「傍観者効果」集団になると見て見ぬ振りをしてしまう心理について

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いじめや嫌がらせ、暴力行為は人を傷つけてしまうということは分かっていても、つい見て見ぬふりをしてしまうことがあります。

そんないじめの現場を見て

  • 「誰か止めてやれよ…」
  • 「流石にやりすぎでは?」
  • 「いじめのことを先生に相談したほうがいいかな…」

と思いつつも、周囲の人は誰も自分から止めようとせず、極力関わらないように徹することは学校でも職場でもよく見かけます。

いじめを止めようとした結果、今度は自分がいじめのターゲットになるリスクを犯すぐらいなら、見て見ぬふりをして黙っておくほうが身の為なので、あえて無視するのは実に合理的な行動なのです。

このような一連の行動を心理学で「傍観者効果」と呼びます。

文字通りいじめなどの現場を傍観者として眺めてしまい、いじめやパワハラ、モラハラなどをエスカレートさせてしまう原因となってしまいます。

また、傍観者効果は自分がいじめられている場面でも働き、いじめの被害に対して周囲に助けを求めているのに、誰も手を差し伸べてくれない…という絶望的な状況になってしまうこともあります。

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傍観者効果とは

傍観者効果とは、いじめや事件、事故、災害などのトラブルが起きている状況において、周囲に多くの人間がいる場合、自分から積極的に行動を起こさなくなってしまう現象のことを指します。

傍観者効果という言葉が提唱されたきっかけとなったのは、1964年アメリカのニューヨークで起きたキティ・ジェノヴィーズ事件という殺人事件です。

この事件では、キティ・ジェノヴィーズが暴漢に襲われる光景を見聞きした付近の住民38人が、あろう事か誰も警察に通報しなかったためにキティは暴漢に再度襲われ亡くなってしまったという事件です。

殺人事件のように、警察に伝えなければいけない状況が起きているのにもかかわらず、「他に現場を見ている人がいるから、私じゃなくても誰かが通報してくれるだろう」という心理が働き、誰も通報せず見て見ぬふりをしてしまったと考えらています。

また、この事件は都会で起きたことから「都会の人間は冷たいから事件を無視した」という説が流れたこともあります。

しかし、傍観者効果に関する実験を行った結果、それは誤りであり「多くの人が見ていたので誰も助けなかった」とされています。

日本でも東京のような人がたくさんいる都会は冷たい人が多く、田舎のように人口が少ない場所は情に厚い人が多いと思われています。

しかし、傍観者効果を踏まえて考えると、都会の場合は人が多いため様子見している人も多く見かけるので、目の前でトラブルが起きても見て見ぬふりをしてしまいやすい。

逆に田舎の場合は人が少ないので周囲に様子見している人も少なく(もしくは0)という状態になり、無視できなくなってしまうのだと考えることができます。

都会、田舎ではなく、周囲に人がいる状況か否かで、人間は自分の行動を変えてしまうという事実を傍観者効果は説明しているのです。

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傍観者効果が起きる原因

傍観者効果が起きる原因は以下の3つの理由に分かれています。

責任の分散

人間は集団なると一人あたりの責任が分散して軽くなっててしまい、自分から動きにくくなったり責任感を感じにくくなってしまいます。

いじめのように、自分以外にも他に見ているクラスメイトがいるのだから、別に自分が先生にいう責任はないと考える。

また、自分以外にも無視している人はいるから別に自分だけが悪いわけじゃない、と自分を正当化して、いじめ解決に向けて何もしなかったことへの非難や罪悪感を意図的に減らしてしまうことがあります。

評価懸念

ほかの人が様子見をしている状態で、自分が積極的に行動したことで周囲から否定的に見られることを恐れることを指します。

いじめの場合、いじめられている人を助けると

  • 「しゃしゃり出てきて生意気なやつだ」
  • 「偽善者ぶって先生に気にいいられたいのか」
  • 「助けたあなたもいじめられるかもしれないのに…」

などの、自分に取ってマイナスな意見を言われることを恐れてしまうことが評価懸念です。

なお、評価懸念は「聴衆抑制」とも呼ばれることがあります。

多元的無知

ほかの人が積極的に動いているわけではないので、目の前の問題はすぐさま解決しなくてもよいと考えてしまうことです。

いじめの場合、自分以外にも見て見ぬふりをしている人が多くいることがわかると「いじめが起きているけど、別に今すぐ先生に言ったり、止めなくても大丈夫」だと緊急性のないことだ考えてしまうことです。

いじめの他にも、誰かが怪我をして倒れているのを見ても、ほかの人が素通りしているのを見て、救急車を呼ばなくてもいいと考えるなど、ほかの人の様子を見て、何もしなくてもOKだと判断してしまうことを指します。

他にも、球技スポーツで全員がボールを譲り合って見過ごしてしまうこと(いわゆる「お見合い」)も、多元的無知により傍観者効果が働いてしまったと見ることができます。

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傍観者効果と関わりのある心理学

傍観者効果は他の心理学で説明される行動や現象と深く関わりがあります。

その心理学用語の一部を説明していきます。

群集心理

群集心理は集団の中で生まれてしまう特殊な心理状態のことを指す言葉です。

人間は群れてしまうと、

  • 極端な行動を取ってしまう。
  • 思考や行動を攻撃的、過激的、排他的になる。
  • 気分が増長して、衝動的な行動をとってしまう。
  • 判断力が鈍ってしまい、集団の主張や行動に流されてしまう

