人は集団になると、一人の時では到底できないような突拍子もない行動をしてしまうことがあります。
例えば、群れて行われる悪ふざけや悪ノリがいい例です。
一人で相手をいじったり、からかったりすることはできなくても集団になると気持ちが大きなって平気で人をからかってしまう、よってたかっていじめや暴力を平気でしてしまうことがあります。
冷静に考えれば人をいじめや暴力や相手を傷つけることですが、集団になってしまうと悪いことだとわかっているのについ調子に乗って相手をいじめやすくなり、罪悪感が薄れてしまうことから、人を傷つけることに抵抗を感じにくくなります。
これらの行動は「集団心理」または「群集心理」と呼ばれており、いくら理性的な人であっても集団になると、普段では考えられないような馬鹿なことをしてしまい、人を傷つけたり犯罪に巻き込まれてしまうことがあるのです。
今回はそんな集団心理の特徴や恐ろしさについてお話いたします。
集団心理とは
集団心理は、人間が集団になった時に見られる特殊な心理状態のことを指します。
人間は集団になると集団の影響を受けさも自分は強くなった、偉くなったと過信してしまい、大胆な行動に出てしまいやすくなります。
また、集団になることで人間は冷静でいられなくなり判断力が鈍ってしまう、理性がなくなり感情的な言動をしてしまうことがわかっています。
集団心理は子供、大人関係なく人間であれば誰もが陥ってしまうものです。
ルールを知らない、自分をコントロールできない子供だけのものではなく、普段は真面目でとても落ち着いているはずの大人ですら、集団の意見やノリに流されて無責任な行動や、犯罪に手を染めてしまうことがあるのです。
集団心理の例
歴史上の出来事には集団心理が原因だと考えられているものがいくつかあります。
例えば
- 魔女狩り
- フランス革命
- 世界恐慌
- ホロコースト
などの大事件や大虐殺も、集団心理が働いたことが原因であるという説があります。
大事件や大虐殺とはいかなくとも集団心理が悪い方向に働くと…
- いじめ、集団暴行、ネットでの炎上
- 学生運動やデモ活動の暴徒化
- スポーツでの乱闘騒ぎ
- 株、FX、不動産など、金融商品のバブルやパニック売り
- カルト宗教、マルチ商法、自己啓発セミナー、絶叫するような社員研修
などに見られるような極端な行動を取ってしまったり、熱狂するあまりに冷静さを失い、衝動的で危険な行動をしたり、自分や他人を傷つけてしまう原因になります。
しかし、集団心理は悪いことばかりではありません。
例えば、一人では恥ずかしくて駅前に立って募金活動ができない人たちが集まることで、恥ずかしさが薄れてしっかり募金活動ができる…というように、集団心理が良い方向に働くこともあります。
しかし、恥ずかしさや薄れてしまうことで逆に「赤信号みんなで渡れば怖くない」というようにルール違反や迷惑行為に走ってしまうケースの方が集団心理の悪い見本として目立ってしまうことが多くあります。
集団心理で起きる行動の特徴
暴力的、攻撃的になる
集団の所属することで、他人に対して暴力的になったり、攻撃的な態度を取ることがあります。
例えば、一人ではへっぴり腰で何も相手に言い返せない人が、集団になることで自分が強くなったと感じて、相手を挑発したり暴力を振るってしまうということがあります。
他にも、アニメの『ドラえもん』でスネ夫がジャイアンと一緒になると調子に乗ってしまうように、集団になると「自分は一人ではない」と感じて、大胆な行動ができるようになるのです。
「虎の威を借りる狐」ということわざにもあるように、集団に権威やブランドがある場合は、それを味方につけて、相手を威圧したり自分の思い通りにコントロールしようとすることも集団心理が引き起こしていると見ることができます。
感情的・衝動的な行動をしてしまう
人間は集団に所属することで感情的な行動や衝動的な行動をしてしまう傾向があります。
例えば株価が高騰しているバブルの時、冷静に見れば「もう誰も高くても株を買う人はいない」という状況なのに、
- 「まだまだ値が上がりする」
- 「今買わないと損だ」
- 「早く買わないと、次買う時はもっとお金が必要になる」
と楽観的に見ている投資家多くおり、感情に任せて呑気に買ってしまうことで株価は上がっていきます。
指標で見れば買われ過ぎだと判断できるのに、それでも株価はどんどん上がり続けるバブルの状態は、集団心理によるものと見ることができます。
しかし、バブルが続かず崩壊したときは、一斉に値下がりしてしまい
- 「早く売らないと含み損が増えてしまう」
- 「もっと値下がりしそうから早く売らないきゃ損をしてしまう」
- 「株なんて今持っていたら危険だ!」
と、市場全体が混乱することでパニック売りがおきます。
そして、株価はナイアガラの滝のように垂直に急降下してしまうのも、集団心理によるものと見ることができます。
冷静に見れば値上がりしすぎた状態から妥当な値段に株価が下がったのに過ぎない、どこまでも底が見えず株価が下がっていく不安に投資家は次々と襲われ、株を手放す人が絶えず値段は下がり続けてしまうのです。
