言葉の暴力や態度による嫌がらせ、つまりモラルハラスメント(モラハラ)は親子の関係も例外ではありません。
体に傷が残る身体的・物理的な暴力ではないので、「暴力を振るう親よりはマシ」だと自分で自分を言い聞かせて、我慢すればいいと片付けてしま居がちなのが、親子間におけるモラハラの厄介さでもあります。
体に傷が残らないのは事実ですが、一方でモラハラを受け続けると、
- 言葉の暴力により無気力になる。それにより、ますます親の言いなりにならざるを得ない状況に陥る。(=学習性無力感)
- 家族以外の人間関係において、自分に対してぞんざいな扱いをしてくる人間と適切な距離を取れなくなる。要するに、家族以外の関係でもモラハラの被害者になってしまう。
- モラハラ行為そのものを「当たり前のもの」と学習してしまい、自分が関わる人に対してモラハラ行為をしてしまい、自分がモラハラの加害者になる。これが自分が子供を持つ立場になれば、モラハラを次世代に連鎖してしまう。
など、自分一人の問題では済まない事態になる懸念があります。
そのため、たとえ「親」という切っても切れない立場の人間であっても、モラハラという陰湿な嫌がらせをしている人間に対しては、泣き寝入りすることなく適切な対処を行うことが肝心です。
そんなモラハラをしてくる親への対処方について、今回はお話いたします。
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家を出て独立する
(親に限らず)モラハラをしてくる人に対しては「距離を置く」という対処法がシンプルですが効果的です。ただし、恋人や友達、仕事の人間関係と異なり、親と子という立場である以上、簡単に縁を切ることは難しいものです。
そのため、親からモラハラを受けている状況においては「家を出て独立をする」ことが最も現実的な対処法です。
親の監視の目が届かない場所に進学や就職など、もっともな理由をつけて引っ越す。お盆休みやお正月の帰省も極力せず、会う頻度を減らすなどして、自然と親と合わなくてもいい状況を自分で作っていくことが肝心です。
また、引越しをする場合は保証人が不要の物件を選ぶことで、親の介入がない安心できる生活を手に入れることが可能です。
ただし、保証人不要の物件の場合、収入・貯蓄が一定以上ないと審査で落ちる物件もあるため、ある程度の収入がある仕事についておく、あるいはバイトをして貯金を貯めておくことで、より親元を離れた生活へと近づけるようになります。
(もちろん、審査で落ちても連帯保証人を用意すれば解決する場合はありますが、その場合どうしても親を連帯保証人にせざるを得ず、親に自分の住む場所を知られたくない願望がある人のからすれば、それだけは避けたいはず)
家族・親戚以外の味方を身に付ける
独立する前・後に限らず、自分の悩みや辛さを安心して相談できる人を見つけておくことは効果的です。
ただし、相談相手は誰でもいいというものではなく、なるべく公平で親と直接面識がない第三者としての客観的な意見をくれる人を相談相手にすることを推奨します。
兄弟姉妹、祖父母、親戚、友達、学校の先生…など親と直接面識がある人の場合、モラハラを振るう親のことを贔屓目で見てしまう。その結果「君も親の年齢になったらわかる」など親の視点に立った無理解なアドバイスを受けたり、よかれと思って親に告げ口してしまいモラハラ行為がより強化されてしまう懸念があるります。(モラハラ加害者は外面はよいことが多いので、直接面識があると尚更モラハラの事実を受け入れてもらい難いのが特徴的)
ですので、基本的には
- 親と直接の面識がない
- モラハラに関する知識が豊富
- 相談したことに対する秘密を守れる人(=守秘義務を守れる)
の特徴を満たした、臨床心理士・公認心理士の資格を持つ心理カウンセラーの人やスクールカウンセラー、モラハラ・DV・虐待に関する自助グループの人を相談相手の候補とします。
