仕事で自分が原因で上司や同僚に迷惑をかけてしまった時に、つい言いわけをしてしまい自分は悪くないと開き直ってしまう人がいますね。
プライドが高かったり、謝ることに強い恐怖を感じている人だと、自分の非を認めることが難しく、自己正当化をすることで責任逃れをしようとすることが目立ちます。
当然ながら自己正当化のための言い訳は、冷静に分析すれば単なる屁理屈や言い逃れにすぎず、大抵の場合は成功せず、やっぱり自分の非を認めるのがオチです。
今回は、自己正当化のメリット・デメリットを心理学の視点からお話したと思います。
自己正当化とは
自己正当化とは、自分に過失や落ち度あってもそのことを認めず、自分は悪くないと主張したり、自分以外の誰かのせいにして精神的な苦痛から逃れることを指します。
自己正当化の行動としてよく上がるものは…
- 自分は悪くないと開き直る
- 自分以外の誰かに責任転嫁する
- 「ルールが悪い」と自分が置かれた環境や条件に原因があると考える
- 「状況が悪かった」「運が悪かった」など、自分ではどうすることができないものせいにする
- 「今回は不運が重なったから仕方ないね」と運のせいにして諦める
などがあります。
自己正当化と外的統制
心理学には失敗の受け止め方に関わる考え方を分けた、内的統制型と外的統制型という言葉があります。
内的統制型は自分に起きた失敗や成功の原因は自分自身にあるという考え方で、言い訳をせずきっちり受け止める性格と言えます。
外的統制型は自分に起きた失敗や成功の原因は自分以外の何かにあるという考え方で、言い訳をしたり、責任逃れの多い性格と言えます。
自己正当化が多い人は、日頃から失敗の責任や原因を自分以外の何かあると考える癖がついている外的統制型の人だと見ることができます。
自己正当化のメリット
自己正当化はどちらかといえばデメリットが目立ちやすいですが、自己正当化をしている当の本人から見れば、少なくともメリットがあるからこそ行っているのです。
では、どんなメリットがあるのか詳しく説明していきます。
自分の意見や立場は正しいと主張できる
自己正当化という文字にもあるように、自己正当化はたとえ苦し紛れであっても自分の意見や立場は正しいと主張するときに使えるコミュニケーションのテクニックです。
例えば、前日の残業の疲れが原因で寝坊が原因で遅刻をしてしまい、そのことを上司から叱られている時に、「遅刻よりも残業させるような仕事のスケジュールに問題があるのでは?」と、もっともらしい理由をつけて自己正当化をすることで、自分の意見は正しく、間違っていないと主張することができます。
この自己正当化がうまく行けば、遅刻したことに対して怒られずに済むかもしれない、むしろ自分の意見が認められて遅刻を叱った方に批判の矛先が向かうかもしれない…という思惑があるために、自己正当化をするのです。
相手よりも優位に立つことができる
自己正当化により自分の意見が正しいと周囲に認められたら、相手に対して優位に立つことができます。
先ほどの寝坊の例なら、自己正当化がうまくいき、自分が叱られている状況から今度は叱っている上司、そして会社の仕組みそのものに対して批判の矛先が向かう可能性もないとは言い切れません。
苦し紛れの言い訳でも、それで自分への批判が収まるだけでなく、あわよくば上司や会社に対して優位に立ち、自分に都合よく話を進められるかもしれない…となれば言い訳をするだけの価値はあると、感じてしまうのです。
また交渉事の場合、話の主導権を相手に握られないために細かいミスを指摘して自己正当化し、相手に対して少しでも優位に立つように振舞うという、実にいやらしいテクニックはよく使われます。
責任逃れ、現実逃避ができる
責任を負いたくない、つらい現実を直視したくないという時にも自己正当化は有効です。
たとえ、自分のミスが原因で損をした人から損害賠償を請求されたとしても、自己正当化がうまく行けば、損害賠償をしなくても済む(かもしれない)ので、何としてでもお金を払いたくない人は、理屈をこねて自己正当化をしようとするのです。
いわゆる、ゴネ得のように、自己正当化は傍から見れば自分の信用を傷つけ損をするように見えるだけでですが、借金やギャンブル、投資などのようにお金が絡む時には、「うまくいけば損をしなくても済む」という大きなメリットがあるのです。
また、自己正当化には現実逃避ができるというメリットもあり、自分の責任や過失といった嫌なことから目を背けて、いつまでも自分に取って居心地のよい環境に居続けるために行うこともあります。
