立大教育学部卒、専攻は心理学。発達心理学、教育心理学、スポーツ心理学、社会心理学を中心に心理学に関する記事を執筆中。そのほかにも、人間関係やコミュニケーション、性格、スマホ、SNS、ゲームなどのあらゆるテーマを心理学の知識を用いて詳しく、面白い記事を書くことを心がけております。

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