ただし、もしも身近にカウンセラーの人がいない場合は、友達や学校の先生など、なるべく親との距離感が離れており、且つ秘密を守れそうな人に相談してみるのも方法の一つです。
心理カウンセラーや自助グループへ相談する
上でも触れたように、心理学に関する知識やモラハラにまつわる経験が豊富な人を相談相手にすることが大事です。
モラハラそのものが物理的な暴力のように、目に見える傷や怪我が残らないので外部からわかりにくい。加えて、モラハラに関する知識がないと「厳しい躾は親の愛情の裏返しでないのか?」「モラハラされていると言うのは自分の思い込みではないの?」という無理解からくる言葉を投げかけられる。
そして、親ではなく自分の方に問題があるのだと自罰的になるおそれがあるので、なるべくモラハラに詳しい人・集団に相談することが効果的です。
なお、「モラハラ」という言葉が使われる関係はおもに恋人関係、夫婦関係など男女関係がメインであり、親子関係において「モラハラ」という言葉が使われることはあまりありません。
ですが、親子関係におけるモラハラと酷似しているものとして
- DV(ドメスティックバイオレンス,家庭内暴力)における精神的暴力。
- 虐待おけるネグレクト(育児放棄)と心理的虐待。
- 毒親、アダルトチルドレン、機能不全家族など
という呼称、概念があります。モラハラという言葉に縛られず、DV、児童虐待、毒親に詳しい人・集団も相談する相手として検討するのがいいでしょう。
モラハラに関する書籍を読み知識を蓄える
モラハラが一体どういうものなのかを知る意味でも、モラハラに関する書籍を書店で購入したり、図書館で借りるなどしてモラハラに関する知識を蓄えておくことも、モラハラを振るう親のいいなりにならないための有効な手段です。
なお、上でも触れたように、「モラハラ=男女関係がメインで、親子関係では参考にならないのでは?」という疑問も持つかもしれません。
しかし、モラハラ行為の特徴、モラハラ加害者の特徴や心理など、モラハラの根本的な部分は、親子関係も男女関係ともに共通している箇所があるので、参考にならないわけではありません。
また、ネット上でもブログやSNS、youtubeのなどでモラハラに関する情報を調べることは可能ですが、中にはモラハラで精神的に弱っている人をカモ対象にした悪徳商法(情報商材、スピリチュアル商法など)を行っている人もいるので、無批判に推奨できません。
悪徳商法に対する不安が薄いという点では書籍に絞ってモラハラに関する情報を集めて、知識を蓄えることの方が、まだ安心できると言えます。
その他気をつけておくべきこと
モラハラ加害者の片鱗がある人には十分気をつける
モラハラを振るう親がいる環境で長年育っているせいで、親以外の関係でもモラハラ加害者の片鱗がある人の危険性に気が付けず、気が付けば家族以外の関係でもモラハラ被害者になることがあります。
職場・バイト先の人、恋人、友達、など家族以外の関係でも、親がしているような行動、言葉遣い、他人の扱い方をしていると感じた相手に対しては、十分に気をつけることが大事です。
親の心を変えることより、自分が安心できる環境を早めに作る
モラハラを振るうとは言っても自分の親であり、その親と距離を置くことに対してどこか後ろめたさを感じたり、なんだか親を見放すように感じられて、葛藤に苦しんでしまうのが辛いものです。
なんとか親と自分の双方が円満になれるように「親を改心させたい!」と働きかけたくなる気持ちが沸くかもしれませんが、他人の心を変えるのは難しいものです。
そして、その難しさを理解すればするほど、他人ではなく自分の心を変える方が合理的だと感じて、自分から折れてモラハラを振るう親のいいなりになる生き方を選んでしまうことが多いものです。
そうならないためにも、親と完全に理解したり、和解することを目標にせず、早く独立するなり専門知識がある人に相談するなどして、自分が安心できる環境を早めに作ることを最終的な目標とすることが大事です。
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