メンタルが弱い人を表すネットスラングの1つとして「豆腐メンタル」という言葉があります。
豆腐メンタルとは、食品の豆腐のように衝撃に脆くすぐに崩れてしまうようなメンタルの弱さ、打たれ弱ことを表す言葉であり、
- ストレス耐性が低い
- 些細なことですぐに落ち込んでしまう
- 傷つくのを恐れて何事にも臆病になってしまう
- 嫌な事があってもなかなか気持ちを切り替えられずクヨクヨしてしまう
- そして、クヨクヨしている自分に更に自己嫌悪してしまい、憂鬱な気分が抜けない。
などの特徴があります。
今回は、そんな豆腐メンタルの人にみられる心理や考え方の癖について、深堀りしてお話いたします。
豆腐メンタルの特徴、考え方の癖
モノの捉え方が両極端
豆腐メンタルの人によく見られるのが、物事の捉え方が両極端であるという点です。
例えば
- 「生きる」か「死ぬ」か
- 「就職して人生安泰」か「就職失敗して一生非正規orニート」か
- 「受験で成功してバラ色の大学生活」か「受験で失敗してそのまま社会からドロップアウト」か
というように、大成功か大失敗かのような物事を白か黒かの二つに分けて見ている事があります。(=二曲思考)
ほどほどにいい面、悪い面を見るのではなく、いい面も悪い面も両極端なものしかないと考えているために、失敗に対して過度に臆病になったり、失敗したら「自分の人生は何もかも終わりだ」と感じて強いショックを受けるのです。
また、いい面も悪い面もどちらも極端に捉えすぎるせいで、感情の起伏・気分の上下動が激しいのも特徴の1つです。
上下動の激しさから「有頂天→どん底」のように、落ち込むときはより強い落ち込みになるので、普段からメンタル面が安定しにくく情緒不安定になったり、挙動不審な行動をしたりする傾向もあります。
ネガティブな事を拡大解釈する癖がある
例えば就職も見据えた上での大学受験で失敗したとしても、その後の自分の頑張りや政治や経済の流れ次第では、もっと良い職場に就職したり、就職以外の道で自分の力を発揮したり、仕事ではなく趣味や遊びの中で自分の居場所を見つけるという可能性は否定できません。
しかし、豆腐メンタルの人はそのようなポジティブな可能性を見るのではなく、受験で失敗したという事実を重く受け止めすぎてしまい、「その先の就職も、就職以外の生き方も、趣味や遊びも何もかもダメだ」とネガティブなことをさも決まったことかのように拡大解釈してしまう癖があります。
また、受験失敗のようなその後の人生に大きく関わることばかりではなく
- 初対面の人とうまく話ができなかった → その人とはもう二度と仲良くなることができない。
- 部活の練習で怪我をしてしまった → もう部活で二度と自分が活躍することはできないから退部したほうがいい。
- SNS上でフォロワーを解除された → もう自分は何もつぶやかず、ただ嫌われないようにして生きなければいけない。
というような、悪い部分にばかり注目して針小棒大に見てしまう傾向があります。
なお、このように「○○ならば△△になる」というような、ある状況になると自然に浮かんでくる思考のことを、心理学では自動思考(スキーマ)と呼びます。
豆腐メンタルの人がネガティブなことばかり拡大解釈してしまうのは、過去の辛い経験や嫌な出来事、恥ずかしいと感じた出来事などが影響していると考えることができます。
また、自動思考はその人の価値観や考え方、アイデンティティ(自我同一性)と強く結びついているために、改善していこうとなるとアイデンティティそのものが揺らいでしまい精神的な苦痛を感じることもあります。
「期待に応えなければいけない」と自分で自分を追い込みすぎてしまう
豆腐メンタルの人は自信のなさや自己肯定感の低さゆえに、自分に向けられた期待に対して「こんなダメな自分にせっかく期待してもらったのだから、絶対に応えなければいけない!」と自分で自分を過度に追い込んでしまうことがあります。
もちろん、期待に応えることそのものは素晴らしいのですが、自分を追い込み過ぎて過度に緊張したり、「失敗する=死と同じ、見放される、見捨てられる」と大袈裟に捉えてしまうことで苦しさを感じてしまいます。
追い込みすぎることから普段通りの自分の実力を発揮しにくくなり、受験や就職面接などで自分からミスを招いてしまうことも少なくなく、その経験が強く残ったことで更に自己肯定感が低くなってしまうこともあります。
