スポーツをしている人はハラスメントに甘くなってしまう スポーツの世界とパワハラの関係

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華々しいスポーツの世界の裏では、パワハラや暴行問題に屈して被害を訴えられなかったり、警察を巻き込む事件に発展したことが、時々ニュースとして報道され、その度に体育会系の闇というか負の部分を強く感じます。

スポーツによってはボクシングや武道などの、相手に対して手を出すことがルールと一部認められているスポーツもあるため、自分が持つ暴力的な感情や闘争心を満たすことができるという見方もできます。

もちろん、手を出すのがルールで認められているとは言え、そのスポーツをやっている人が皆暴力やハラスメントを平気でする人だと決め付けるわけでありません。

しかし、スポーツによっては、多少のラフプレーを許容してしまったり、プレー以外の場面で多少暴力的な行動があっても、それはスポーツをするために必要な物だとして許容されてしまうように感じます。

その暴力的な価値観がじわじわ許容されていくことが、巡り巡ってパワハラや体罰などを許容するスポーツ界の土壌となっているように思います。

今回は、スポーツとハラスメントに関してお話したいと思います。

事件からみるスポーツでのハラスメント

スポーツでの事件と言えば、2017年の秋に起きた日馬富士から貴ノ岩による暴行事件が記憶に新しく、よくニュースで見聞きされたと多いと思います。

この事件は貴乃花親方により被害届けが警察に出されたことが注目を浴び、2018年になった今でも未だに暴行関連のニュースが引き続き流されています。

最近ではレスリングの伊調馨選手が受けたパワハラを訴えたことも話題になっています。そして、それに対する至学館大学学長・日本レスリング協会副会長学園側のコメントも物議を醸しています。

また、大人同士の問題でなく、部活動のように大人が子供を指導する場面でも2012年に起きた大阪桜宮高校でおきたバスケ部での体罰及び自殺問題が記憶に残っている方も多いと思います。

そんな痛ましく聞くだけでもうんざりしてしまう事件をもとに、スポーツの世界で起きるハラスメント(嫌がらせ行為)について分類していきます

パワハラ

厚労省のホームページでは、パワーハラスメント(パワハラ)のことを

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

(あかるい職場応援団:パワハラの定義より)

と、職場で起こるハラスメントを基準にして定義しています。

一般的にパワハラと聞くと、仕事の人間関係でおこなわれる嫌がらせだと考えている人が多く、仕事意外でパワハラという言葉が使われることはあまり無いように思います。

そして、この定義をもとに考えると、伊調選手のパワハラ報告のニュースを見たときに仕事じゃなくてスポーツでパワハラという言葉を使うのはちょっと変では?」と疑問を感じた人もきっとおられると思います。(筆者もその一人です)

しかし、趣味や娯楽のスポーツではなく、スポーツを仕事にしているプロスポーツ選手が被害を訴えたのだと考えると、パワハラと表現するのがふさわしいと言えます。

プロスポーツ選手だと練習も職務と考えられるので、その職務におけるハラスメント行為に対しては、普通の会社員と同じく、パワハラの被害者として被害を訴えることは間違っていません。

なお、厚労省の定義するパワハラには

1、身体的な攻撃…殴る、蹴る、たたくなどの暴行
2、精神的な攻撃…皆の前で罵倒、長時間または繰り返し執拗に叱る
3、人間関係からの切り離し…仲間外れ、無視など
4、過大な要求をする…仕事を大量に押し付けるなど
5、過小な要求…本来の業務とは違う仕事だけを命じる
6、個の侵害…恋人や家族関係、プライベートについて執拗に問うなど

の6つに分類されています。

スポーツでのパワハラだからと言って、暴行沙汰に限らず、言葉による暴力やプライベートの侵害も、パワハラだと見ることができます。

セクハラ

セクシャルハラスメント(セクハラ)は、日本語に直すと「性的な嫌がらせ」となります。

とくに性的な言動や嫌がらせを行う対価型セクハラは、立場や権力を利用したパワハラと深く関連があり、スポーツでもコーチから選手へ、監督から部員へのセクハラが度々問題となっています。

テレビなどでも、「部活動でマッサージと称してセクハラを行った…」というニュースは時折流れており、スポーツの世界におけるセクハラの代表例です。

また、男女混合の部活動の場合、部員同士でセクハラエスカレートして集団暴行に発展したり、エスカレートの最中中でアルコール摂取を強いるアルハラが行われ、急性アルコール中毒を発症してし待ったケースもあります。

モラハラ

モラルハラスメント(モラハラ)はパワハラやセクハラと違って認知度は低く、そして目に見えない言葉の暴力、態度(無視、見下す、脅す、練習に参加させないなど)による嫌がらせという特徴を持つために、当事者だけでなく周囲からもモラハラが起きていると分かりにくいという特徴があります。

モラハラはコーチと部員、先輩と後輩という上の立場から下の立場の人に向けて行われるほか、下から上の立場に向けて行われる、立場が同じ人同士でも行われるという特徴があります。

体罰

ハラスメントとは少しニュアンスが異なりますが、スポーツの暴行事件において体罰は外すことができません。

体罰には

  • 直接的に肉体的苦痛を与えるもの:叩く、蹴る、殴る、髪を引っ張るなど
  • 間接的に肉体的苦痛を与えるもの:廊下に立たせる、正座をさせる、長時間走らせるなど

の2種類あります。

体罰と言えば躾や教育の意味で叩くや蹴るなどの暴力行為をする、罰として正座などの罪を償わせるための行為をさせることで、どちらかと言えば教育や指導には必要なものだと考えている人もいますが、たとえ教育の為だといえ暴行を加えることは許されることではありません。

