進級や進学、就職活動、昇進などをするためには勉強をすることは必須です。
しかし、勉強そのものが嫌い、苦手意識があるということで、勉強が手につかず自分の将来に影響が出てしまう人も多くいます。
誰も好き好んで辛くてしんどい勉強をやりたいとは思いませんし、勉強よりももっと楽しい遊びや娯楽をしていた方が精神的に快適なので、勉強嫌いというのはある意味理にかなっているとも見えなくないですね。
しかし、そうは言っても勉強嫌いは当の本人だけでなく、親や学校や塾の先生、会社の上司や先輩など、何かを教えたり指導する立場にいる人も悩ませることが多く、
- どうしてあの人(子)は勉強ができないのだろうか?
- どうやったらあの人(子)に勉強をしてもらえるようになるだろうか?
と、日々頭を悩ませている事は誰しも一度は経験していることだと思います。
ただ勉強しなさいと上から言うだけでは、心理的リアクタンスが働くことで「今やろうと思ってたのに…」と反発され、余計勉強へのモチベーションが下がってしまいのであまり効果的ではありません。
勉強が嫌いになる人の心理やそうなってしまった原因について、時間をかけてよく観察し、ちゃんと分析することが勉強嫌いを克服するためには大切なのです。
今回は、勉強嫌いな人をもしも指導するときになったときに役立つ、勉強嫌いの人の心理や原因、対処法についてお話致します。
勉強が嫌いなってしまう心理
「勉強で間違う=自分を否定された」と感じる
勉強をするときに必ずやるのが丸つけや採点です。
勉強嫌いの人は、自分の回答に対してバツがつくことを「自分を否定された」と捉えていることがありあります。
自分が否定されるのは辛いので勉強そのものに対して恐怖感を覚えたり、間違ってしまうことを過度に恐れて、なぜバツがついてしまったのか、どこで躓いたから間違えてしまったのか、という勉強で大切ななぜできなかったのかと学ぶことができなくなります。
勉強ができなく怒られた経験がトラウマになっている
また、親や学校・塾の先生から
- 「お前はこんな簡単な問題もできないのか」と怒られる
- 「どうしてできなかったの?」「なんでできなかったの?」と問い詰められる
- 「せっかく勉強したのに、全然結果が出てないじゃないか」と呆れられる
というような、間違いを叱責したり、逃げ場をなくすように質問攻めにあうような言葉を投げかけられたことが原因で「勉強=辛い事、苦しい事」だという考えが染み付き、勉強が嫌いになってしまう人もいます。
教える側も、勉強ができない人に対して「どうして」「なんで」という言葉を使ってしまうことはよくありますが。
ただ一方的に話したり理由を聞くだけなら簡単ですが、勉強嫌いを克服するためには理由を聞くのではなく、どうして間違ったのか一緒に調べて行く必要があります。
勉強に対して過度なプレッシャーを感じている
自分の理想が高かったり、進学校にかよっている、親や兄弟が高学歴などの理由で、自分も勉強が出来る人間でなければならないという思いを持っている人でも、勉強嫌いになることがあります。
周囲の期待や環境の影響で必死に勉強についていくものの、途中で勉強についていけず落ちこぼれてしまった時に、
- 勉強が出来ないと自分の居場所がなくなる
- 勉強が出来ないと自分が自分でなくなるような気持ちになる
と、更に自分を追い込んでしまいがちです。
厄介なのが勉強を追い込むことは一般的に良いこととされており、強迫観念であっても必死に勉強に打ち込む事を止めようとするのはなかなか出来ないものです。
そして、本人が精神的に辛くても周囲からの「少し休んだほうがいいのでは?」という声は着出にくく、必死につらい気持ちを我慢して勉強した結果、燃え尽きてしまったり勉強そのものに過去の苦しくつらい記憶を見出し、勉強が嫌いになってしまうのです。
勉強が出来ない自分が受け入れられないという高い意識も、度が過ぎると勉強そのものへの抵抗感へと変わってしまうことがあるので注意が必要です。
勉強ができないことで見捨てられた経験がある
学校や塾で勉強ができなかったために先生から見捨てられたり「この子は自分の手には追えない」と先生同士でたらい回しにされた経験がきっかけとなって勉強嫌いになることがあります。
たとえ子供の時期であっても周囲の大人から、
- なんとなく自分は嫌われているのでは?
- 勉強ができないことで困らせてしまっているのでは?
- あまりに出来が悪いから、見捨てられてしまっているので?
