学習性無力感とは? 勉強のやる気が出ない、無気力になる心理

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勉強が嫌い、苦手と感じることは誰にでもありますが、ただ勉強嫌いという度を越して

  • 勉強することに全くやる気が続かず、すぐに無気力になる。
  • 勉強に対して全く無気力になってしまい、意地でも勉強をしようとしない。
  • 「どうせ勉強しても無駄」「勉強しても無意味だ」と諦観して。

というような行動をとってしまう人がいます。

受験勉強や仕事で会社の業務で必要な資格のための勉強なのに、上のような行動をとってしまうと、とうんながら自分の将来や会社の仕事に支障が出てしまうので、あまりよろしくありません。

また、よくよく観察するとただの勉強嫌いで怠けているのではなく、「どこか勉強することそのもの意図的に回避しているのでは?」と感じることもあります。

そんな勉強を避けるような行動の理解につながる心理学の言葉として「学習性無力感」と呼ばれるものがあります。

今回は、学習性無力感についてお話いたします。

「学習性無力感」とは?

学習性無力感とは、心理学者セリグマンによって提唱された言葉で、簡単に言うと「何をやっても無意味」という事を学習してしまった状態を指します。

何をやっても無意味と考えているがゆえに、「勉強をしたってどうせ無駄…だから勉強しない」と考えてしまい、ただの勉強嫌いで留まらず勉強そのものに対して無気力になってしまうのです。

また、学習性無力感は勉強に限らず、スポーツや仕事に対してやる気やモチベーションが出ない原因としても考えられています。

学習性無力感に関する実験

心理学者セリグマンは犬を使って以下の実験を行いました。

  1. 2種類のゲージ(A,Bとする)を用意する
  2. Aのゲージに入ると犬に対して電気ショックを与えるが、ゲージ内にあるボタンを押せば電気ショックを止めることができる止まるようにした。
  3. Bのゲージも電気ショックを与えるが、ゲージ内にはボタンも何もなく自力では電気ショックを止めることはできないようにした。
  4. Bのゲージに犬を入れたところ、電気ショックを止めることはできず何をやっても痛みを回避することはできなかった。
  5. (4)でBのゲージに入れていた犬をAのゲージに入れて様子を見た。
  6. 結果、電気ショックを止めるボタンがあるAのゲージにもかかわらず、犬はボタンを押さずに電気ショックに耐え続けるという行動を取った

この実験からは、Bの何をしても電気ショックが防げないゲージ内に入れらた犬は「何をやっても電気ショックは止められない」という事(無力感)を学習したのだと結論づけました。

電気ショックを自力で止められるAのゲージに入れられても、「何をやっても電気ショックは止められない」と学習してしまったので、本当に何もせずただ電気ショックに耐えるという行動をとってしまったのだと考えられています。

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勉強で学習性無力感が起きる背景

勉強の成果がなかなか出ないことで「勉強=無駄」と考えてしまう

勉強の成果が成績の伸びや点数というわかりやすい形でななかなか実感できず、その期間が長期間に渡って続いてしまうことが学習性無力感が起きる背景として考えられています。

最初のうちは「勉強してもすぐに結果が出るわけないよね…」と納得していても、何週間も勉強したのに、一向に目に見える形で勉強の結果が見えなくなると、心が折れてしまい「ひょっとして勉強しても無駄ではないのか?」と自分を疑ってしまうことがあります。

また、成果が出ないという事を受けて

  • 今までよりも勉強時間を増やしてみたけどダメだった
  • 問題集や参考書を変えてみたけどダメだった
  • 教えてもらう先生を変えてもらったけどダメだった

などの失敗が続けば続くほど、「勉強=無駄」という疑念が確信へと変わり、勉強へのモチベーションが下がってしまうのです。

「勉強=無駄」という確信が一度固まってしまうと、いくらその人に合った効果的な勉強方法や先生を紹介しても、勉強に取り掛かろうとしなくなります。

過去の辛く苦しく、そして苦労のわりに結果が出なかったという挫折した経験から「勉強=無駄」と学んだのですから、たとえ全くもって新しい勉強方法であっても、関心を示さなかったり、頑なになって拒んだり、時には逃げるような行動をとってしまうのです。

勉強ができた事を褒められた経験が少ない

勉強のモチベーションは点数や成績という客観的なモノサシの他にも、「褒められる」「認められる」という主観的なモノサシも影響してきます。

勉強が苦手な人の場合、ただ成績に反映されないから無力感を感じる他にも、勉強ができないことが影響し周囲から褒められた経験が十分に得られなかったことで、「勉強を頑張っても周囲は褒めてくれない」と学習してしまうのです。

