うつ病や心の病の存在が知れ渡ったことや、いじめや不登校対策、こどもの発達障害や勉強での悩みをメンタル面でもサポートする必要性が増したことから、学校でもスクールカウンセラーによるカウンセリングが受けられるようになっています。
カウンセリングルームが設置されたことで、必要であれば生徒がそこを訪れて、悩みを相談したり、辛い気持ちを話たりして、メンタル面のケアができる環境が整ってきています。
しかし、カウンリングやメンタルの悩みに対して、なんとなく恥ずかしさや敷居の高さ、行きづらさを感じている生徒は少なくありません。
とくに思春期で他人の視線や行動に敏感な年頃の生徒だと、
- カウンセリングルームに行った事が友達にバレて距離を取られたらどうしよう
- カウンセリングルームに行ったことが原因でいじめられたらどうしよう
- カウンセリングルームに行ったら親や先生に心配をかけるのではないか
という不安や心配のために、利用したくてもできないということがあります。
なお、学校の方でも「カウンセリング」という名前に偏見や抵抗を持たせないために「心の相談質」「学生相談室」「こころの教室」など呼び方を変えて対応していますが、それでも近寄りにくい場所という認識が変わらず、なかなか相談に来てくれないということがあります。
今回はカウンセリングルームに行きづらい理由についてお話いたします。
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学校のカウンセリングルームに行きづらい理由
自分は心が弱い人間だと認める事になる
カウンセリングルームをためらう理由としては、「カウンセリングに行くこと=自分は心が弱い人間」だと認めてしまうことになるのが影響していると見ることができます。
自分に対する理想が高かったり、勉強やスポーツなどで成果を出すためにメンタルの強さが求められる環境にいる人ほど、メンタルが弱い人だと思われることに嫌悪感が恐怖感を感じます。
もちろん、カウンセリンで話をするだけでも不安やストレスから解放されであろうことはなんとなく頭で理解していても、実際に行くとなると、どうしてもプライドや自分の価値観が邪魔をして、結局悩みを一人で抱えることでその場をしのぐ人もいます。
「カウンセリングに行って精神的に楽になりたい」という気持ちと「でもカウンセリングに行けば自分が今まで忌み嫌っていたメンタルの弱い人と同じになる」という板挟みの気持ちに苦しめられてしまうのです。
友達や先輩・後輩から変な目で見られる事を不安に感じている
カウンセリングルームは学校の中にあるために、学外にある心療内科やカウンセリングに行くのと違って、他の生徒や先生からカウンセリングに行く様子が見られてしまうことがあります。
カウンセリングを必要としている生徒にとって、その様子を友達や部活の先輩・後輩に目撃されて、後で何か言われないだろうか…という不安があるために、カウンセリングに行きたくても行けないのです。
また、人目を気にしすぎるあまり、だれにも見られないようにこっそりカウンセリングルームに行くことそのものが、何か悪い事をしているかのように感じて罪悪感を感じてしまうこともあります。
カウンセリングに行ったことで成績や内申点に影響が出ると考えている
カウンセリングに行った事で成績や内申点が減点されることはありません。
ですので、何か学校生活での悩みや不安があれば安心して利用すればいいのですが、そうは言ってもカウンセリングに行くことをあまり肯定的に捉えることができず、「ひょっとしたら成績に影響が出るのではないか…」と感じて、カウンセリングルームに行けなくなることもあります。
高校受験を前にして張り詰めた雰囲気にさらされ続けていくうちに、カウンセリングと成績(内心)に対して関係がないことは理解しつつも、どこか疑心暗鬼になりカウンセリングに対してあらぬ誤解をしてしまうことがあります。
カウンセリングルームに通う生徒同士で人間関係ができているから行きづらい
カウンセリングルームは、場合によっては既にカウンセリングルームを頻繁に利用している生徒のたまり場となっていることがあり、その人間関係が原因でカウンセリングルームに行けなくなるというケースもあります。
たとえば、人間関係の悩みでカウンセラーの方とだれにも聞かれず落ち着いた雰囲気で話をしたい場合、すでにカウンセリングルームに入り浸っている上級生や友達がいると、「なんだか相談しにくいなぁ…」と感じてしまいますよね。
