筆者は他人から笑顔を向けられた時に、うまく表現できない恐怖というか、非常に緊張する傾向があります。
それも実際に会って笑顔を見せてくる人に限らず、TVやスマホ上で笑顔を見せてくる人のように、直接の面識もなければ、わざわざ笑顔に対してこちらが何か返事を返す必要性がない人に対してまでも、妙な緊張感を覚えてしまう。
しかし、一方でアニメや漫画などの、二次元で表現されている人物(キャラクター)が見せる笑顔に対しては、そこまで怖さや緊張感といったものを抱くことはない…という、なんともアバウトな恐怖心は、我ながら不思議でなりません。
今回は、そんな筆者が感じる、笑顔に関する怖さや苦手意識に関する考察について、お話しいたします。
笑顔を向けてくる状況とはどういうものか?
職場や学校生活などで実際にリアルで合う人に対して恐怖心を持つとすれば、その恐怖心は「相手に対して嫌われてはいけない」とか「笑顔を見せているのだから、自分も笑顔で返さなければ」という類の強迫観念や義務感が影響しているのだと考えられます。
しかし、冒頭でも述べたようにテレビやスマホ上で見かける赤の他人、且つ返事やリアクションを取る必要性がない人にまでも、同様に怖さ感じている事実は、単に「笑顔に対して何かリアクションをせねば!」という義務感のみでは、怖さの理由を説明することはできません。
ここで、一旦笑顔を向けてくる人そのものから離れ、自分と自分に笑顔を向けてくる人を含む状況を俯瞰的に見てみましょう。
まず、笑顔を「向けてくる」人という言葉からわかるように、笑顔はあさっての方向ではなく、笑顔で接する必要性がある人に向けて…もっと言えば、その人の視界に自然と入るように向けられているはずです。
ただ笑顔を振りまくのではなく、会話をしたい人とか、笑顔を向けたい人の目を見て笑顔を返すことは、(とくに仕事の人間関係では)コミュニケーションの基本中の基本でしょう。
もしも、笑顔は向けるが相手の目を見ていない、あるいは笑顔も視線もあさっての方向を向いているとなれば、相手に不信感や違和感を抱かせてしまい、ぎこちないコミュニケーションなるであろうことは想像に難くありません。
また、TVやスマホ上で見かける笑顔も、その多くはカメラ目線になっているものです。
カメラの先にいる視聴者に何かを訴えかけるためには、カメラ目線を意識するのが一般的。もしカメラに写りつつも、視線や笑顔がカメラ目線でなければ、視聴者の注目を集めたり、共感や親近感を抱かせることは難しくなります。
なお、モデル写真などでは意図的にカメラ目線を外すことにより、クールorミステリアスな印象やノスタルジックな雰囲気を強調させるという表現手法もあります。
しかし、笑顔をしつつカメラ目線を外すとなれば、親しみやすさを出したいのかクールな印象を出したいのかがぼやけてしまう。従って、笑顔でカメラに写るとなれば、カメラ目線になるのが自然であり、合理的であると言えます。
なお、余談ですがGoogle画像検索で「笑顔」と検索すると、その写真の多くがカメラ目線です。
顔の向きが違えど、目線の先はカメラに向けられており、カメラ目線を意識していることが伺えます。
笑顔ではなく、笑顔を見せる人の視線が怖いという仮説
このことから導き出されるのが、実は笑顔ではなく、笑顔を向けてくる人の視線が恐怖心を抱かせているのではないかという仮説です。
リアルの人間関係ではなく、TVやスマホで見る誰かのカメラ目線の笑顔も、どちらも自分に向けられている笑顔であることには変わりはない。
「笑顔を向けてくる人の視線が怖い」となれば、リアクションを返す必要性のないTVやスマホで見せる人に感じる恐怖感も、うまいこと説明ができます。
ちなみに、視線に恐怖を感じてしまうことは、心理学では視線恐怖(症)という名前が付いており、その中でも人と対面したときに、思わず目を逸らしてしまう「正視恐怖(症)」が、笑顔を向けてくる人の視線に感じる恐怖心と関連があると考えられます。
また、正視恐怖は他人と目を合わせることに恥ずかしさを感じてしまうために、つい目を逸らしてしまうのだと考えられています。
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笑顔になると見える歯が怖いという仮説
笑顔になれば自ずと見えてくるものと言えば「歯」。「芸能人は歯が命」という有名な言葉にもあるように、笑顔を売りにして人から注目や人気を集めたり、他人と積極的に交流する必要性がある人からすれば、デンタルケアは必須でしょう。
しかし、この「歯」もまた、笑顔を向けてくる人に感じる恐怖心を招く原因になっているという仮説も考えらます。
その仮説の軸になるのが、「集合体恐怖症(トライポフォビア)」と呼ばれる恐怖症です。
集合体恐怖症とは、蜂の巣や蓮の実など、穴やブツブツとしたものがひしめき合っているものに対して恐怖を感じることです。
この集合体恐怖症が、笑顔によって口が開いた先に見える、歯が密集している光景そのものに対して働くことで恐怖心が芽生えているのではないか…というのが、この仮説です。
余談 二次元の笑顔なら苦手意識を感じない理由
アニメや漫画のような二次元キャラが見せる笑顔の場合
- 笑顔で且つカメラ目線に向くシーンはそこまで多くない。誰かと笑顔で会話するシーンであっても、その多くは話す相手(キャラ)に向けられているものであり、視聴者側を向くことは少ない。
- 仮にカメラ目線に向かって笑顔を向けられたとしても、そもそもが絵でありデフォルメ(簡略化)表現になっている。そのため、歯が一本ずつ全て描かれることは少なく、集合体恐怖症を発動する不安もない。
という理由のために、二次元キャラが見せる笑顔に対しては、そこまで恐怖心を抱かないのではないかと分析ができます。
ただし、二次元キャラでも、リアルな表現で統一されていたり、歯に対する描き込みが多いシーンやキャラに対しては、リアルの人間が見せる笑顔同様に恐怖心を持ってしまうことがあります。(例「進撃の巨人」に登場する巨人、「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造など)
なお、デフォルメ表現が主のストーリーや作風の中で、やたら歯並びがいいキャラが登場してくれば、そのキャラがどこか異質の存在であるとか、ホラー要素を持っていることを表現でき、視聴者の印象の中に残せます。
その後にシリアスorホラーな展開が待ち構えているという伏線として、歯並びがいいキャラやシーンを出すことは、ストーリー展開の視点で見れば理にかなった表現と言えます。
以上から、筆者自身が感じる笑顔に対する恐怖心は、視線および集合体恐怖症によるものではないか…というのが、現時点で導き出される結論です。
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