という、漠然とした不安は感じてしまうものです。
勉強と言っても先生との相性があるのは当然ですが、子供の時期はそんな相性がある云々を理解することは難しく、身近な大人から嫌われている、面倒な子と思われていると感じたことが原因で、勉強に苦手意識が芽生えることがあります。
自分なりに勉強をして頑張っても周囲の大人をがっかりさせてしまう。それぐらいなら勉強なんてしない方が、大人たちも喜ぶだろうという心理が働いていると考えることができます。
「どうせ勉強を頑張っても無理」という無力感を感じている
自分はアホだから、どうせ勉強を頑張るだけ無意味だと感じて、勉強をすることそのもに無力感を感じることがあります
これは学習性無力感と呼ばれるもので、何をしても学力が上がらず、テストも良くならないという経験が続いたことで、「勉強=無駄である」という事を学習してしまい、勉強に対してやる気やモチベーションを失ってしまったのです。
勉強に限らずスポーツなり仕事なり頑張って努力しても、その結果が目に見えなかったり逆に悪化するという結果になれば、努力することそのものを恐れたり、「どうせ努力しても無駄なのでは」と、自分で自分を疑ってしまうことはあります。
何度も失敗が続けば、もうこれ以上失敗して傷つくよりは、何も努力しない方が傷つくことはないと学習し、無力感に陥ってしまうのです。
勉強嫌いな人への対処法
「なんで間違ったの?」と追い詰めるような接し方は控える
勉強が嫌いな人に対して「なんで」「どうして」「なぜ」と問い詰めるのは、自分の惨めさや無力感を刺激し、勉強できない事への罪悪感を抱かせる原因になるので、控えるのが賢明です。
「なんで」と聞かれても、理由はその場で丁稚上げることができてしまう(例えば、寝不足だった、範囲を間違えた…など)ので、勉強嫌いを根本的に克服するためのコミュニケーションとしては、あまり効果的ではありません。
また、勉強が嫌いな人に対して「なんで」と質問しても、当の本人も何が原因で間違ってしまったのかが全く理解できていないという事もよくあるので、「なんでと聞かれてもコメントに困る…」と感じているケースもあります。
「なんで?」聞くのは簡単ですが、勉強嫌いを根本的に克服するには「どうしてできなかったのだろうか」という原因を質問する側も調べていくのが重要なのです。
「間違い=成績アップへのヒント」だと伝える
勉強において間違うことは決して悪ではありません。
むしろ「間違ったところが出た=成績アップへのヒントが見つかった」と、前向きに見ていく姿勢を心がけるのが大事です。
間違ったところがあれば
- どうして間違ったのか原因を探っていく
- 間違った原因がわかったら、復習をする
- しばらくして同じ問題を解いてみる
- ちゃんと正解していれば自信が付く
- もしもできなかったら(1)に戻ってやり直し
と、わからなかったところの原因を洗い出し、繰り返して「わからない→原因を調べる→わかる→できる」という好循環を作っていくことが大事です。
間違ったところがあってもちゃんと原因を調べてなぜ間違ったかがわかる。そして同じ問題を繰り返して解いて正解したことで達成感が得られるのです。
実力に合わせた問題や勉強の目標を設定する
「わからない→原因を調べる→わかる→できる」というサイクルがしっかりできるのには時間がある程度かかるのは仕方がありません。
とくに、根っからの勉強嫌いの人からすれば最初の「できる」に到達するまでに時間がかかりすぎると、途中で脱落してしまうリスクもあります。
時間がかかりすぎてしまう場合は、あえて問題の難しさを下げて様子をみてみる方法を試してみるのがいいでしょう。
なお、問題のレベルを下げるといても、今の実力から判断して簡単すぎず、そして難しすぎない適度なレベルに設定するのがコツです。
簡単すぎると、「こんなのできて当然では?」「馬鹿にしているのでは?」と疑心暗鬼になる恐れがありますし、難しすぎるとただ挫折や打ちのめされた経験だけが残る恐れがあります。
もちろん、一回でビシッと最適なレベルが見つかるに越したことはないですが、一度で決まることを目標とせず何種類かの問題を用意して、時間をかけてどのレベルがちょうどいいのか時間をかけて調べていくようににしましょう。
勉強が嫌いと行為者観察者バイアス
勉強が嫌いだというと
- あなたが甘えているだけでは?
- ちゃんと勉強してないからでは?
- 根性や我慢が足りていないだけでは?
- 自分から理解しようとしていないだけでは?
と、勉強嫌いの理由がその人自身にあると考えてしまいがちです。
こうなってしまう理由に関連して、心理学では「行為者観察者バイアス」という言葉があります。
行為者観察者バイアスは、自分が失敗したときの原因は自分以外に、他人が失敗したときの原因はその人自身に求めてしまうという、バイアス(考え方の偏り)が出てしまう事を指します。
勉強嫌いの場合なら、
- 自分の勉強嫌いに対しては、原因を親、先生などの他人や学習環境などに見い出そうとする
- 他人の勉強嫌いに対しては、原因をその人自身の努力や態度、能力になどに見い出そうとする
というバイアスが掛かってしまうことはよくあります。
勉強嫌いの人と接する時は、その人自身に全く原因がないというわけではありませんが、その人を取り巻く環境や、過去にどういう教育を受けてきたかという勉強嫌いが起きた背景にも目を配っていくことが肝心なのです。