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スポーツをしているとセクハラに対して甘くなる

明治大学政治経済学部准教授の高峰修氏による『スポーツにおけるハラスメント防止 ─いかに気持ちよくスポーツに打ち込めるか─』という人権週間プログラム講演会の内容によれば、スポーツをしている人とそうでない人を比較した場合、スポーツをしている人はセクハラに対して甘くなるという調査結果が出ています。

大学生を対象に行ったスポーツとセクハラに関する調査

調査は2002年に行われたもので大学生を対象とし、全国21の大学、短大で実施。3587人を対象にし、回収数は3382人、回収率は94.3%でした。

調査ではセクハラになり得るの言動を読んでもらい、この言動はセクハラになるかどうかを「全くそう思わない」~「思う」の4段階で答えるというものでした。

グラフ、データは『スポーツにおけるハラスメント防止  ─いかに気持ちよくスポーツに打ち込めるか─』より

セクハラ得点は

  • 高いほどセクハラだと思う傾向が強い
  • 低いほどセクハラだと思わないという傾向が強い

ということを指します。

図1を見れば、運動部やスポーツ系の学部に所属しているほどセクハラに関して甘く見ていることがわかります。

セクハラに対する認識が甘いと、自分がセクハラ加害者になっても加害者に対して自分が被害者になっても被害者だと認識できない、

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日本では男性よりも女性、年齢が若くなるほどセクハラに対して甘くなるという結果も

続いて、国体などのレベルの高い公式大会に出る選手やその指導者を対象に、先の調査から改良を加えて、同じくある行動に対してこれはセクハラかどうかを答える調査も行われています。

この調査は2007年に行われ、回収数は競技者418人、指導者1406人です。

グラフ、データは『スポーツにおけるハラスメント防止  ─いかに気持ちよくスポーツに打ち込めるか─』より

セクハラ得点は先ほどの調査と同じく高ければセクハラだと思う傾向が強い、低ければセクハラだと思わないとなります。

図2を見ると、男性よりも女性の方がセクハラの認識について甘い、あるいは男性の方がセクハラについて厳しい目で見ているということがわかります。

数多、年齢別のデータを見ても、年齢が下がるにつれてセクハラへの認識が甘くなるという傾向もはっきりと出ています。

ちなみに海外では、この調査とは逆に女性や若い人の方がセクハラについて厳しくなる傾向が出ています。

一般的にセクハラと言えば、

  • 立場が上の人から下の人が行う。
  • 年齢が上の人から下の人へ行う。
  • 男性から女性に対して。

と思われ、女性や若い人ほどセクハラに対して敏感だと考えられていますが、この調査では全くの逆になっているのが何よりも印象的です。

これに関しては、立場の弱い人がハラスメントをハラスメントだと思わないようにしなければいけないほど深刻な状況にあるのではないか、と分析されています。

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ハラスメントを受け入れなければスポーツができない状況にあるという懸念

上の調査はセクハラを対象にした調査ですが、セクハラだけでなくパワハラやモラハラにも通ずるものがあると感じています。

長年学校で運動部に所属していた経験のある一筆者としても、セクハラを含むあらゆるハラスメントや嫌がらせに対して一々反発していると、

  • 集団の和を乱す人、空気が読めない人だ思われる
  • みんな我慢しているのだから、あなたも我慢するのが当然という反応が返ってくる
  • 「ハラスメントでも何でもない。あなたの思い込みではないの?」と不思議がられる

と、ハラスメントそのものを許容したり、そもそもハラスメント問題として認識していない経験をしたことがあります。

そんな経験を重ねて行くうちに、ハラスメントに対して一々文句を言うのではなく、変だとと思いつつもその価値観に自分を合わせたほうが、面倒事を回避して(表面的には)楽しい部活ライフを送ることができます。

理不尽なことでも文句を言わず真面目に従い続ければ、先輩やコーチに気に入られて部内での居場所を確保できるので、我慢するメリットは決してないとは言えません。

また、部活で居場所をなくさない、部活の練習に参加しレギュラーに選ばれる事をゴールとしてしまうと、たとえ理不尽やハラスメントが日常茶飯事な環境であっても、それを問題のあることだと思わない部の価値観に自分を合わせることが、まず第一です。

しかし、その価値観に染まれば自分がハラスメントの被害者だという自覚ができなくなるだけでなく、知らなうちに自分がハラスメントの加害者になってしまうというリスクもあります。


参考資料・出典 (※リンク先はPDFです。リンク先に飛ぶとPDFのダウンロードが開始されますのでご注意を。)

『スポーツにおけるハラスメント防止  ─いかに気持ちよくスポーツに打ち込めるか─』

講師 高峰 修 氏(明治大学 政治経済学部 准教授)2014 年度春季人権週間プログラム講演会より

国立大教育学部卒、専攻は心理学。発達心理学、教育心理学、スポーツ心理学、社会心理学を中心に心理学に関する記事を執筆中。そのほかにも、人間関係やコミュニケーション、性格、スマホ、SNS、ゲームなどのあらゆるテーマを心理学の知識を用いて詳しく、面白い記事を書くことを心がけております。

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