自己愛性人格障害の特徴から見るモラハラ加害者

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モラルハラスメントの加害者と、自己愛性人格障害(または自己愛性パーソナリティ障害)には、物事の見方、思考の癖、行動原理、対人関係における衝突事例などについて多くの共通点があります。

自己愛性人格障害とは、自己愛(ナルシシズム,自己陶酔と言ってもいい)がやたら強く、肥大化した自尊心に振り回されて対人関係でトラブルを起こしたり、生きづらさを感じてしまうパーソナリティ障害の一種です。

今まさに対人関係においてトラブルを起こしているモラハラ加害者にとっては、非常に関連深い心理学用語であると言っても過言ではありません。

今回は、そんな自己愛性人格障害の人の特徴とモラハラ加害者との共通点についてお話いたします。

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過度に自己中心的な行動・思考が目立つ

自己愛性人格障害の人に見られるのは、過度に自己中心的な行動・思考です。

わがままが多い、自分勝手な発言が目立つなどの、単純に自分を中心にして物事を考えた結果他人を振り回してしまう、という傍から見てよくわかる迷惑な行動の類。そして、自分を中心に物事を考えているために起きる

  • 他者が自分とは異なる考えや主張を持っている事が理解できない。
  • 他者の視点や状況に立って物事を考えることができず、何事も自分基準で捉えてしまう。
  • 自分と他人との間の心理的な距離感・境界線を自覚できず、つい他人に干渉してしまう。

など、思考や認知の面でも自己中心性の強さが目立ち、これがモラハラを含むあらゆる対人トラブルを起こす原因となります。

なお、こうした自己中心的な思考・認知は、心理学者のピアジェによれば、人間なら子供の時期に誰もが抱くものとされ、自我を持ちはじめる思春期頃を経て自己中心的な要素をまっていき、社会や現実と折り合えるようになるとされています。これを「脱中心化」または「自己中心性からの脱却」と呼びます。

以上のことを踏まえると、自己愛性人格障害の人は、育ってきた環境や自身の気質などが影響して、脱中心化できてない状態である。そして、子供の頃の自己中心性が残っているがゆえに、後述するような他者を支配したがる、他者への共感ができない、といった行動に出ているのだと考えられます。

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他者に自分の理想を押し付けて支配したがる

自己愛性人格障害の人に目立つのが、他者をあらゆる形で支配しようとすることです。

持ち前の自己中心性の強さ故に、他者が自分の意図していることを全面的に理解してくれることを期待し、その期待通りに動いてくれることを他者に渇望する。

これは、他者のことを自分のコピーのように見なしている。コピーだからこそ、自分の思った通りに行動するのが当然であるし、自分の期待通りに動かないことなんてありえない、と相手を尊重せず自分の思いのままに動く駒であり、支配の対象としてみなしていると言えます。(無論、こうした対人関係の価値観が他者との衝突を生むのだが…)

このような言動や思考パターンは、モラハラ加害者が言葉や態度の暴力によってモラハラ被害者を自分の支配下におこうとするものに通ずるものがあります。

なお、これはモラハラに限らずDV(ドメスティックバイオレンス)やパワハラ、アカハラなどの各種人間関係のトラブルやハラスメントに通ずるものがあります。

他者に共感することが苦手、あるいはできない

自己愛性人格障害の人は、他者の気持ちに寄り添ったり、共感を示すことが苦手、あるいはできないという特徴があります。

これも、上で述べた自己中心的な思考・認知の強さにより、他者視点ではなく自分視点で物事を見てしまうことが影響していると考えられます。

他者の気持ちに寄り添えないために

  • 他者の考えや主張に共感を示さず衝突を起こす。
  • 他者を尊重しないことから、人を人と見ずぞんざいに扱ってしまう。
  • 他者のプライバシーを守ろうとせず詮索したがる。
  • 他者を罵るような言葉や、自尊心を傷つけてしまう態度を平気でしてしまう。

