生まれつき繊細で敏感な気質であるHSPの子供(HSC)にとって、学校生活は同世代の子供の声や感情などの刺激を強く受けてしまい、非常に疲れる空間だと感じることがあります。
あまりの刺激の多さゆえに、勉強に集中できなくなってしまったり、ストレスから登校拒否、不登校へとつながってしまうケースもあります。
また、音や匂いのように五感で感じる刺激であっても、そのことに個人差があることが容易に理解できる刺激に限らず、人間関係の雰囲気、他人の感情、非HSPの子なら気づかないような些細な変化など、理解を得にくいことまで敏感に反応してしまう辛さがあります。
理解されにくいことにまで敏感なために、友達や先生だけでなく親からの理解も得られず、生きづらさを抱えてしまう事が子供のHSPの問題点といえます。
目次
HSPの子供(HSC)は刺激が多い集団生活に苦手
義務教育として学校に通うで避けられないのが、集団生活に馴染めるかどうかです。
HSPのように敏感で繊細な気質をもつ子供にとっては、学校は多くの子供たちの声という刺激が否応なく受け取ってしまうために、ストレスを感じやすい場所です。
また、声だけでなく
- 子供同士のよるおふざけやからかいなどで他人の喜怒哀楽を間近に感じやすく、感情に影響されやすい場所。
- 座るものや身につけるもの(体操服、上履き、名札など)、授業で使うもの(教科書の手触りなど)を自分の自由に選べず、不快感を覚える状態で居続けなければいけないこと。
と言った、学校ならではの当たり前のルールが、HSPの子供にとっては大きな負担と感じてしまうことがあります。
また、負担であると感じていても、子供であるためにそのことをうまく言葉(文章)にして、他の子供や先生、親に説明することが難しくて理解が得られにくいこと。そして、不快感を訴えてもことごとく否定されてしまうことから「ひょっとして自分はおかしいのでは?」と自信を失ってしまいがちです。
そもそもHSP(HSC)という言葉は、類似点が多い発達障害と比較すると、その概念が教育現場に浸透していないことも、理解されにくさの一因を担っているといえます。
刺激の多さに疲れて勉強の遅れや不登校を起こすことも
非HSPの子供ならとくに気にしないどころかむしろ快適に感じる学校の環境さえ、HSPの子供にとっては刺激が非常に多くて普通に通うだけで、心身ともに疲れてしま。学校そのものに対して苦手意識を覚えてしまい、勉強の遅れや、不登校(登校拒否)を起こすこともあります。
不登校になったときに、繊細であるがゆえに自分が感じている苦しさやしんどさを訴えても、「この子は甘えている」「気にしすぎ!」「ひねくれたこと言わないで、学校は楽しいところだから行きなさい!」と、無理解からくる的外れな言葉に対しても、深く傷ついてしまうのが、HSPならではの辛さでもあります。
また、HSPの特徴である「動揺しやすい」ことが、同年代の子供からからかいや嫌がらせの対象として、非常に面白い存在であると認識される…すなわち、「いじめ甲斐のあるやつ」と認識されてしまい、いじめを受けた結果として不登校になる可能性もあります。
繊細で刺激に敏感なせいですぐに泣く、すぐに驚く、という感情の振れ幅の大きさは、いじめっ子から見れば、エンターテインメントとしてのいじめの楽しさを感じやすさを増す要素の一つです。
当然HSPの子供にとっては、いじめという行為そのものに対して強い不快感を覚えるのと同時に、いじめを通じて他人がもつネガティブな感情(裏切る、嘘をついてごまかす、強者にへつらう)にも影響されてしまい、他人と距離を置いて心を閉ざす。不登校になって、物理的な意味でも学校と距離を置くことで自分を守ろうとします。
関連記事
HSPの子供にとって「いい学校」の正解はひとつではない
HSPの子供にとって、どういった学校環境が最適なのかは、簡単に決められるものではありません。
いい学校の姿はHSPの子供の数だけあり、その子の特徴や癖に合わせてどうした環境なら落ち着いて学校に通えるのかについて、じっくり考えていくことが望ましいです。
ここでは、HSPの子供におけるいい学校について、多面的に見ていきます。
「少人数の学校」or「大人数の学校」
刺激に敏感なHSPの子供は、比較的こどもの数が少なくて、少人数・少クラスの学校に通えば、人間関係の刺激を受けにくい分、落ち着いた環境で過ごせるという見方もできます。