などの行動をとってしまうことがあります。

大学生同士がつるんで調子にのってしまう。悪ノリしてしまった結果迷惑行為や犯罪を犯してしまうのも群集心理の影響だと考えることができます。

群れるとひとりあたりの責任感や罪悪感が薄れてしまうので、「赤信号みんなで渡れば怖くない」というギャグのように、一人ならできない悪事に手を染めてしまいがちなのです。

コーシャスシフト、リスキーシフト

人間は話し合うと、ときに意見が極端な方向に偏ってしまうことがあります。

リスキーシフトは意見がより危険でリスクの高いもの、革新的なものに偏ってしまうこと。

コーシャスシフトは意見がより安全でリスクが低いもの、保守的なものに偏ってしまうことを指す言葉です。

意見の偏りは、話し合う集団内の多数派によって生まれてしまい、少数派の人は多数派の意見に流されやすく意見が引っ張られてしまう傾向があります。

いじめの場合、最初はいじめに肯定的な人が僅かに多数派、いじめに否定的な人がやや劣勢であっても、次第に少数派の人が多数派の意見に引っ張られてしまうことがあります。

そして多数派に移った人は「いじめられる方にも原因がある」といじめに対して肯定的な見方をしてしまい、いじめそのものをエスカレートさせてしまうことがあります。

いじめが過激になるのは、集団内でより過激でリスクの高い主張にシフトしてしまったとも見ることができます。

役割効果

役割効果とは、人間は役割を与えられると知らず知らずのうちにその役割にふさわしいキャラになるように、自分の考え方や行動を変えてしまう事を指します。

リーダーの立場になればリーダーらしく振舞う。先輩になったら先輩風を吹かせ後輩に対し強く出る、などが例です。

役割効果を踏まえて見ると、傍観者という立場になってしまった場合、無意識のうちに傍観者らしくただ見ているだけで何もしないように、考えや行動を変えてしまうことが考えられます。

また、役割効果を元にすると、いじめっ子はよりいじめっ子の役割にふさわしく攻撃的な行動を、いじめられっ子はよりいじめられっ子の役割にふさわしくいじめっ子の言うことを聞くような行動を、無意識のうちに強めてしまうと考えることもできます。

公正な世界の信念

公正な世界の信念とは、私たちは無意識のうちに不幸な人にはそれなりの理由があると考え、悪いことをした悪いことが起きる、逆に良いことをしたら良いことが起きると考えてしまうことを指します。

例えば

  • いじめられる人は理由(性格、問題行動など)があるからいじめらるに違いない。
  • 貧乏な人は金遣いが荒かったり、お金にだらしないところがあるはずだ。
  • 勉強を必死に頑張れば進学や就職で明るい未来が待っているに違いない。
  • あの人は努力家だからいつか報われるはずだ。
  • 毎日必死に部活で頑張っている子達だから、きっと素直で真面目な子に違いない
  • ちゃんと正しい子育てをしたんだから、うちの子は嘘をつくような子ではない

と考えてしまうことを指します。

目の前でいじめが起きていても、「いじめられる原因があるから仕方ない」と納得して見て見ぬふりをするのは、公正な世界の信念が揺らぎ、「いつか自分もいじめられるのではないか」と不安にならないためという見方もできます。

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傍観者効果はネットやSNS上でも見られる

傍観者効果はネットやSNSでの人間関係でも見られます。

例えばネット上のいじめの場合、ネット世界は現実世界と比較して

  • 匿名で相手を攻撃できる。
  • 直接あったことがない相手でも攻撃できる。
  • どれだけの人が攻撃をしているかが数字でわかる。

といった攻撃する側にとって有利な特徴があるために、嫌がらせや罵詈雑言はエスカレートしやすくなります。

また、攻撃側に有利な状況ということは、評価懸念を強く感じやすい状況とも言えるので、下手に擁護してしまうと、今度は自分が攻撃対象になり炎上や個人情報などが一気に拡散されてしまうリスクがあります。

いわゆる身近な友達が炎上騒動を起こしても、知ってる人がみんなだんまりを決め込んでいるのは、自分のところに炎上の影響が出ることを避けるために、意図的に傍観者に徹して見て見ぬふりをしているのです。

ネット上では、攻撃の様子がリツイートやコメント、検索で引っかかったページの数など、数字で明確に分かるので、傍観する方もその数字を参考にして、この件は関わらないほうが身の為と判断してしまうのです。

国立大教育学部卒、専攻は心理学。発達心理学、教育心理学、スポーツ心理学、社会心理学を中心に心理学に関する記事を執筆中。そのほかにも、人間関係やコミュニケーション、性格、スマホ、SNS、ゲームなどのあらゆるテーマを心理学の知識を用いて詳しく、面白い記事を書くことを心がけております。

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