部活動やスポーツの場面で「褒めて伸ばす」という方法を用いて、結果を残している指導者は、一昔前と比べて大分増えてはいますが、まだ「褒める」という手法は主流ではありません。
未だにスポ根アニメのように、厳しい言葉を投げかけて怒鳴るように指導して結果を残しているケースもありますが、怒ることでは自己肯定感は育ちにくく、選手自身のやる気を引き出しにくい指導法です。
「褒める」指導法にすると、選手自身の成長に必要不可欠な自己肯定感を効果的に身に付けることができます。
褒める事で自分の長所に気づく事ができる
ある選手の練習や試合でのよかった所を指導者が褒める。そうする事で選手自身が自分の強みや長所に気づけるようになります。
すると練習でも、その長所を伸ばそうという新たな目標を立てることができたり、試合でも長所を活かしたプレーをできるようになります。
褒めることで自分が何が得意で、その得意をどうやったら活かせるか、得意を伸ばすにはどうすればいいのかという目標が具体的に描けます。具体的なイメージができるようになれば、練習に取り組みやすくなりやる気も出ます。
部活に限らず勉強や仕事でも、具体的なイメージが描けないことに対してはどうしても億劫になってしまい、やる気が出にくいものですからね。
また、チームに所属している選手皆が皆、自分の長所を自覚しているとは限りません。自分の長所に気づかないまま、なんとなく練習をして、なんとなく試合に出て終わり…では非常に勿体無いですね。
選手自身が気がついていないことを指導者が褒める事で、その選手が自分では長所と思ってはいない事が実は長所だったという、選手にとってはまさに棚からぼた餅。人間意外と自分のいい点には気づきにくいていないものなので、本人はわかっているだろうと思っても、ちゃんと褒める事は無駄になりません。
なお、自分以外の人から、それも自分が信頼を置いている人から気づかされた長所は、本人の記憶に強く残ります。選手との信頼関係がしっかり築けていれば、褒める指導法の効果を発揮しやすくなります。
褒める事でポジティブ思考や自信が付く
選手を褒めると自信がつくと自己肯定感が育ちやすくなります。自己肯定感が育つと新たな目標に進んで挑戦したりモチベーションの維持やいいメンタルを保つ事につながります。
ポジティブ思考が付けば、試合中に不利な場面に陥っても乗り越えやすい。練習の場面でも、小さなミスを連発しても凹みにくくなる。
ミスを深刻に受け止めたままで終わらせてしまうネガティブ思考ではなく、どうやったらミスを繰り返さなくなるか、というようなミスを俯瞰的に見る、建設的なものの見方もできるようになります。
褒める事でいい雰囲気で練習に打ち込める
選手がいいメンタルの状態で練習に打ち込めるようま雰囲気を作ることも、指導者にとっては大切です。
練習の効果や選手自身の気づきを促すために、日々の練習で雰囲気を作るのに役立つのが「褒める」というコミュニケーション。
厳しい言葉や怒鳴り声で萎縮させ緊張感がある雰囲気で練習をするよりも、ポジティブな言葉を掛け合い自分の強みを伸ばそう、いいプレーをしようという雰囲気の中で練習する方が、自己肯定感が身につき、練習への苦手意識も生まれにくくなります。
雰囲気づくりの一環として、時には指導者ではなく選手同士でいいところを見つけあう事を取り入れることで、選手同士の仲が深まり良いチーム作りにつながります。
選手を褒める時のテクニック
褒めることの効果を書きましたが、具体的にどうやって褒めたらいいのかわからない。どうやって褒めたら効果が出やすいのか。その一覧を以下にまとめました。
目標を達成した時に褒める。
目標達成した瞬間にすかさず褒めるのは、自己肯定感を育むのに絶好のタイミング。選手は自分は目標を達成できたんだという確固たる自信を付け、成功体験が心に強く刻まれます。
この成功体験を積み重ねていくことで、新たな目標で挫折や困難にぶつかってもへこたれないメンタルを鍛えることができます。
新しい技術を習得ができるようになった時に褒める
選手がトレーニングで新しい技術を習得してすぐに褒めることによって、習得した技術が記憶に残りやすく確実なものになりやすいです。
例えば、筋トレやウェイトトレーニングのように、正しいフォームで行うことが大事な場面で、ちゃんとしたフォームができるようになった時にすかさず褒める。そうする事で、選手自身が「いいフォーム」や「効果的な筋トレの方法」といった事の理解をより効果的にできるようになります。
結果よりもプロセス(過程)を褒める
試合の勝ち負けのような結果よりも、その試合に向けて頑張ってきた過程を褒める。そうすることで、例え試合の結果がどうであれ自身をもってプレーを続けられるメンタルを育てることができます。
また、結果的に失敗に終わってしまったあるプレーの内容でも、そのプレー自体は非常に良かったのであれば褒めるのが大切です。選手の頭の中で「いいプレーをしたけど失敗してしまった」という考え方が身につくのを防ぐ効果もあります。
結果そのものは選手自身が自由コントロールできませんが、プロセスは選手自身がある程度コントロールできる。プロセスをコントロールできるような努力を続ければ、いい結果がでる確率も上がります。
練習の中の小さな努力を褒める
練習の中の些細な出来事。例えば、遅刻せずに時間通りに来たとか、練習道具の後片付けがしっかり出来ている、といった事でも見つけたらしっかりと褒めましょう。
とくに初心者のように、実際の練習で出来ることが少なく何かと自信を喪失してしまいがちな選手には効果的です。小さな努力を褒めることで自信をつけるだけでなく、練習そのものへの苦手意識を生まない事にもつながります。
過去に褒めた所を繰り返して褒める。
過去に褒めた所を何度も繰り返して褒めることで、選手自身の良いプレーのイメージが強化されます。
自分にとっていいプレーのスタイルや長所をちゃんと自覚できるようなり、本番でも実践できるようにするには、過去に褒めた所を定期的に繰り返して褒めることが効果的。
「よく頑張っている」というフレーズを使う。
選手は自分の努力が実ってはいない時に、「このまま頑張っても本当にうまくいくのだろうか…」という漠然とした不安を抱き、自分の努力に疑問を抱き始めます。
そういう場面で努力が中断されないように「よく頑張っている」と、努力している過程を褒める事で、選手が不安の渦に飲み込まれることを防ぎます。
また、「よく頑張っている」というフレーズは自分自身の努力を認める場合としても効果的です。自分で自分を褒めることもまた、いいメンタルを保つためのコツの一つです。指導者だけでなく選手自身がいいメンタルを保てるように、自分を褒めるクセを身につけていきましょう。
まとめ
褒めるという指導法は、ただ大きな声で怒るよりも難しく、選手のことを意識してよく観察する必要があります。褒めることは怒るよりも難しく、指導者としても自己研鑽しなければ身に付ける事のできない指導法です。
また、指導者は褒めているつもりであっても、選手にとっては褒められているとは感じていない、逆に皮肉で言っていると感じている、という場面もめずらしくありません。そのギャップを埋めるには、上にまとめたような「褒め方」のテクニックを確認して実践していきましょう。