会社から命令で、自分の成長やメンタル強化のために外部団体が主催している「自己啓発セミナー」に行くサラリーマンは多くいます。
東証一部に上場している大企業に限らず、中小企業でも、外部のセミナーを利用したり、社員教育成専門のサービスを利用する経営者は多くいます。
しかし、そういったセミナーの中には、かえってメンタルを弱くしてしまう、自信や自己肯定感を奪い仕事のパフォーマンスを下げてしまうセミナーを行っているというケースもあります。
とくに、社会人になって間もない新卒の社員を中心に、メンタルに悪影響のある新入社員研修を行っていることが分かり、ネット上で炎上してセミナーの代表が責められたり、研修中のパワハラが原因で自殺をし遺族が提訴したケースもあります。
メンタルを強くするはずの自己啓発セミナーでメンタルを病む、自殺者が出てしまうようなセミナーには、カルト宗教やマルチ商法などで用いられるを応用した洗脳(マインドコントロール)のテクニックを使っているところがあります。(なお、マインドコントロールは飴と鞭が基本。)
今回は、洗脳まがいの自己啓発セミナー、研修にありがちな特徴とセミナーにハマる人の特徴をまとめました。
洗脳まがいにセミナーにありがちな特徴。
徹底的に自己否定をさせる
「たるみきった精神を鍛え直す」「新人に社会の厳しさを叩き込む」という目的で、相手の人格を否定するような発言をさせる研修は要注意です。
研修で行われる人格否定は、コンプレックスに思っている事を言って人格を傷つける。あえて失敗するような目標を出して、失敗した時に厳しく叱りつけるとパターンが多く見られます。
仮に目標を達成したとしても、けっして褒めずあくまでも叱りつけることで、研修を受ける人を精神的にに追い詰め思考力を奪うのが目的です。
パワハラやモラハラのような厳しい言葉をぶつけるだけで、同じような失敗を起こさせないための正しく反省を促しているわけではありません。
また、太っているとか顔が変などの容易に変えることができない外見に関するコンプレックスで人格否定をすることもありますが、これは研修の時間に限らず普段の生活でも決して許される行動ではない。
こういった普段なら理性や立場があるからこそできない人格否定をする状況自体、ある種の非日常的であり異常な状況といえます。
秘密や恥ずかしい過去を人前で暴露させる
セミナー主催者が自分の恥ずかしい過去の思い出を周囲に暴露させる指示をする場合は、注意する必要があります。
他人には言えない秘密…例えば、
- 借金がある
- ひどいいじめを受けていた
- 今まで恋人がいたことがない
- 離婚している
- 浪人・留年をした
など、あまり親しくない人には言いづらいプライベートな事を、親しくない会ってすぐの人に主張するのは精神的な苦痛が伴うものです
また、秘密を暴露するのをためらっている姿を見て、
- 「恥ずかしいことを人前で言うことで、精神的に成長する」
- 「ここで一生分の恥をかくことで、これからの社会人生活で起きるストレス耐性をつける」
と主張する人もいますが、恥ずかしいことを人前で話すのは、メンタルを強くする事にはなりません。
ここで、人には言えない秘密を知りたがる人の特徴として、「家族の間で秘密や隠し事はよくない。」として子供に隠し事をさせない親の例を出して説明していきましょう。
子供が思春期になったり、友達と仲良くなると子供が親が知らない秘密や隠し事を持つのは自然なことです。秘密を持つことは自分自身の世界を持ち、アイデンティティを作るのに大切な行動です。
一方、秘密は悪いものとして子供の秘密を知ろうとする親は、口では「子供が心配だから」「子供が不良になったり、悩んでいる可能性があるから」と言いますが、内心では子供の行動をコントロールしたいという支配欲求が強いといえます。
親からして見れば、自分の知らない秘密を持つ子供は、「秘密を持つこと=自分の支配への反抗」と考えています。
しかし、あくまでも子供を支配したいという気持ちは無意識のものであり、「子供が心配だから」という子を思う親心から行動しているため、秘密を知ろうと部屋に入ったり、勝手に携帯を覗くというデリカシーの無い行動で、子供の心を傷つけているという自覚はありません。
話を戻しましてセミナーや研修で秘密を暴露させることは、プライベートや人には言えない秘密を暴露させることで、アイデンティティを崩壊させて精神的な逃げ場を無くし、セミナー主催者に精神的に支配されるを許してしまうということになります。
そして、セミナー受講者は赤の他人に対して人には言えない弱みを握らてしまうからこそ、自然と「この人には逆らえない」という心理に陥ってしまうのです。
睡眠や休息の時間が短い
短期集中という名目で受講者に効率よく研修を受けさせるために、早朝から深夜にかけて研修プログラムを組んでいるところがところがあります。
しかし、このことはかえって睡眠時間や休息の時間が少ないために、研修を続けるうちに受講者はろくに疲労を回復する事ができずに、だんだん頭が回らなくなります。
当然、疲れていれば冷静に物事を考えることができなくなり、モチベーションやテンションが下がる、ケアレスミスが増えてしまう原因になります。
そのような弱っている場面を意図的に作り出すことで、セミナー主催者は受講者を批判して自己否定しやすい状況を作る事ができます。
