ロールレタリングを使って指導者と選手との距離を縮めるコーチングのやり方

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普段の練習で言いたいことが言えるようないい雰囲気のチームが作ろうと奮闘していても、なかなかチームに心を開いてくれなくて困っている指導者は多いと思います。

とくに、中高生のように思春期真っ只中。精神的に何かと不安定なお年頃の子供にとっては、いいチームを作ろうとしても、つい建前や自分を偽ってコミュニケーションを取ってしまうという事もあります。

また、多感な年頃ゆえに、過度にチームのメンバーに気を遣いすぎてストレスを抱えたり、些細なことで傷ついてしまうという事もあります。

今回は、そういった問題を抱えたチームの雰囲気作りに役立つ「ロールレタリング」というコミュニケーションの方法についてまとめます。

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ロールレタリングとは

ロールレタリングとは役割交換書簡法と呼ばれる心理療法の一つです。

元々は、犯罪を犯して少年院に行った少年が相手(加害者)の立場になって考え、更生できるために考案された療法です。

役割交換書簡法の名の通り、少年(加害者)が相手(被害者)に対して手紙を書く。次に、少年がその手紙に対して相手(被害者)になりきって自分(加害者)宛に手紙を書くという事を通して、被害者の悩みや苦しみに気がつき、反省ができるようになります。

ロールレタリングで重要なのは、相手の立場になって考えるという作業です。

人間の行動や思考は、立場によって変わってくるものであり、立場を無視して常にありのままの自分として行動することはできません。さきほどの少年院の事例で言えば、加害者には加害者の考えがあり、被害者には被害者の考えありのは当然のことです。言い換えれば、人間は立場による影響を避けられないということです。

犯罪の加害者と被害者、選手と指導者(コーチ)、部下と上司、夫と妻、親と子供のように、明確な立場が分かれている人間関係において、お互いに「自分のことを理解して欲しい!わかってほしい!」と主張するだけでは、お互いに理解することはできません。

一方的に主張しても「相手は自分のことをわかってくれない!」という事態になるだけでなく、下手すれば夫婦喧嘩や離婚のような争いが起きて、お互いに理解することができないまま決裂してしまうこともあります。

そうならないためにも、相手の立場になって考えるという作業をメインにしたロールレタリングを取り入れることで、お互いの理解を深めていき、いい人間関係が築けるようになります。

ロールレタリングを部活に取り入れる場合

部内でいい雰囲気が作れていないのは、主に人間関係が原因。

例えば、部内のルールや決まりを守らず自分勝手な部員がいたり、遅刻や手抜き、サボりが常習になっており、真面目に練習している人が不満を抱きやすい環境になっている事があります。

また、部員同士ではなく、部員と指導者(コーチ)の人間関係もいいチーム作りには欠かせません。部活でロールレタリングを行う場合は、選手も指導者も両方行うのが効果的です。

手紙を出し合ったり、共同で日誌を作る

部活動でロールレタリングを取り入れる際は、実際の精神医療のように、選手同士、選手と指導者間で手紙を書いた交換をするというのがやりやすいと思います。

もちろん、手紙のような形式にとらわれず、交換ノートにしたり、学校で学級日誌を各感覚で練習日誌を使ってロールレタリングを行っていくという方法でもOKです。

みんなに見て欲しい場合は日誌、相手に直接伝えたい個人的に言いにくいプライベートな話なら、手紙を使うという具合に目的に分けて使用するという方法も効果的です。

実際に文字にして自分が思っていることを伝える、相手の立場になって自分が感じた事を書く、という作業を行うことに最初のうちは戸惑いを感じる事も当然あると思いますが、定期的に行い継続して行くようにしましょう。

もしも、「手紙や日誌に何を書いたらいいのか全くわからない!」とスタートしたところから行き詰まってしまった場合は、「今日の練習の感想」「コーチにしてもらいたい事」「練習で何ができるようになりたいか」というように簡単なテーマを決めて、一言コメントから初めてみることで、次第に慣らしていくという方法を取り入れてみるのがいいでしょう。

