人との距離感の取り方で苦労したり、「この人ちょっと近づきすぎて強引な人だなぁ…」「そんなに距離感を取らなくてもいいのに…」と感じたことはないでしょうか。
このように感じるのは心理学でいう「パーソナルスペース」が影響しているからなのです。
パーソナルスペースは、いわば自分の心理的なテリトリー、縄張りのようなものであり、親しい人なら自分のテリトリーの内側に入ってきても安心することができ、逆に親しくない人の場合は自分のテリトリーに入ってこられると警戒感を抱いてしまいます。
パーソナルスペースを知ることは、仕事で和やかなコミュニケーションをするのにも役立ち、友達関係や恋愛ならお互いに変な緊張感を持たずに打ち解けるのにも役立ちます。
今回は、パーソナルスペースと、パーソナルスペースを応用したコミュニケーションのコツについてお話しいたします。
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パーソナルスペースとは
パーソナルスペースとは、人が自分の周囲に持っている他人が近づくと不快に感じる空間のことで、「パーソナルエリア」「対人距離」とも言われています。
一般的に家族や友達・恋人のように親しい間柄の人であればパーソナルスペースは小さく、すなわち相手との距離が近づいても不快感は感じなくなります。
一方で嫌いな相手や初対面であまり親しくない相手であればパーソナルスペースは大きく、すなわち相手との距離が近づくと不快感は感じるようになります。
どこまで近づいてこられたら不快感を感じるかには個人差がありますが、自分と相手の状況や間柄に応じて適度な距離感を保てるようにすることは、仕事においては過度に不信感や緊張感を持たれないためにも重要であり、恋愛においては自分と相手との心理的な距離感を知るのに活用されることがあります。
パーソナルスペースの種類
パーソナルスペースには自分と相手の親しさによっていくつか種類があります。
恋人、家族、友達関係、仕事仲間、お客さん、初対面の相手など、親しさに応じて不快感を感じる距離感は変わってきます。
文化人類学者のエドワード・T・ホールは、パーソナルスペースについて以下のように分類をしています。
密接距離(~45センチメートル)
恋人や家族のように自分の体に相手が触れられても問題ないほど親しい間柄です。
一方で初対面の相手や親しくない相手がこのパーソナルスペースに入ってくると不快感を感じてしまいます。
満員電車や行列などで不快感を感じるのは、相手が自分の密接距離の範囲内に入ってきているからというわけなのです。
個体距離(45~120センチメートル)
自分と相手が手を伸ばせば触れることができる距離です。一般的に友達関係で多く見られる距離感です。
相手の表情をよく見ることができる距離なので、ちょっと踏み込んだ話やプライベートな話をするときはこの距離感を意識するのがいいとされています。
なお、この距離感から近づき過ぎると恋愛感情があるのではないかと違和感を持たれることもあります。
社会距離(1.2~3.5メートル)
仕事の会議や打ち合わせなど、ビジネスや形式ばった場面でよく使われる距離感です。
形式ばった場面では適度に距離感が空いているので、お互いに過度な緊張せずに話せる距離感ですが、相手の表情がよく見えにくい距離感なので、仲の良い間柄であったりプライベートな話をするのには向いていません。
密接距離や個体距離と違って、手を伸ばしても相手の体に触れらる距離ではないので、親しい間柄でこの距離感だと、寂しさやよそよそしさを感じる原因になってしまいます。
公共距離(3.5~7メートル以上)
教室における先生と生徒、セミナーでの講師と受講生のような場面でよく使われる距離感です。
社会距離以上に相手と離れているために、相手の顔や表情がよく見えず個人的なやり取りをすることができない距離間です。
講演会のように一方的に相手の話を聞くときは、この距離感だとちょうど良いとされています。
パーソナルスペースを人付き合いにいかすためのコツ
男性のパーソナルスペースは卵型、女性のパーソナルスペースは綺麗な円の形をしている
パーソナルスペースは性別関係なく、その人を中心とした綺麗な円になっているのではなく、男性の場合は前方にパーソナルスペースが伸びた卵のような形、女性の場合は綺麗な円を描くと言われています。
そのため、あまり親しくない男性同士、あるいは男女のペアで話し合うときは向き合って話しあうと不快感を感じてしまい険悪なムードが漂ってしまう可能性があります。
親しくないうちはまずは横並びの席で話し合うようにしてお互いに不快感を感じないように気遣う。親しくなてきたら真正面の席で話し合うようにするのがいいでしょう。
相手との仲のよさに応じて過度に緊張させないようにパーソナルスペースを利用してコミュニケーションができれば、相手とより親密になれるだけでなく、人の気持ちに立って考えることができるいい人と思われ、より穏やかな人間関係を築くことができます。
不快感を感じやすい状況を避けるようにする。
混んだ映画館の中、満員電車、有名店の行列。スーパーのレジ待ち、エレベーターの中、(男性の場合)トイレで隣同士になる…などなど、親しくもない人との距離がどうしても迫ってしまう場面でストレスや不快感を感じるのは、自分のパーソナルスペースに誰かが踏み込んできているからなのです。
人が密集する状況というのは、ただ「狭いなぁ」「窮屈だな」と不快感を感じるのは自然な反応であり、何も卑下したり人の集まる場所が苦手な自分を責める必要はありません。
人の多い場所が苦手でストレスを感じやすいのであれば、例えば満員電車を使わないような仕事を探す、満員電車に乗らなくてもいい場所に引越すなどの対策を立ててストレスになるような状況を避ければいいのです。
あえてストレスフルな環境に無理に自分を合わせるのではなく、自分にとって心地良い人との距離感がとれるようになるのが、ストレスフルな生活を少しでも楽に過ごすためのコツです。
パーソナルスペースについて知っておけば、過剰なストレスから自分を守ることにつながるのです。
パーソナルスペースには個人差がある
上で紹介したパーソナルスペースの分類はあくまでも目安であり、親しくない人に近づかれてもそこまで不快感を感じない人もいれば、逆に距離感があるのに不快感を感じる人もいます。
自分がコミュニケーションを取ろうとしている相手が、どれだけ近づかれてたら不快に思うのかを想像したり、相手の立場になって考えてみることは、円滑なコミュニケーションをするためには大切です。
相手に近づきすぎて緊張させてしまっているようなら距離を取る。逆に、もっと親しみをもってほしい素振りを見せているのなら、こちらから近づいていくように心がけましょう。
自分のパーソナルスペース知ることで気持ちを落ち着けることができる
自分のパーソナルスペースがだいたいどれぐらいなのかを知っておくことで、人間関係で余計なストレスをかかえることを防げます。
上で紹介した目安よりも自分のパーソナルスペースが狭ければ、それに応じた適度な距離感を保てるように意識するようにしましょう。
なお、パーソナルスペースを意識して相手に近づくときは、距離が近づくだけに自分の目線にも気を配ると効果的です。
誰かと話をするときは相手の目を見て話すのが基本ですが、一方で人の目を見てうまく話せない、人の目線が過度に気になってしまう人もいます。
視線が怖いと感じる人の心理や悩みに興味があれば、以下の記事を読んでみると参考になるかもしれません。
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