もちろん、

  • 勉強は自分のためにするものではないのか?
  • 勉強することよりも結果を出すことの方が重要だ

というごもっともな意見はわかりますが、勉強でなかなか結果が出にくい人は、そうでない人と比較すると勉強を続ける意欲が切れやすく、結果が出る前に挫折してしまうケースが少なくありません。

勉強を頑張るというプロセスを褒める、という成功体験を意図的に積み重ねていくことが、勉強しても無駄という考え方に陥らないためには重要な事もあるのです。

勉強ができる人でも陥る場合

学習性無力感は勉強ができても、そのこと先生や親などの周囲の人に褒められた経験が少ない人でも起きることがあります。

子供の頃に自分のためだから勉強をするのではなく「親や先生が褒めてくれるから勉強をする」という目的で勉強をしていた経験をしていた人は少なくありません。

もちろん、誰かに褒められたいから勉強をすることそのものを邪だと否定するわけではありません。

しかし、「褒めてくれるから勉強する」というのは、自分自身では完全にコントロールできない他人の反応を基準とした不安定な評価に基づいた勉強のやり方です。

たとえいい点数であっても、親によっては「いい点数を取るのが当たり前だ」と慣れてしまって褒めなくなる事もあり、褒めるかどうかの基準は状況によりけりで、いつも一定ではありません。

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学習性無力感と学校・塾・家庭教師

学校のように集団で教育をする場面だと、どうしても授業について行けず落ちこぼれてしまう生徒が出ても、その子のために先生が時間を割いて丁寧に指導するのは時間の制約上難しく、放置されてしまいがちになります。

学校の方でも落ちこぼれ対策として、補修や再テスト、実力別の授業を行うなどして、なるべく落ちこぼれないようにすることがありますが、それでも完全に落ちこぼれが出ないというわけではありません。

また、落ちこぼれ対策として、個別指導塾や家庭教師のようなマンツーマンの授業を取り入れるケースもあります。

この場合、学校の勉強でつまづいたところや、よくわからなかったところを詳しく聞くことができるという利点がある方で、

  • 学校の勉強に加えて更に勉強をすることで負担が増える。
  • 教え方や先生との相性が悪いと、ここでも放置されてしまうケースがある。
  • 学んだ成果をマンツーマンの先生以外に認めてもらえにくく、成功体験が味わいにくい

などの懸念があることも覚えておくようにしましょう。

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親や教師が「この子はどうせ勉強しても無駄」と考えてしまうケースも

勉強に関する学習性無力感は子供だけでなく、その子供の親や指導する先生にも見られることがあります。

それがよくわかるのは

  • この子はどうせ勉強しても無駄だから…
  • うちの子はバカだから勉強は無理だろう

と言ってしまうのがいい例です。

いくら勉強を子供に教えたり、あれこれ方法を変えて指導しても、その結果が全然見えない状態が続いてしまえば、子供だけでなく大人も「この子に勉強を教えるのは無駄なのでは?」という不安や無力感を抱いてしまうものです。

大人である以上、子供のように「教えるのが嫌だ」とか「どうせ無駄だろう」ということは思ってもあからさまに口や態度に出さないものですが、大人の態度が変わっていくのをみて、「自分は勉強ができないことで先生や親を失望させている」という不安を感じてしまいます。

勉強嫌いや学習性無力感というと、どうしても勉強で悩んでいる子供本人にばかり焦点が置かれがちですが、実は周囲の大人がその子に対して「勉強を教えても無駄」と無力感を抱いてしまっている可能性についても、深く見ていく必要があります。

いくら自分の将来のため、自分自身のためという大きな目標を掲げても、何度も失敗が続けば不安になりますし、誰しもその不安に打ち勝つメンタルの強さを持っているわけではないのです。

不安に負けて勉強から逃げたことを指摘しても「勉強=無駄」という認識が改まることは、現実的には考えにくく、指摘を避けるために距離を取られたりこちらの話を聞く耳を持たなくなる原因になります。

勉強嫌いというと、どうしても本人の怠慢や甘え、といったその人自身に原因を見出しがちですが、どうして勉強嫌いになったのか、勉強から逃げるようになってしまったのかという外からは見えにくい背景についても、しっかり探っていくことが大事なのです。

もちろん、教える側の人は自分が教えることに無力感を抱いてしまっており、そのことが相手の無力感を助長させているのではないか、という視点を持つことも重要です。

国立大教育学部卒、専攻は心理学。発達心理学、教育心理学、スポーツ心理学、社会心理学を中心に心理学に関する記事を執筆中。そのほかにも、人間関係やコミュニケーション、性格、スマホ、SNS、ゲームなどのあらゆるテーマを心理学の知識を用いて詳しく、面白い記事を書くことを心がけております。

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