先行き不透明な昨今、子供に対して学力やコミュニケーション能力の他にも、メンタル面での強さを養ってもらたい…と考える、親御さんや教育に携わっている方は多いことだと思います。
ここでいうメンタル面の強さとは、人生の中で待ち受ける不安や苦境に押しつぶされないタフさ、どんなことでも自信を喪失せず、自分の人生に対して投げやりにならず、自分を肯定的に見れること。つまり、自己肯定感の高さを指します。
では、具体的に子供に対してどのように接していけば自己肯定感を高めていけるのか。自己肯定感を高めるためにやってはいけないこととは何か…今回は、このテーマについてお話いたします。
自己肯定感を高めるために親・教育者が心がけておくこと
条件付きの愛で接しない
子供の自己肯定感を高めるための基本になるのが「条件付きの愛」で接しないことです。
条件付きの愛とは、たとえば
- テストでいい成績を取ったときは子供のことを褒めるが、悪い成績をとってしまったときは叱る、無視する、がっかりして失望する。
- 自分の言うことを聞いてくれていい子でいるときはご機嫌だが、ごねてを言うことを聞かないときは不機嫌になる。
というように「○○のときは認めるけど、○○でないときは認めない」という、条件をつけて子供に接することを指します。
親・教育関係者ともに、受験・スポーツ・習い事など子供に対して何かしらの成果や結果を出すことを期待する立場にいる人にとっては、条件付きの愛で接してしまうことは立場上よくあることでしょう。
しかし、条件付きの愛で接してしまうと、子供は自分が条件通りに評価されている状態である限りは自信を持てますが、もしも勉強でつまずいてしまったり、反抗期になって親と距離をとりたくなったときに、今までのように周囲から認められていた自分ではなくなる不安を感じて、自信を失ってしまい、精神的な脆さを育ててしまうことになります。
それを防ぐためにも、子供の自己肯定感を高めるためには、無条件で子供のことを認めることが重要です。
たとえ、勉強の成績が悪かろうと、自分の言うことを聞いてくれなくなろうと、今までどおりに認めて愛情を注ぐことが、子供の自己肯定感を育むためには大事なのです。
なお、余談ですが、無条件の愛で接することは、同時に子供に携わる大人が持つ人としての器が試されているとも言えます。
自分の思う通りの結果を上げられない子供に対して、イライラしたり、つい失望して「この子を見放すことができれば、どれだけ楽になれるだろうか?」と感じるかもしれませんが、その気持ちを上手く処理した上で、子供に無条件の愛情を注げるか否か…という、精神的なゆとりを持つことが大人には求められていると感じます。
子供が頑張った過程(プロセス)を認める
条件付きの愛からの続きですが、子供を認めるときは成績や自分に見せる態度と言った「結果」を基準にして褒めたり、喜んだりするしないこと。
その代わりに成績をよくするために頑張っていたことや、いい子でいられるように陰ながら努力していたこと…つまり、過程(プロセス)に着目して子供を認めることが重要です。
過程であれば、たとえテストの成績がよかろうと悪かろうと、どちらにしても褒めて認められるので、褒め言葉には苦労しないのが特徴的です。
ただし、過程を見るときはしっかり子供が日々どんなことに取り組んでいるのか、どのような目標を持っておりそのためにどんなことをしているのか…について、よく調べた上で褒めていくことが肝心です。
「これを言えば子供は喜ぶに違いない」と自分の中の思い込みや憶測で子供を軽く扱うのではなく、しっかり一人の人間として尊重して接していくことが欠かせません。(もちろん、これは子供と関わる場面に限った事ではない)
一度で大量に叱らない
もしも、子供に対して叱ることが必要になった場合「叱る事柄は一度に付き一つまで」とルールを決めておくようにします。
よく、説教をするときに、過去のことをほじくり返したり、脇道にそれて別の事柄にまで触れてついでにそれも叱っておく…という具合に、一度でまとめて叱ってしまうと、子供に過度な恐怖心を抱かせたり、自分に対する否定的な思い込みを持たせてしまう原因になります。
もしも、叱っているうちにヒートアップしてしまい、ほかの事柄にまで触れてしまいそうになった場合は、一旦その場を離れて冷静になれる時間を作ってみる、あらかじめ叱るべき事柄をメモに書いておきそれ以外は触れないようにする、などの対策を立てておくことで防げます。
褒める時に一貫性を保つようにする
子供を認める時に
- お手伝いをしたので褒める。
- お手伝いをしたけど褒めない。
という具合に、どちらもお手伝いをしているのにも関わらず、褒められる時と褒められない時の二種類が存在してしまうと、子供に余計な混乱や不安を与えてしまう原因になります。
子供からすれば、
- 「親or先生の態度は、何が正しくて何が間違っているかよくわからない」
- 「気まぐれで褒めているのではないか?」
- 「褒めてくれない時もあるから、自分のことをよく見ていないのでは?」
と、自分は大事にされていないと感じてしまう。
つまり、自分は関わるだけの価値がないほどに、軽く扱われていると感じてしまい、自己肯定感を下げる原因になるのです。
そうならないためにも、子供を認めるときはなるべく一貫した態度をとり、しっかり子供のことを見ていると伝えるのが重要です。
なお、もしも一貫性を保てない場合は、なぜ一貫性を保てないのかという理由を子供に説明して、子供を軽視していないと伝えていくことも大事です。
上で触れた「お手伝いをしたのに褒められない」状況を例にすれば、「あなたがやったお手伝いは、最後までやれていないから褒めていません。だから、最後までお手伝いをしてくれた褒めますよ」という具合に、どうしてお手伝いをしたのに褒めなかったのかという理由をしっかり説明する。
加えて、どうすれば褒められるかまで説明して、しっかりフォローをいれたコミュニケーションを取ることが大事です。
自己肯定感を上げようとして焦らないこと
「子供のメンタルが強くなってほしい」「もっと自分に自信を持って欲しい」と、子供に自己肯定感が育ってほしいと願う人が陥りやすいのが、より早く、より効率的に自己肯定感を付けて欲しいと、焦りを抱いてしまうことです。
活発な子もいれば、控えめで大人しい子もいるように、自己肯定感が育つスピードには個人差があり、自分が思い通りに効率よくスムーズに自己肯定感が身につかないことで、子供に対してイライラを募らせてしまっては、子供に余計な負担をかけてしまいます。
また、大人が焦れば焦るほどに、子供もピリピリとした空気や、自分に向けられている期待に応えることばかりに着目してしまい、期待に応えられれば認められる自信を身に付けてしまう。つまり、条件付きの愛情をかけたときと同じ自信を身につけてしまうことになります。
そうならないためにも、自己肯定感を育てていくときは、どっしりと構えて根気強く接していくだけの器の広さが、大人には求められるのです。
ピグマリオン効果と子供の自己肯定感
子供の自己肯定感を上げることに関する心理学用語として「ピグマリオン効果」という言葉があります。
ピグマリオン効果はアメリカの教育心理学者ローゼンタールが実験により提唱した言葉で、たくさん褒められて期待をかけられていると感じた人が、その期待に応えようと努力することを指します。
子供の自己肯定感を育てて、メンタル面でのタフさを身に付けるためには、子供に関わる大人が期待や信頼を寄せて認めていくことが大事であること。
つまり、親や教育関係者として子供に自信を持って欲しいのであれば、まずは自分から子供を信頼する姿勢を率先して見せることの重要性を、ピグマリオン効果は示しているのだと分析できます。
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