被害者ぶって同情を誘うことができる
自己正当化は自分が正しいと主張するだけでなく、相手の主張や立場は間違っていると周囲に訴える側面もあります。
そして、自分は相手の間違った主張により傷つけられている被害者であると主張すれば、周囲に対して同情を誘い、自分を擁護する人を増やすこともできます。
例えば仕事のミスで自分に明確な落ち度があったとしても、「これは上司のやり方に問題があった」「この会社はブラックな働かせ方をしているから、自分はミスを起こしてしまった」と被害者のポジションを取れば、そのポジションに共感や賛同の意見が集まることがあります。
被害者面をする人のことを咎めるわけではありませんが、自己正当化は被害者を気取って自分の責任を逃れる方法としても使われることがあるので、安易に賛同せずポジショントークになっていないか慎重に見ていくことも大事なのです。
自己正当化のデメリット
反省しないのでミスを繰り返す
自己正当化をし続ければ、当然反省をしないのでミスを繰り返す原因になります。
そして、新たなミスが起きても何かと言い訳をしてなんでミスが起きたのかを反省しないままなので、スキルアップは見込めなくなります。
人間関係のトラブルを招きやすい
反省しない、言い訳をする、屁理屈をこねる…などの自己正当化は、人間関係においてはトラブルを招き原因になります。
自己正当化をし続けると
- 嫌なことがあるとごまかす癖があるから関わりたくない
- 一緒にいると、何もしてないのに悪者に仕立てられて利用されるかもしれない。
- 悪いことをしても謝罪せず開き直る面倒な人だ
- 自分に甘くて他人に厳しいあまのじゃくな性格の人だ
と思われることがあり、表面的な人付き合いにとどめたり、距離を置かれて孤立する原因になります。
また、リアルの人間関係ではなくSNSなどのネットの人間関係の場合だと、炎上を招いて個人情報が不特定多数の人に拡散されてしまう可能性もあります。
ネットの場合は自分の言動が書き込みとして残るので、時間を追ってみていくと自己正当化しているのが第三者から確認しやすいという特徴があります。
対等な人間関係を築けなくなる
自己正当化のために日頃から攻撃的な言動が多くなると、人付き合いにも影響がでます。
面倒なことを避けたい人は自己正当化をする人からは離れ、自分の意見に対していつも肯定的で、反論せず認めてくれるイエスマンばかりが残ってしまうことがあります。
イエスマンばかりに囲まれるのは自分が否定されることはないので心地よいですが、人間関係はイエスマンの方が格下、自己正当化をする人は格上になり、対等な人間関係が築けなくなります。
上下関係のある人間関係は対等な人間関係と比較すると、立場が下の人に負担が大きく長続きしない、本当に心を開いて話すことができず上辺だけの人間関係になるという特徴があり、決して良いことばかりではないのです。
パワハラ・モラハラの加害者になってしまうリスクがある
対等ではない人間関係は、パワハラやモラハラの加害者になってしまうことがあります。
パワハラは職務上の立場を使って行われる嫌がらせで、食上の立場が上であるために立場が下の人(被害者)は嫌がらせを断りにくく、加害者の行動をエスカレートさせやすくなります。
またモラハラの場合も、自分勝手な自己正当化をなんでも受け入れてくれる被害者がいるために、モラハラ行為をエスカレートさせてしまいやすくなります。
いいことがあっても自信が持てなくなる
自己正当化をする人は悪いことも、いいことも自分以外の何かのせいだと考える癖がついてしまうことがあります。
褒められるような場面であっても、
- 今回はたまたま運が良かっただけ。
- 自分の努力や能力ではなく、周囲の人の支えがあったから成功した。
と、成功の原因を自分以外の何かにあると考えるので自信がつきにくく、自己肯定感が育ちづらいと言えます。
自分に取っていいことがあっても気を緩めないことや、謙遜をしたり謙虚を忘れないことは良い事だと思われがちですが、やりすぎると自信を失う原因になってしまうのです。
悪いことがあったら素直に謝るのは大事ですが、自分の努力の結果いいことがあったのなら、卑屈にならずしっかりと努力を認めることはメンタルを強くするためにも大事なのです。
こうして整理すると、日頃から自己正当化を繰り返している人は自分に自信を持つことができない考え方がクセになり、不安や苦痛に対して敏感に反応することを避けるために自己正当化をしていると見ることもできます。