など、モラハラ加害者がやりがちな行動をとってしまうのです。

自尊心が傷つけられると激しく怒る、あるいは言い訳をして現実逃避する

自己愛性人格障害の人は、自身の言動故に対人関係で衝突を起こしやすく、指摘・非難・批判の声を人一倍受けやすい人とも言えます。

しかし、それらの声を受けてしまうと、自尊心が強く傷つけられたと感じて激しい怒りを見せて相手を威圧しようとしたり、逆に「自分は悪くない」という類の現実逃避の言い訳により対処することが目立ちます。

怒るにせよ、現実逃避するにせよ、どちらも自分の過ちと向き合っていない点には変わりはなく、反省もしなければ改善も見込めないので、必然的にまた同じような過ちを繰り返してしまいます。

こうした一連の言動は、モラハラの加害者が頑なに自分の非を認めようとせず、依然としてモラハラ行為が続けられている(あるいはエスカレートする)状況に、強く関連するものがあります。

なお、自尊心が傷つけられて激しく怒る事をかの有名な心理学者のフロイト「自己愛憤怒」または「自己愛的怒り」と表現しています。

モラハラ加害者が感情を爆発させて、被害者を口汚く大声で罵ったり、ストレートに傷つく言葉(「無能」「クズ」など)で相手を責め立てるのも、「自己愛憤怒」であるとして解釈可能です。

傲慢な態度でナチュラルに人を見下す

自己愛性人格障害の人は、その言動故にナルシストであると表現されることが多くあります。

  • うぬぼれが強い
  • 傲慢な態度が目立つ
  • ナチュラルに人を見下す
  • 自分のことを特別、才能がある、天才と思っている
  • 自分は周囲から尊敬や賞賛される人間だと感じている

など、典型的なナルシストのイメージ通りの言動や思考の癖が特徴的です。

もちろん、自分で自分のことをすごいだとか、優れているだとか思うことそのものは否定しません。

しかし、自己愛性人格障害の人は「自分は優れた存在である」と強く思うと同時に「平凡な人間は価値がない」と他者を見下すことがセットです。他者をディスり自分を持ち上げるという、自分をよく見せるためなら人をこき下ろすことすら厭わないこの言動は、まさに他者に共感ができない性質がよく現れています。

なお、モラハラの加害者においても、被害者のことを「自分がいなければ何も出来ない奴だ」とナチュラルに見下すと同時に、その何もできない奴を支える自分の人間としての徳の高さをアピールする…といった言動がよくあるので、自己愛性人格障害の人の言動と強い関連があると言えます。

精神的・内面的な価値観を軽視する

自己愛性人格障害の人は、価値観に関しても独特の思考パターンがあります。

学歴、収入、社会的地位、外見、人脈など他者や世間から見て賞賛される分かりやすい価値や客観的な指標から成り立つ価値観をたいへん重視していること。(=ブランド主義、権威主義に通ずるものがある。)

そして、優しさ、気配り、正直で真面目であること、信念や美学など個々人が大事にしている精神的・内面的な価値観を軽視していることです。

言うなれば前者は多くの人が目で見て確認できる疑いようがない明確な価値観。後者は解釈が別れやすいと同時に、パッと見では把握しづらい目には見えない価値観と言っていいでしょう。

こうした、目に見えない価値観を軽視しているからこそ、他人に優しくすることや思いやる事に価値を見いだせない。つまり、モラルを軽視した言動に出てしまい、自然とモラハラの加害者になってしまうのです。

対人トラブルの多さが災いして周囲から見放され孤立しがち

自己愛性人格障害の人は、その性質上どうしても対人トラブルが多くて批判を受けますが、それに対して反省も改善もせずトラブルメーカーっぷりに歯止めがかからない。やがて年を重ねるにつれて周囲から呆れられたり、見放されて孤立する傾向があります。

モラハラ加害者も被害者から愛想を尽かされて関係が自然消滅したり「関わったら何をされるかわからない」という悪評が広まってしまい集団や組織内で孤立してしまう点では、共通している点があります。

ただし、周囲から見放されて孤立してしまう状況が肥大化した自己愛や自尊心の修正に必ず効果があるとは言えず、むしろ「成功者には孤独な人が多い」「自分を見放すような人間は他人を見る目はない」とかえってこじらせてしまうことで、余計に対人関係を上手く構築できない物の見方や思考の癖を強めてしまうこともあります。

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参考書籍

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