冷静な判断ができなくなる
集団に所属すると、一人のときと比べて冷静な判断ができなくなってしまいます。
例えば、流行に乗り遅れまいと豪遊するお金がに関わらず散財してしまったり、すべき必要もないのに他の人と同じ行動をとってしまうのです。
流行に流されやすい人は、周囲の人の行動や習慣に同調しやすい人でもあり、「みんなやっているから」とマルチ商法を断れなかったり、他の人と違う事をすることに強い不安や恐怖を感じて、冷静に考えれば間違っていることでも受け入れてしまうという特徴があります。
冷静さを失った行動をして気分が落ち着いた時に、「なんであんなアホな事をしてしまったんだろう」と後悔することも多くあります。
カルト化、思考が極端になる
集団になるといくら穏やか人でも思想や主張が攻撃的になったり、逆に保守的になってしまうなどの極端に走ってしまうことがあります。
これは集団の中で多数派の意見に引きづられてしまい、バランス感覚を失うために起きるもので、行き過ぎれば集団のカルト化、暴徒化に陥ることがあります。
もちろん最初は比較的バランスのとれた集団であっても、コミュニケーションを重ねるうちに僅かに多数派と少数派が生まれます。そして、少数派が集団から抜ける、あるいは多数派に寝返るったことにより、時間が経つにつれて集団の思考が先鋭化してしまうのです。
傍から見れば集団が極端な考え方に陥っているのが浮き彫りなのに、集団の中にいると自分たちが偏っている事に気づかず、むしろ集団外の人間の方が間違っていると感じて、考え方のギャップは広まり続けて集団そのものが社会から孤立してしまいます。
責任感や罪悪感が薄れる
集団で万引きや詐欺を行った…というニュースがたまに流れますね。
人間は集団になると、一人の時と違って責任感や罪悪感が薄れてしまいます。
一人よりも二人、二人よりももっと大勢の人(=共犯者)がいることで、「悪いことをしているのは自分だけではない」という誤った安心感が生まれてしまい、犯罪や迷惑行為をしやすくなってしまうのです。
当然ですが集団・個人に関係なく、万引きや詐欺をしていることに変わりはありません。
しかし、集団になるとたとえ犯罪であっても「自分だけでなく他の人もやっていたから…」と感じて、罪の意識や悪いことをしていると感じにくくなってしまうのです。
それだけでなく、「あいつも同じことをしているのにどうして自分だけ逮捕されるのか」と自己正当化したり、仲間内で言い争ってしまうことがあるのです。
集団心理は悪徳ビジネスや洗脳に使われることもある
集団心理はネットワークビジネスやマルチ商法、怪しい自己啓発セミナーで行われる洗脳でも使われることもがあります。
例えば、多く人が集まる自己啓発セミナーに参加して、周囲の人が一斉にセミナー講師の言うとおり拍手をしたり、それぞれの人に言えないはずかしい過去を大声で言ったり、挙句の果てには全員泣き始めるという異様なセミナーになることがあります。
傍から見れば異様な光景が広がっており、速やかにその場を離れたほうが安全ですが、セミナーに中にいると、異様な雰囲気に圧倒され自分の大声でコンプレックス言ってしまったり、感極まって号泣し、セミナーにいた人たちと一体感を感じてしまうことがあります。
そして一体感を覚得た後に、集団に流され高額商材の契約を結ばされたり、何度もセミナーに通ってあの一体感を味わうことに快感を覚えてしまうことがあります。
これはある種の集団への依存状態であり、集団に所属している以上はおかしいと感じても、大声で泣き喚いたり、高額商品を買うことへの抵抗がなくなってしまい、時間・金・労力を搾り取られてしまいます。
集団心理を利用したビジネスは、やたらと感情に訴える演出…例えば
- 挫折からの復活劇(うつ病→社会復帰して大金持ち)
- 最愛の人の死や「死」がテーマで感情に訴えかける話をする。
- やたらと感動をプッシュした感動話の押し売り
などの感情に訴えかけるテクニックを使って、参加者の感情を揺さぶって冷静な判断を失ったところで、契約に繋げようとすることがあります。
集団に属することのメリット・デメリットをよく知っておこう
集団心理から回避するためと言って孤独でなんでもこなそうとするのは辛いものです。
孤独だと不安や悩みを自分一人で抱え込むことになり、これもまた不安に駆られて衝動的な行動をしてしまう一員となります。
そんな事をにならないためにも、どこかの集団に所属して安心感を得ることは、メンタルを良好な状態に保つためには効果があるのです。
しかし、上にも書いたように集団にはメリットもあれば、暴走や過激かといったデメリットもあります。
もしも集団が暴走し出したらなるべく早めの段階で危険の芽を摘んで、過激にならないようにできるのが望ましいですが、もしもそれが難しくなり歯止めが効かなくなったときは、集団から距離を置いて、冷静差が戻るまで休むようにするのが対策のひとつです。
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