しかし、少人数であるがゆえに、多様な価値観が生まれにくくなりHSPのように敏感すぎる子供が集団内で悪目立ちをしてしまう可能性もあります。
一方で大人数の学校(いわゆるマンモス校)は、生徒の数が多い分受ける刺激も増えるというデメリットがありますが、一方で生徒の数の多さから様々な家庭環境や個性・特徴を持った子供も集まりやすくなります。
そのことは、多様な価値観が育まれやすい、HSPの子供であっても悪目立ちせずに済む、先生の方も多様な背景を持つ子供の相手をした経験から、繊細すぎる子供に対しても理解を示すことができるというメリットがあります。
なお、学校の敷地面積からみても、多くの子供が通っている学校は、HSPの子供が一人になって落ち着きやすい休憩場所の多さが特徴的です。
少人数且つ小規模な学校では、すぐに人の目が届きやすいので、いじめがすぐに見つかりやすいという安心感があります。しかし、見つかりやすさがHSPの子供にとっては「学校内はどこも目が届いて安心できない」という不安材料になることもあります。
先生との相性もある
HSPの子供にとって、担任の先生との相性も「いい学校」を決める大きな材料の一つです。
例えば、体育会系で感情をよく顔や態度に出す先生は、その感情の激しさに影響されてしまうことで、あまり相性がいい先生とは言えません。
そのほかにも、普段はおとなしいのに怒るとヒステリックに声を荒げる感情の上下動が激しい先生、子供に対して威圧的でコントロールしたがる先生、などは、感情を揺さぶられて激しく動揺してしまうため、苦手な先生の部類といえます。
もしも、苦手な先生に当たった場合は、保健室の先生であったり、スクールカウンセラーなど、落ち着ける場所や悩みを相談できる場所を利用して行くことが、学校を乗り切るための方法の一つです。
なお、中学生になれば、担任の先生が全て教えるのではなく、各教科の先生がそれぞれ授業を行うという授業形式になり、苦手な先生と接する時間が小学校の時と比較すると短くなります。
ただし、苦手な先生と合う頻度・時間が下がったとはいえ、苦手であることには変わりはありません。
通学手段や校風も、いい学校選びの要素になる
小学校・中学受験で、義務教育の段階から受験で自分の通いたい学校を選ぶ場合は、通学手段や校風なども、HSPの子供にとってのいい学校選びの判断材料になります。
例えば、
- 通学のために満員電車に乗って不快な思いをしなければいけない
- 複数の電車やバスの乗り継ぎが必須で時間に追われる場面が出てくる
というストレスフルな環境は、繊細なHSPの子にとって重荷になる可能性があります。
また、比較的自由で締めつけが少ない校風と礼儀作法や社会的なマナーなどの生徒の内面の教育に熱心な校風とでは、感じる刺激の多さは異なってきます。
そのほかにも、小中一貫校あるいは中高一貫校など、エスカレーター式で進学できる学校は、居心地のいい校風や人間関係がそのまま進学しても引き継がれる安心感があると同時に、居心地が悪い場合も関係がそのまま引き継がれてしまう不安があるといえます。
受験によってHSPの子供にとっていい学校を探すときは、学校説明会やオープンスクール、塾などで情報を入手してよく検討しておくようにしましょう。
学校だけでなく家でも居場所を感じられるような子育てを
いくら学校がHSPの子供にとって居心地の良いものになっても、家庭においてその子の繊細さに合わない子育てや教育方針を行っていては意味がありません。
また、子育てのように親子間のみの問題だけでなく、
- 夫婦喧嘩が絶えない
- 兄弟姉妹で愛されている子とそうでない子がいる
- 嫁姑、親戚間でトラブルが起きている
などの家庭内不和もHSPの子供にとっては、大きな刺激の一種であり敏感に反応してしまいます。
そして、家庭内不和に影響された結果、なるべく問題を起こさない「いい子」になるように演じていることで疲れてしまうことがあります。
いい子を演じているので、傍目にはその子には悩みや問題、心の闇のようなものがあるようには見られないものです。
しかし、いい子になる過程で子供自身の希望や願望を抑圧しなければ、家族から受け入れてもらえない…つまり、本当の自分を出せば、家に居場所がなくなるという不安を抱えしまうことがあります。
もちろん、このことはHSPのようにとりわけ繊細な子供に限った事ではありません。なるべく子供が安心できる環境を、学校・家庭の両方で整えていくようにしましょう。
関連記事
参考書籍