部活動におけるモラルハラスメントの例と問題点

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モラルハラスメントは、直接的な暴力ではなく言葉や態度で相手に嫌がらせを行うハラスメントです。

主にモラルハラスメントは夫婦間や親子間で使用されることが多い言葉ですが、学校の部活動やスポーツ活動においても、モラルハラスメントという言葉が使われることがあります。

学校の部活動の場合、ただ単にスポーツの技術や知識を教えるのではなく、例えば「人間教育」であったり上下関係を学ばせる場としても機能しているという側面があります。

そのため、冷静に考えると相手の心を傷つけるような乱暴な言葉や態度であっても、「これは教育指導の一環として行っている」と正当性を主張することで、理不尽な言動や乱暴な行為が許されてしまうことがあります。

そのような行為は、指導者から生徒だけでなく、先輩から後輩、同学年の生徒同士で行われる事もあり、生徒同士の場合はただふざけているだけだと見られて、見過ごされてしまうこともあります。

言葉の暴力に加えて、部活動という関係者以外には内部の事情が外からはわからない閉じた人間関も影響して、モラハラの被害者は被害を認めてもらえないことで悩んだり、被害を受ける自分に原因があると感じて、理不尽を受け入れてしまい精神を病んでしまうこともあります。

今回は、部活動におけるモラルハラスメント(モラハラ)についてお話しいたします。

部活動におけるモラハラの例

言葉による嫌がらせ

モラルハラスメントの特徴とも呼べる言葉による嫌がらせです。

部活動においては、例えば指導者が生徒に対して

  • 「本当にお前は役立たずだ」
  • 「馬鹿、アホ」
  • 「チームの足を引っ張っている」
  • 「何度教えてもお前は成長しないやつだな」
  • 「お前のせいで試合に負けてしまった」

などの人格を否定する言葉、自尊心や自信を奪う事場を日常的に投げかけるなどの行為をさします。

ここで例にあげた言葉は、いわゆる部活動で怒る場面に使われる言葉でもありますが、日常的に怒り続けると生徒は萎縮してしまい、「監督やコーチから怒られないようなプレーをしよう」と、消極的な行動を取ることがあります。

また、怒られた経験が原因となり、「自分は何をやってもダメ」と自己否定をしたり、「厳しく怒ってくれるのは愛があるから」だと感じて、少しでも怒られる事へのストレスを和らげるように考え方を歪めてしまうこともあります。

正当な理由なく練習へ参加させない

モラルハラスメントは暴言や嫌がらせによって相手の行動をコントロールさせることも特徴のひとつです。

部活動においては、しばしば罰や謹慎の意味を込めて、練習を自粛したり練習への参加を認めないという行為が行われることがあります。

もちろん、遅刻をした、練習を無断でサボった、いじめを行った、学外で飲酒・喫煙・暴力沙汰を起こしたなどの正当な理由で練習への参加を認めないというのであれば問題があるとは言えません。

しかし、問題行動を起こしわけでもなく、正当に罰せられるべき明確な根拠もないのに理由をつけて練習への参加を認めない場合は、ラルハラスメントと見ることができます。

練習に参加できない生徒にとっては、怒られるような心あたりがないのに練習に参加できないことで「自分は何か怒らせるような事をしてしまったのだろうか」と自分に怒られる原因を見つけ出したり、モラハラ加害者の顔色を伺うようになります。

無視する・噂を流して孤立させる

部内で特定の人物を無視をする、あるいは無視をするように他の部員に指示することもモラルハラスメントにあたります。

また、無視をする過程において、嘘の情報(例えば「いじめをした、先輩・コーチの悪口を言った」など)を流すことで、意図的に周囲から孤立させてしまうこともモラハラになります。

部活動はただスポーツに打ち込むだけではなく、友達と過ごしたり自分の居場所と感じている生徒も多い中、無視されたり孤立させられることで精神的なつらさを抱えこんでしまいます。

怒鳴り声や脅迫行為で行動を支配しようとする

指導者から生徒へ、先輩から後輩へ、怒鳴り声や脅迫行為で相手の動きをコントロールしようとする行為もモラハラにあたります。

例えば、先輩が後輩を脅してパシリに使ったり、後輩が嫌がったり恥ずかしがっていることを無理やりさせることは部活動をしていた人ならよく見かけることでしょう。

部活動においてこれらの行為は、悪ノリやおふざけが過ぎたとして軽く見過ごされがちですが、エスカレートすれば脅迫して金品をせびる恐喝や、怒りや不安で相手を支配するマインドコントロールに発展する可能性もあります。

怒鳴り声については以下の記事でも詳しく解説しています

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部活動におけるモラルハラスメントのパターン

部活動にはスクールカースト同様に目に見えないヒエラルキーが存在していることがあります。

例えば、体育会系の部活であったり、上下関係を重視している部活であれば、

「コーチ・監督>OB>先輩>後輩」というような立場関係が自然と生まれ、その立場に逆らう行動をとることは、部内での自分の立ち位置が危うくなるのでなかなか行えません。

もちろん、その立場差をうまく利用して部の雰囲気作りやモチベーションの向上に繋がればいいのですが、立場を悪用して理不尽を強いたり、自分の理不尽を正当化してしまうこケースも少なくありません。

