言葉の暴力や相手の尊厳を傷つけるような態度で精神的に傷つけたり、相手を自分の思い通りにコントロールしようとするモラルハラスメント(モラハラ)といいます。
モラルハラスメントはパワハラやセクハラと比較すると知名度も低く、ドメスティックバイオレンスや家庭内暴力のように目に見える傷や怪我が体に残るわけではないので、モラハラの存在が周囲から認知されにくいという厄介な特徴があります。
今回は、モラルハラスメントの被害者になりやすい人の特徴や性格についてお話いたします。
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目次
モラハラ加害者は攻撃しやすい人を意図的に選んでいる
モラルハラスメントをする人には
- 自己中心的、自己愛が強い
- 周囲を見下した言動が多い
- 他人をコントロールしたがる
- マウントを取りたがる
という特徴がありますが、かと言ってところかまわずモラハラ行為をして、自分の中のイライラやストレスを解消しているわけではありません。
モラハラ加害者は自分がコントロールしやすそうな人や、自分にないもの(能力や魅力)を持っている人を意図的に選んで攻撃しています。
モラハラの加害者は
- 自分よりも大人しい人
- 仕事や学校、家庭などの人間関係にいて立場が下の人
- 「荒々しい言葉や態度で要求すれば思いどおりに動いてくれそうな人」
- 「この人なら強い口調で罵っても反撃されないだろう」と思える人
- 自分にとって気に入らない人
- 自分にはない魅力をもっている人
などの、自分よりも弱く反撃されるリスクが少ない人を選んで、言葉の暴力や威圧的な態度をとって相手をコントロールしようとします。
また、モラハラ加害者は自己愛が強く自分が一番でないと強いストレスや葛藤を覚えるために、自分よりも能力のある人に対して強い嫉妬や一方的な恨みの感情で攻撃を加えることもあます。
加害者=被害者の関係は「男→女」のパターンだけでなく、「女→男」のパターン、男同士、女同士でも起こります。
恐妻家と腰抜け夫のように、体格や筋力といった力の差が逆転した加害者=被害者の関係も存在しています。
モラルハラスメントの被害者になりやすい人の特徴・心理
大人しい、自己主張をしない
モラハラ加害者にとっては、自分がコントロールしやすい人間として、大人しく自己主張しない性格の人は格好のターゲットです。
汚い言葉や強い口調で自分のわがままを言えば、気迫に負けて相手は自分の言うことを聞いてくれる、実に都合のよい存在なのです。
大人しいと言っても口数が少ない人もいれば、言いたいことがあっても我慢して自分のひとりで抱え込む人もいますが、加害者にとっては我慢しているかどうかは関係なく、自分にとって利用しやすい人として見られてしまいます。
何かあったら自分を責めてしまう
モラハラ加害者は、自分のプライドが傷付けられた、自分の思い通りにならないことがあったら、八つ当たりをすることがあります。
当然八つ当たりをされた側にとっては、自分に何の責任もないことで攻撃されたことに対して怒ったり、不快感を示すのは自然な反応です。
しかし、中には相手に八つ当たりされても「ひょっとして自分は相手を怒らせるようなことをしたのではないか?」と、相手を責めるのではなく自分を責めてしまう人もいます。
自分を責めてしまう人はモラハラ加害者の八つ当たりや理不尽な言動をエスカレートさせてしまいやすく、モラハラ加害者は何一つ反省しないまま、被害者は自分に罪はないのに罪があったと背負い込んでしまうことがあります。
「相手を責める」というとネガティブな印象を持つ人が多い行動ですが、相手に明確な非があり且つ自分に非がないことに対しては、しっかりと相手に対して怒りや不快感を示すことは自分を守るためには重要です。
献身的で尽くすタイプ
モラハラ加害者が口に出すどんな理不尽な要求に対しても素直に受け入れてしまい、必死に尽くしてしまう性格の人は、加害者の行動をエスカレートさせてしまいやすくなります。
仕事や人間関係においても理不尽に耐え、滅私奉公することが重要だと考えている人ほど、相手の理不尽な要求を断れず、自分を押し殺して半ば相手に精神的に依存するように尽くしてしまうことがあります。
また、モラハラ加害者にとっても、自分の要求をなんでも聞いてくれる人は束なしたくなく、お互いに依存(共依存)する関係に発展しやすいとも言えます。
一方的に尽くす、尽くされるという関係では、どちらかが常に負担や我慢を強いられることになり、その関係が長期間に及ぶことは好ましい状況ではありません。
なお、尽くすタイプの人はドメスティックバイオレンス(DV)の被害者にもよく見られるタイプです
自分に自信が無い人
