部活の指導とパワハラとの関係。パワハラの定義を学んで指導に活かすまとめ

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社会人の場合「パワハラ」という言葉を知らない人はほぼいないほど浸透している言葉です。

パワハラは一般的に精神的、肉体的な苦痛があったときに使われる言葉で、学校の運動部や部活動では使われる事はありません。

普通に指導するだけで「パワハラ」扱いされてしまっては、指導者も生徒も困惑して部活どころではなくなってしまうのと、部活動を教育の一貫として行っている部も多いので、行き過ぎた指導こそあれ、パワハラ扱いされることはまずありません。

しかし、部活で指導をする立場の人こそ、普通の仕事の場面で使われるパワハラの定義やパワハラの分類を知っておくことで、部活動の指導やメンタルコーチングにも役立てることができます。

パワハラの定義

厚生労働省のホームページには、パワーハラスメント(パワハラ)を以下のように定義しています。

職場での優位性を背景にして業務の適正な範囲を超えた精神的または身体的苦痛を与える行為や、職場環境を悪化させる行為

パワハラという言葉は学校や部活動ではなく、会社や職場で用いられる言葉であり、教育の場で生徒と先生、部員と指導者という間柄で用いられる事は一般的にありません。

パワハラといえば基本的に社会人やアルバイトなどの、労働者間で起きる立場を利用して業務の適正な範囲を超えた精神的・肉体的苦痛を与える行為の事を示します。

しかし、最近では休みたくても休めずに故障や怪我をしてしまう、学業に支障が出てしまうような過度な部活動を、ブラック企業やブラックバイトといった言葉になぞらえて「ブラック部活動」と呼ぶようになっています。

「これは指導の一貫だから何の問題もない」といって、体罰のように肉体的な苦痛を与えたり、精神的な苦痛を与えてメンタルを鍛えようとする指導者も残念ながら多くいます。

苦痛の例としては

  • 暴言を吐いて自尊心を傷つける。
  • 殴る、蹴る、叩くなどの暴力行為を行う。
  • 健康に悪影響が出るような過度な練習を課す。

などが行われており、これが原因で部活を辞めたり、不登校やメンタルの病気になってしまう生徒も出てきています。

指導者と部員(学生)という立場関係では圧倒的に部員の方が立場が弱く、いくら教育目的と言い張っていてもやっていることがハラスメントになりやすい状態と言えます。

社会人のように大人体大人の関係ではなく、子供対大人の関係なので子供である学生はどうしても立場が弱く、大人の言うことを聞かなければならない、言うことを聞かないと教育指導として罰を受けやすい立場です。

また、部活動はあくまでも個人の意思でやっていることであり、仕事と違いお金を稼ぐためという目的ではないので、パワハラや体罰があったと訴えにくいこともあります。

加えて学生なので、社会人が行うパワハラへ対応の仕方を身につけておらず、理不尽な指導があっても相談できず泣き寝入りせざるを得ない状況とも言えます。

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パワハラの6分類と部活指導を比較

また、厚生労働省では職場で起こるパラハラを6種類にわけ「パワハラの6類型」という名前でホームページに記載しています。

この6類型と部活の指導とをそれぞれ比較して見ていきましょう。

身体的な攻撃…殴る、蹴る、たたくなどの暴行

暴力や暴行を加えて相手を肉体的に痛めつける事は、立派なパワハラにあたる行為です。

部活動の場合だと、ミスをした生徒に対して殴る、蹴る、竹刀やバットで叩く、ビンタをする、ボールを使って肉体的な苦痛を与えるなどの行為がこれに相当します。

いわゆる「体罰」という言葉で想像する、身体を攻撃する暴力行為のことです。

暴力行為を行い威嚇して、自分の言うことを聞かそうとする事は社会人間では問題になる行為ですが、部活動の場合だと「気合を入れ直す」「根性を叩き直す」という教育目的の側面が強く出て、見過ごされてしまいやすい行為とも言えます。

部活動において暴力行為によって従わせることが状態化すると、チームの雰囲気の悪化を招きいじめが起きたり、コーチに怒られないために顔色を伺いながら行動してしまい、スポーツに必要な積極性、自主性が失われてしまう原因になります。

精神的な攻撃…皆の前で罵倒、長時間または繰り返し執拗に叱る

同僚の前で「バカ」「無能」「デブ」「役立たず」などの相手を侮辱する暴言や、コンプレックスを刺激する言葉で名誉を毀損することはパワハラにあたります。

また、周囲に人がいる状態で叱ったり、執拗に叱る事も精神的な攻撃としてパワハラになります。

部活動だと、つい感情的になって厳しい暴言を吐く、一喝するためにあえて怒鳴ったり、ミスをした選手をつるし上げて公開処刑のように衆目監視のなかで叱るという行為がこれに相当します。

高い目標を掲げて日夜努力するチームにおいては、厳しく叱る場面も時に必要になることはありますが、肝心なのは叱って精神的に落ち込ませることではなく、正しく反省してどうすればミスを繰り返さないかについて考えていくことです。