指導者から生徒に対して行われるパターン

部活動において生徒は指導者(監督・コーチ)に立場や年齢の差から意見したり逆らった言動を取ることが非常に難しいと言えます。

部によっては、「監督の意見は絶対」「例え理不尽で納得できない事であっても従うのが教育だ」という価値観が連綿と受け継がれている部もあってか、指導者は自分の理不尽な言動を正当化する、生徒は自分が受けている理不尽を逃れるのではなく、それを受け入れた耐え、モラルハラスメントをエスカレートさせてしまうことがあります。

先輩から後輩に向けて行われるパターン

体育会系の部活動のように上下関係を守る事が何よりも優先されている部では、コーチと生徒間だけでなく、先輩・後輩といった生徒同士の関係でもモラルハラスメントが行われることがあります。

先輩は先輩という立場を使って、下の立場である後輩に対して理不尽や嫌がらせを強制したり、もしも理不尽に対して反発した場合は部活内で「あいつは先輩に対して失礼な行動を取った」「生意気なやつだ」と噂を流して孤立させてしまうこともできます。

同級生同士で行われるもの

先輩・後輩といった立場を超えたものではなく、同級生同士でモラハラが行われることもあります。

上下関係が重要視されている部であっても、同じ立場である後輩同士でも例えば先輩から気に入られていることで、他の同級生から優位に立ち、その立場を利用して別の同級生に嫌がらせを行うことがあります。

大きな括りでは上下関係では後輩という同じ立場に属していますが、同じ後輩でも「先輩から気に入られている後輩」「後輩の中でも実力のある後輩」は他の普通の後輩に対して、理不尽な行動を取りやすくなってしまいます。

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部活動におけるモラルハラスメントの問題点

教育や指導の一環として見過ごされやすい

部活動におけるモラハラは、時に教育や指導の一環として正当化されてしまうことがあります。

暴言や恫喝などの言葉の暴力も、モラハラ加害者が「指導や教育のために行った」と言ってしまうと、それで周囲も本人も納得し、見過ごされてしまうことがあります。

「言葉の暴力を振るっているのは、被害者のためを思ってであり、多少理不尽に感じるかもしれないが、それを乗り越えることで立派な人間へ成長できる。その成長させる役目を自分は行っているんだ」と主張すると、理不尽な行動をしている加害者はまるで立派な教育者のように見えてしまいます。

あたかも理不尽な行為がなければ成長できないという意見は、いつしか自分の理不尽を正当化してしまうだけでなく、ただの理不尽そのものに価値を見出してしまい、練習でテクニックを磨くことよりもただ理不尽に耐えることばかりが部活の目標へとすり替わってしまうリスクがあります。

陰湿で外部からはわかりにくい

部活動の人間関係は、自分が思っている以上に外部からはその状況がわからないものです。

というのも、部活動はその部活に入っている人以外からはあまり興味を持たれることもなく、一般的に部の枠を超えた合同練習を日常的に行うなどの他の部との接点もないために、想像以上に閉じた人間関係なのです。

それに加えてモラルハラスメントの特徴とも言える陰湿な嫌がらせが加わると、部外者からはその部でどのような嫌がらせが行われているのかを発見すること非常に難しくなります。

また、部外者のみならず部の関係者であっても、陰湿なためにモラハラの存在を知らないまま放置されていることもあります。

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体育会系の部活動以外でもモラハラは起こる

パシリやシゴキ、先輩からの無理強いや理不尽と言えば、上下関係や立場、力強さなどの、わかりやすい強さを押し出す体育会系の部活動を想像する方も多いと思われますが、モラハラは体育会系の部活に限らず、文化部でも起こります。

文化部と言えば、体育会系と比較すると大人しい人が多く、どこか落ち着いて穏やかな人が集まる部活と思われ、モラハラとは無縁だと思われますが、部によっては体育会系同様の上下関係で運営されていることもあります。

また、大人しく穏やかな人が多く集まれば、モラハラの加害者にとっては自分の理不尽やわがままを押し通しやすく、反発されるリスクが低いと感じるので、加害者の行動をエスカレートさせてしまいやすい人間関係が整っているとも見ることができます。

被害者が「自分に原因がある」と思い込むケースもある

モラハラの被害者は、加害者から乱暴な言葉や自尊心を傷つけられる事場を繰り返して言われ続けるうちに「ひょっとして、自分に落ち度や原因があるから、ひどい言葉を教育のために言われているのでは?」と感じてしまうことがあります。

例えば先輩がただのストレス発散や気まぐれで後輩に理不尽な言葉や態度をぶつけている場面で、後輩が

  • 「先輩がここまでするのだから、何か気に障ることを言っているのでは?」
  • 「先輩は自分ではまだ気づいていない自分の未熟さを指摘してくださっているのでは?」

と、自分には何の非がないのにもかかわらず、自分に先輩を怒らす原因があるのだと考えるようになります。

また、自分に原因があると考えるだけでなく、ただの理不尽ですらありがたいもの、自分のためにわざわざ指導して頂いているものだと歪んだ考え方をしてしまい、モラハラが深刻化することもあります。

部活動がただのスポーツの技術の指導ではなく、精神面を鍛えるという教育の側面もあるために、ただの理不尽ですら教育目的に違いないと被害者が自分で理屈をつけて納得してしまうのは、部活に限らず人を育てる場面ではよく見られる光景であり、モラハラを増長させてしまう困ったものの見方でもあります。

国立大教育学部卒、専攻は心理学。発達心理学、教育心理学、スポーツ心理学、社会心理学を中心に心理学に関する記事を執筆中。そのほかにも、人間関係やコミュニケーション、性格、スマホ、SNS、ゲームなどのあらゆるテーマを心理学の知識を用いて詳しく、面白い記事を書くことを心がけております。

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