モラハラ加害者の自己中心的で自分が世界の中心だと言わんばかりの大胆な行動は、自分に自信が無い人にとっては強い憧れや尊敬の対象となることがあります。
加害者の強い自己中心性から来る「自己主張できる」「行動力がある」「堂々としている」という部分だけを切り取れば、確かに就職活動や社会人として活躍していく上では重要なスキルなので、憧れや尊敬の対象となるのも無理はありません。
被害者は加害者の表面的な自己主張のスキルであったり、行動力だけで「カリスマ性がある人だ」と判断し、加害者が持つ攻撃的な側面に気がつかないまま距離を縮めていってしまうことがあります。
ある程度親しくなると、加害者は「この人は自分の言うことを聞いてくれる人」だと感じて、言葉の暴力やわがままな言動を行うようになります。
今まで憧れや尊敬の念で抱いて来た人からの理不尽な要求であっても、根本的な自信がついておらず、依然として相手に憧れを抱いている場合は、無茶な要求は自分に自信をつけるためのアドバイスだと感じて、加害者の行動をエスカレートさせてしまう原因になります。
なお、胡散臭い自己啓発セミナーの講師と参加者のような場面でもよく見られる関係です。
加害者から見て立場が下である
自分よりも立場が低い相手は、モラハラ加害者にとってはそれだけで自分にとって都合よく利用・搾取しやすい存在となります。
年齢、学歴、キャリア、スキル、友達の数、SNSのフォロワー数など、相手よりも有利に立てるものであればなんでも活用し、立場が上であるということを利用してハラスメント行為をします。
立場が下では被害者となった人は、立場が下であるという明確な差があるために立場が上の加害者には逆らえず、つい要求を飲んでしまいます。
加害者よりも能力が嫉妬を買いやすい特徴がある人
仕事や学校でよく見られるのは、加害者の嫉妬や一方的な恨みからくるモラハラです。
モラハラ加害者は、自分よりも仕事ができる、学力がある、才能がある、運動神経がある、上司や先輩から好かれている…といった、ある人間関係の中で自分が一番ではない、自分の思い通りにいかないという状況に対して強い葛藤を感じます。
自分よりも上の人がいるために「あの人がいるせいで私が評価されない」という状況に苦痛を感じると、その状況を崩すべく言葉の暴力や無視、集団から孤立させるなどの手段で相手に嫌がらせを繰り返します。
それも、加害者である自分の評判が落ちないように陰湿かつ、いじめやパワハラと思われないように、さりげなく普段の会話の中で相手をマウントする言葉を挟むような方法で精神的に痛めつけようとします。
友達が少なく孤立している
友達が少なく孤立している人はモラハラ加害者から見れば「友達が少ないので反撃されリスクが低い」と思われ、ターゲットになりやすい存在です。
また、友達が少ない人は自分がモラハラの被害にあったとしても助けを求められるほど仲の良い人や相談できる人がいないために、加害者の行動をエスカレートさせてしまいがちです。
もちろん、これはモラハラに限らず、いじめやパワハラでも同じで、友達がいるということを周囲に見せておくのは、自分がいじめやパワハラなどの理不尽な目に遭うことを避けるのには有効な手段になります。
モラハラ被害者は加害者に心理的に依存してしまうことも
モラハラ被害者の中には、今まで人間関係に恵まれてこなかった、虐待やアダルトチルドレンなどの家庭環境に問題があり人とうまくコミュニケーションや距離感を取る経験がなかったために、モラハラ加害者であっても精神的に依存してしまうことがあります
今まで十分な人間関係や愛情が手に入らなかった人にとっては、たとえ自分に対して理不尽な言動をするモラハラ加害者であっても、「自分のことを見てくれている」「自分のことを必要としてくれている」と感じることがあります。
依存しやすい人は、誰からも必要とされない状況よりも、たとえ乱暴や暴言を繰り返す人がいる状況の方が安心感を感じてしまい、理不尽な要求を受け入れ相手に尽くそうとします。
また、精神的に依存していると、加害者の理不尽な行動を理不尽だと思わず「自分のためを思って厳しくしてくれている」「これは期待の裏返し(or愛のムチ)だからしっかり応えなければ」と、とても健気で純真な心で相手の理不尽に対して意味を見出そうとします。
依存する=依存される、支配する=支配されるような人間関係や、誰かが歪みを背負い我慢を強いられる、という人間関係ではメンタルを病んでしまう人が出るのも無理はありません。
べったりと依存したり、健気すぎるまでに相手に忠誠をつくすのではなく、お互いにつかず離れずの適度な距離感を保ち、互いに尊重できるような人間関係こそが、メンタル面の健康を保つためには重要と言えます。
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