また、仮に期待に応えることができたとしても、その時の辛い経験が残ってまた同じような場面になると過度に臆病になったり、当時の辛い出来事が思い出されて精神的に不安定なることもあります。
「断られる=自分の全てを否定された」と捉える
「たわいもないおしゃべりをしている時に、自分の話題がスルーされて他の人の話題に移った」というような些細なことに対して、ただ話題が合わなかったのかなと考えることができず「自分の話題がスルー=自分の人格や考えを否定された」と考えてしまうことがあります。
- 既読無視された
- メッセージを送ったのに返事が返ってこない
- 自分の意見に対して賛同以外のコメント(疑問や指摘など)を受けた
などの何らかの形で自分の言葉や意見が受け入れられなかった場面で、ただ自分の言葉や意見が受け入れられなかったのではなく、その言葉を放った自分の存在や人格が他人や集団から受け入れられなかったのだと感じて強く落ち込むのです。
しかし、この考え方は同時に「自分の意見はいつでも受け入れられるに違いない」という周囲に対する過剰な期待を無意識のうちに抱く癖があると考えることもできます。
この場合の期待は、「こうなったらいいなぁ…」という淡い期待のようなものもあれば、「こうなるに違いない」という強い確信や思い込み、予言のような期待になっていることもあります。
しかし、いずれにせよ自分の中で抱いている期待には変わりなく、現実から著しく乖離しても無理はないと言えます。
自分のことで精一杯で精神的なゆとりがない
「期待に応えすぎてしまう」「断られる=自分を全否定」と考えてしまう裏には、いつも自分のことだけで精一杯で精神的なゆとりがないと言ってもいいでしょう。
もしも、相手の立場や状況について考えることができれいれば、例えば自分の話題がスルーされたとしても
- 今は私の話題に乗るような気分ではなかったのかな?
- もしかしたら疲れていて話題に乗るのが面倒だったのかな?
- 他にどんな話題を振れば、喜んでいたのだろうか?
と、「自分の否定された」と落ち込むのではなく「相手の体調や様子を見て話をすれば次はうまくいくかも」という前向きに気持ちになれるものです。
豆腐メンタルの人はよく言えば自分のことで精一杯である、悪く言えば自己中心的で自分以外の人に考えが及ばない、他人に対して気を配ったり寄り添うことが苦手だと言い換えることができます。
なお、上でも述べているように、精神的な余裕のなさは過去の辛い経験や自己肯定感の低さから来ていることも考えられます。
また、「精神的な余裕がない→緊張しすぎてすぐ不安になる→失敗が起きる→ますます精神的な余裕がなくなる…」という負のスパイラルから抜け出せなくなるのも特徴的です。
他人と自分と境界線が薄く影響されやすい
豆腐メンタルの人に関連する気質に「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」というものがあります。
HSPの人は、音や匂いといった刺激から、人間関係の雰囲気やなにげない言葉や態度に対して敏感に反応し、繊細で傷つきやすい人の気質を指す言葉です。
HSPの人は自分と他人との境界線が薄く、他人の怒りや悲しみといった負の感情を自分も感じている受けとってしまい、自分のことではないのにひどく落ち込んだり、罪悪感や劣等感に苦しむことがあります。
HSPは「猫舌」や「暑がり」のようなわかりやすい感覚の過敏さではなく、言葉・態度・雰囲気といった曖昧でわかりにくいことに対して敏感に反応してしまうために、周囲からの理解を得られにくいことがあります。
そのため、自分の繊細さを相談しても受け入れられることがすくなく、自己肯定感を失ったり自分の感じ方が間違っている、異常であると捉えてしまい自信も持てなくなることがあります。
豆腐メンタルの人が知っておきたい「認知の歪み」
心理学では、ストレスになりやすい思考のパターン(癖)には認知の歪みがあると考えられています。
豆腐メンタルの人は、普段から悲観的に考えたり、両極端な物の見方をするなどの、現実を歪んだ目で捉えてしまうことから、過度なストレスやショックを感じやすくメンタルを不安定にさせてしまうのだと考えることができます。
認知の歪みが強すぎると、うつ病などのメンタルを病む原因になったり、歪んだ目で物事を見ることから他の人と円滑にコミュニケーションを行うことが難しくなり孤独に苦しむこともあります。