また、頭が回らないから時を狙って、自分達の思考や叩き込むという方法も有名です。頭が回らないからこそ、自分で1から考えて行動するよりも、他人から命令されて行動するほうが効率的だと感じてしまうという事を分かって、あえて頭が回らないような状況をセミナーで作り出しているのです。
セミナーにハマる人は「正義感が強い」ことが多い。
このようなセミナーにハマっている人たちと何人も接する機会がありましたが、セミナーにハマっている人たちは、受講者・主催者ともに「正義感が強い」性格であると感じました
正義感が強すぎると「自分は正義、相手は悪」と考えてしまう
「正義感が強い」という性格は、一般的には人から好かれる良い性格の一つとして考えられています。会社員の場合、自分の都合や気分で勝手に動かれては業務の妨げになりますが、正義感の強い人は、その会社のルールや暗黙の了解をきっちり守るので高評価を得やすい正確です。
一方で正義感が強い人は、集団に馴染めない人や集団のルールを守らない人を見ると「(自分はルールを守っているのに)あの人は勝手な行動をして許せない!」と感じます。
この「許せない」という気持ちが強い人ほど、自分が所属する集団への忠誠心の強さを表します。
また、許せないという気持ちを抱くと「自分は正義、許せないと思う相手は悪」という考えに陥ってしまい、「相手は悪だからこそ自分は何をやってもOK」感じて、普段なら言わない人格否定や罵倒などの言葉を相手に言って傷つけてしまうこともあります。
このように強い正義感は無意識のうちに、「自分は正義」強い使命感や善意にというポジティブな気持ちで指導しているために、ひとりよがりになっていることに気がつきにくい、相手が嫌がっている事に気がつきにくくなります。
また、参加者同士でも正義感が強いために、参加者集団ができると帰属意識が強くなり、集団からはみ出る人に対して、自分から注意をしたりセミナー講師に相談して、自然と集団を引き締めようとする人も出やすくなります。
出会ってすぐの集団であっても、すぐに団結して異様に忠誠心が強くなるのは、正義感の強さが影響していると言えます。
セミナー講師は正義感が強い人がなりやすい職業
教師や部活動の監督、コーチのように「未熟な人間を育てあげる」と立場の人は、当然ルールを守る、教え子の手本となるべき人格や行動ができる人の方が向いています。
そのため正義感が強い人にとっては、教師や指導者、セミナー講師のような職業は適職と言えます。
また、社会全体として、年長者が最近の頼りない若者を、半ば強引にたるんでいたらしばきあげて育てるという事が正しいと考えている人も多くいます。そのため、自分の正義感が強すぎて「自分は正義、相手は悪」と考えが暴走しても、止められる人はそう多くありません。
行き過ぎた指導でも、「最近の若い人は頼りないだけ」「自分が若い頃はもっと厳しかった。この程度で根を上げては甘えているだけ」「愛があるのだから体罰や行き過ぎた指導ではない。」と擁護されてしまい、指導した人が反省するような声が届きにくいという事はよくあります。
セミナーの場合、自分にとって合わないと感じたら途中でやめる、二度と参加しないという方法を取るのが当たり前で、わざわざ「あなたの指導方はここをこう直したらもっとうまくいく」とアドバイスを残して去る人はいません。
そういう背景もあってか、セミナーを続けるうちに正義感の暴走を止める人が出にくく、誰も暴走した正義感を止められない、どんどん異様なセミナーになってしまうのも無理もないことだと考えています。
正しさがあるこそ歪みが生まれる
「歪む(ゆがむ)」という漢字は「正義」の「正」の上に否定形「不」が乗った漢字です。
「歪」という字は、「正しくない」状態と表す漢字であり、正しさがあるからこそ正しくない状態、すなわち歪みが生まれるという事をよく表している漢字です。
強すぎる正義感を持つと、相手を悪と決めつけ攻撃する事を正当化してしまう。攻撃している自分の方が、冷静に見れば悪になっている事もあるという、正義感ゆえの危うさが「歪」という字には表れているように感じます。
なお、集団から逸脱するような人は必ずしも間違っていると決め付ける事はできません。逸脱行動は、組織にとってイノベーションをもたらしたり、改革につながる事もあり、一概に否定できるものではないということを、正義感が強い人は覚えておくのがいいでしょう。
集団心理と自己啓発セミナー
胡散臭い自己啓発セミナーを語る上で欠かせないのが集団心理(あるいは群集心理)です。
- 人間は集団になると気分が増長して、一人ならできない大胆な行動が取れてしまう。
- 内心おかしいと思っていても、集団の雰囲気に流されて行動してしまう。
- 意見が極端なものに偏り先鋭化、過激化、カルト化、してしまう。
- 見て見ぬふりをして問題を問題だと認識できなくなる。
といった状態になってしまうことがあり、それを自己啓発セミナーでも応用しています。
集団に関する心理は、いくら集団に流されない自分を持っている人でも影響されてしまいやすく、自分の軸を持っているから絶対大丈夫と自信を持っている人ほど、皮肉にも自己啓発セミナーにのめり込んでいきやすいものです。
また、この手の人は「これは自分で選んだ事だから」と、決して集団に流されたのではなく、あくまでも自分が納得した上で決めたことだから、と言って自己正当化し、ますますセミナーから抜け出せなくなるのです。(=集団心理)
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