また、入り浸っている人間関係から自分の悩みの内容が漏れてしまい、より悩みを悪化させてしまうのではないか、という不安もあります。
筆者の通っていた学校では、学校生活で悩みを抱えた生徒が保健室に入り浸るのと同じ感覚でカウンセリングルームにも入り浸っていたことがあります。
もちろん、入り浸っている姿からは学校生活で抱えている悩みや不安などを伺うことはできず、入り浸ることで学校生活から脱落せず居場所をしっかりと作ることができていたのだ思います。
しかし、入り浸ることによって同時に、本当にカウンセリングを必要としていた生徒が、和気藹々とした雰囲気に圧倒されたり、相談したくてもできない、どこか入りづらい空気を作っていたのではないかと感じることがあります。
カウンセラーの先生に不信感がある
カウンセラーの先生が若い、自分とは性別が違う、なんとなく性格や話が合わなさそう…などの理由で、カウンセリングを受けたいと感じていても不信感を抱くために、利用しないまま過ごしてしまうということもあります。
スクールカウンセラーと言っても、どんな生徒とも相性がぴったりというわけではなく、生徒によっては
- このカウンセラーの先生とは、うまく話ができなさそう。
- この人に相談するのはちょっと抵抗がある。
- この人に相談するぐらいなら他の先生や保健室の先生に相談するほうが緊張しなさそう。
と感じて、カウンセリングルームに行かないケースもあります。
学校生活で起きた悩みや不安を一人で抱え込まず誰かに相談して対処法を考えるのは大事ですが、かと言って相談する相手が誰でもOKというわけではありません。
相談した相手との相性が悪く、逆に問題を悪化せる結果になってしまえば、次に同じような悩みを抱えても事態が悪化するのを恐れて誰にも相談できなくなってしまう、相談することそのものを諦め、自分ひとりでなんとかしようとして自分を追い詰める原因にもなります。
カウンセラーに対してどこか不信感を抱いている生徒は、過去に相談をした結果、逆に悪化してしまったことが嫌な思い出として強く残っているために、カウンセリングの必要があっても、また同じような辛い思いを繰り返すことを避けるために、一人で抱え込む方法を選択していると見ることもできます。
カウンセラーを通じて親や担任の先生に話が広まるのが怖い
たとえばいじめや嫌がらせ、授業や部活の悩み、家庭での不安などをカウンリングで相談した場合、問題解決のためにカウンセラーが他の先生であったり親にも協力を呼びかけることがあります。
しかし、カウンセリングを受けてる生徒にとっては、悩みが解決されることを望んでいる一方で、そのために他の先生や友達、親などを巻き込んで大事になってしまうのは避けたいという気持ちも抱えていることがあります。
いじめの解決となれば、それこそ担任や学年主任の先生、自分の親と相手方の親、場合によっては校長先生、教頭先生なども読んで多くの大人の前で自分はいじめの被害に遭っていましたということを明らかにしなければならないことも多く、たとえ自分に非がないと分かっていても多くの人から注目される場面になることは避けたいと感じている生徒もいます。
精神的に疲れているときほど、たとえ周囲の大人が味方となる場面でも、大人に囲まれる場面に対して強い緊張感を覚えたり、自分の目の前でいじめっ子が反省や謝罪をしている場面に対して敏感に反応して疲れてしまう可能性もあります。
相談をして楽になりたい一方で、その過程で緊張感やストレスを感じて辛い思いをしなければいけなくなる…と感じてしまうと、カウンセリングが必要だと感じても、なかなか行く勇気が出ず、足が遠のいてしまうのです。
学校のカウンセラーの先生がいつも同じだから、相性が悪いと通いたくなくなる
学校のカウンセリングルームの場合、生徒なら無料で利用できますが、一方でカウンセラーの先生はいつも同じ人であり、相性が悪かった場合、また同じカウンセラーの先生のもとに相談しにいく気力は削がれます。
散々悩みに悩んで、ようやくの思いで勇気を振り絞ってカウンセリングを受けたのに、その結果が散々だったら失望が大きくなるのは無理もありません。
また、心配されるのが嫌だから、親や先生にカウンセリングや心理的なケアを受けたいという気持ちを隠してまで受けたのに、それが失敗に終わってしまうと、他にも悩みを相談できる人がいなくなってしまいます。
お金を払って自分ひとりで学外のカウンセラーのもとに相談するのも現実的には厳しく、また一度失敗しているだけに、「学外のカウンセラーでも失敗したらどうしよう…」という不安を抱え、精神的に参ってしまうことがあります。