なお、手紙や日誌を書くときは、誰が書いたかわかるように名前をしっかり書く事を忘れないようにしましょう。

立場が入れ替わることでいいチームをつくるヒントが見つかる。

このように相手の選手、指導者ともに、いつもいる立場とは違った立場に立って考える習慣を身に付けることで、今チームの中で問題になっている事(例えば、人間関係のもつれ、練習に対する不満と要求など)を解決するヒントが得られます。

例えば「せっかく頑張っているのにコーチは全然褒めてくれないのでモチベーションが下がる」という手紙を選手からもらたら、指導者はその内容を反映して積極的に褒めることで、選手のモチベーションを上げることができます。

一方で、頑張っているのに褒めてくれないと書いた選手自身は、今度は指導者の立場に立って、「ひょっとして褒められないのは、実は自分はコーチの見てないところでサボっている事ことがバレている」という事に気がつけば、自分の中の未熟さやズルを戒め、しっかり反省し、ちゃんと指導者から褒めてもらえるという事につながります。

ロールレタリングが更生のために用いられたのは、自分自信の行動を振り返るというただ落ち込むだけではなく、そこからどう改善していくかという正しい反省を行うのにぴったりだったから。

選手も指導者もお互いに「○○してもらえない」と期待と要求の声ばかりでは、いいチーム作りはできません。

自分に反省すべき点があるならしっかりと反省して、行動を正すことでいいチーム作りに貢献する事ができるようになります。

ロールレタリングの注意点

自分への指摘に感情的にならない

指導者は選手が自分に対して思っていることを書かれても、条件反射で怒ったり、個別に叱るようなことをしてはいけません。

せっかく選手が自分に対して思っていることを赤裸々に書いたのに、それに対して指導者という立場を利用して感情的に怒こってしまっては、お互いに理解しあうことから遠ざかります。

せっかく勇気を出した部員の行動を否定せず、「どうしてこういう事を書いたのだろう?」と考えを改め、自分が部員の立場になって考える練習をしていくようにしましょう。

指導者という立場上、普段指導している部員からダメ出しを食らうことはまずないので、部員からのダメ出しを受けて「自分の人格が否定された」と早とちりしたり、パニック状態になってしまう事があります。

あくまでも否定や指摘の対象となっているのは、指導者としての自分の「行動」であって、自分の人生や人格、人間性ではない。今回指摘された行動を省みて、いいチーム作りのため部員も指導者もどちらも成長できるように心がけましょう。

長期間に分けて定期的に行う

ロールレタリングは数回やっただけでは効果は見込めません。実際に部活に取り入れる際は、数ヶ月、数年に渡って定期的に行うのが基本になります。

最初は拙い文章であっても長期的に行うことで、部員も指導者も相手の立場になって考える、自分の考えを相手にわかってもらうように言葉にするスキルを身に付ける事ができるようになります。

頻度に関してはあまり頻繁にやったり、期間が空きすぎても効果的とはいえません。部活のスケジュールに組み込むとしたら、例えば月に1回、毎回決まった日に行う。毎年参加している試合(インターハイや国体など)の前後に行う、と感じにするとわかりやすく継続しやすくなります。

ロールレタリングの記録は捨てずに保管する

ロールレタリングで使った手紙やノートなどは、作業が終わったら捨ててしまうのではなく、しっかりと保管して置くこと大事です。

ロールレタリングの記録を残すことで、時々部員が自分が書いた手紙の内容を読み返して、自分の性格の癖や気分の波を調べることができたり、精神的に成長しているという確かな実感を感じることができます。(もちろん、これは指導者も同じ)

また、記録に残しておくことで、新たに部に入ってきた部員や指導者にとっても、今どんな性格や考え方をしたメンバーがいるのか、このチームはどんな雰囲気なのかを素早く知ることができます。

もちろん、先輩の引退や新入部員が加入してきた時のように、大きくメンバーが変わったあとに、かつていて部員と同じような悩みを抱えた部員が出た場合は、その当時のロールレタリングの記録を見ることで、悩みを解決するヒントが見つかる事につながります。

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