ただ怒鳴って自尊心をズタズタに引き裂くばかりでは、同じ失敗を繰り返さないために何をすべきかについて考えることがすっぽり抜けてしまっている状態です。

また、厳しい言葉で叱る事で一時的にパニック状態になり、そのことで更にミスプレーを繰り返してしまうこともあります。

コーチとしては叱咤激励のつもりや、気合を入れ直す意味で汚い言葉をあえて言ってるとしても、その言葉を受け取る本人には自分を攻撃する言葉として受け取られてしまっては逆効果になります。

繊細な性格だったり、大人ほど精神的に成熟していない子供の場合は、汚い言葉への耐性がなく深く傷ついてしまいスポーツどころではなくなってしまう事もあります。

アドバイスとして声を掛ける場合は「アホ」「役立たず」のような中身の無い単なる怒りの言葉を投げつけるだけでは、ただ文句をを飛ばしている観客に過ぎません。

そうならないためには「今は目の前の選手に集中!」「後ろのスペースがガラ空きだからそこを守れ」というように、具体的な指示を出して声を掛ける相手にいま何をなすべきかを的確に伝えていくことが効果的です。

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人間関係からの切り離し…仲間外れにするなど。

仕事において仲間はずれにしたり、無視をする、一人だけ必要な書類や情報を与えずに人間関係から切り離す事は、仕事を進めるにあたって必要のない無駄な行為でありパワハラになります。

部活動の場合だと、ミスが多かったり指導者に逆らう、生意気だとか調子に乗っているという理由でチーム内で無視をしたり、仲間はずれにすることがこれに相当します。

チームスポーツや上下関係を重視する部活の場合、部の伝統に逆らう部員や集団の和を乱す部員に対して、シカトを決める方法で追い詰めるという事もあります。

先ほど述べた暴力や暴言という方法ではなく、あくまでも空気や雰囲気という表面化しにくいもので部員の行動を支配しようとしているので質が悪いと言えます。

また必然的に周囲を巻き込むので問題となっている部員一人を反省させる方法としてはあまり効率の良い方法とは呼べません。

相手に改善してほしいところがある場合は、部活動でよくある連帯責任のような周囲全体を巻き込むやり方ではなく、あくまでも個人に限定した方法で改善策を話し合うようにするのが望ましいやり方と言えます。

過大な要求をする

今年入ってきたばかりの新入社員なのに、その日のうちに片付けられないような膨大な仕事を押し付けるといった、明らかに遂行困難な業務を命じることもパワハラとなります。

また、仕事でミスをしたからといって、躾の意味合いで他の社員よりも多く、膨大な仕事量を課す事もパワハラにあたる可能性があります。

部活動の場合は、ミスをした部員に対してその部員の体力を超えるような居残り練習、ペナルティを課すことがこれに相当します。

もちろん、同じミスを繰り返さないためにミスから時間が浅い内に練習をするのは効果的ですが、かと言って疲労困憊になってこれ以上動けないのに練習をやめず、結果として怪我や故障を引き起こしては意味がありません。

また、体力が無いからといって、熱中症にかかっているのに無理に走り込みを行わせては死亡事故を招くリスクもあります。

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過小な要求…本来の業務とは違う仕事だけを命じる

普段行っている業務ではなく、例えば草むしりやシュレッダーのごみ捨てのみと言った、業務上の合理性がなく本来の業務からかけ離れたレベルの低い仕事をすることのみを命じたり、仕事そのものを取り上げることはパワハラになります。

部活動の場合なら、必要性がないのに練習を一人だけレベルの低いものにしたり、練習そのものに参加させないという行為がこれに相当します。上で述べた「人間関係からの切り離し」と似たような性質を持っているともいえます。

部活の練習は自分がこなすべき課題をこなしたり、技術や能力を高めるために行うのが一般的であり、あえてレベルの低い練習をさせたり、練習に参加させないというやり方で指導する事は稀です。

もしも、ある部員だけ別メニューをしなければいけないと命じるときは、「なぜ、自分だけ違う練習をしなければいけないのか」を説明し、部員やチーム全体が納得した上で行うことが、チームの雰囲気の悪化やモチベーションの低下を防ぐのに効果的と言えます。

個の侵害…恋人や家族関係、プライベートについて執拗に問う

有給休暇を何の目的に使うかを執拗に聞いたり、休日の予定や恋人、家族関係などの業務に関係のないプライベートな事を聞き出す事はパワハラになります。また、携帯電話やスマートフォン、メモや手帳の私物を覗く事も該当します。

部活動の場合、練習外では教師・生徒という関係であることが大半なので、恋人や家族関係、休日の予定などのプライベートなことを聞くという場面は珍しくありません。しかし、練習に直接関係無く聞く必要性が無いのに立場を利用してプライベートまで詮索することがこれに相当します。

また、部活内で部員と指導者で男女関係に発展させるために、執拗にプライベートまで聞く事はセクハラになるのは言うまでもありません。

とくに年配が指導者ともなると、親子ともに教え子だったり、今よりも親密な人間関係が当たり前だと考えている事もあり、指導者という立場を利用してプライベートを詮索しているという自覚が無いこともあります。

思春期の年頃の生徒ともなると自我が芽生え始めて、指導者・教師に限らず親や兄弟にも隠し事をするのが当たり前のことです。

自我が芽生え秘密を持つことを「指導者たる自分への裏切りや反抗」と捉えてしまい秘密を暴き行動をコントロールしようとするのは、思春期に必要な精神的な成熟を妨害しているとも言えます。


参考書籍