「インポスター現象」褒められると罪悪感を覚える心理について

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他人から誉められたり、賞賛されたりしたときに、嬉しさよりもどこか怖さや不安、罪の意識を感じてしまう。謙遜とは違い、後味が悪く妙に胸がざわめく気持ちになってしまう。

まるで、自分は他人を騙して本当の自分以上の価値や評価を得ている詐欺師のように感じて罪悪感を感じてしまう…このような心理はインポスター現象と呼ばれています。

インポスター現象は、実際に社会的な成功を収めている人でも見られます。この心理の裏には自信のなさ、自尊感情の低さ、社会的な成功と自分の実力や努力と結びつけられないと言う物事の見方の偏りがあるとされています。

今回はこのインポスター現象についてお話しいたします。

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インポスター現象(あるいはインポスター症候群)とは、他人から褒められたり評価されることがあっても、その言葉を信じることができなくなる。

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インポスター現象とは

インポスター現象とは、社会的な成功を得ているのにもかかわらず、自分は成功者の仮面をかぶっているだけにすぎず、人を欺き不当に評価や賞賛を得ているの…と罪悪感を感じてしまう心理を指します。

他人を騙して評価を得ていると感じているために、褒められても

  • 「この人はいつか自分の本性を見抜くのではないか」
  • 「褒めてきた人が、いつ自分が騙され暗示をかけられていた事に気づいてしまうのか、気が気でならない」

と不安や恐怖を感じたり、罪の意識に駆られ憂鬱な気分になってしまうことがあります。

なお、インポスターとは英語で詐欺師の意味。インポスター症候群(詐欺師症候群)と表現される事もあります。

インポスター現象の言葉は、1970年代にジョージア州立大学所属の心理学者クランスとアイムスが提唱した造語です。

大学の試験で素晴らしい成績を取った学生たちとカウンセリングをしている最中に、「自分はこの学校に通う資格がない」と感じている学生がいることに気づいたことが、インポスター現象を調べるきっかけとされています。

インポスター現象の仕組み

インポスター現象になってしまう人には、

  • 自分の社会的な成功を過小評価。
  • 社会的な成功の裏にある弱点や欠点への注目。
  • 自分の社会的な成功は運や他者の存在など自分以外の者が招いたと考える。

と言う、物の見方の偏りが影響していると考えられています。

学業や仕事で例えた場合…

  • 自分があげた成果を「こんなの大した事ではありませんよ」「これぐらいならできて当然ですよ」と言ってしまう。 (→成功の過小評価)
  • 自分があげた成果を無視して「でも、この前の成果は散々でした」「確かに高評価を得ているけど、まだまだ詰めが甘いので完璧とは呼べない」と言ってしまう。 (→成功の裏にある弱点や欠点への注目)
  • 自分が受けた成果に対して「今回はたまたま運が良かったので良い成果が出ただけです」「この成果は私ではなく〇〇さんの助けのおかげです」といってしまう。 (→成功は運や他者の存在など自分以外の者が招いたと考える。)

と言う具合に、謙遜を通り越した態度をとってしまうことで、自分の社会的な成功に対する確信や自信が得られない。

そんな状態で、自分が褒められ賞賛する経験を重ねると「自分は他人を騙して不当に評価を得ている」という、インポスター現象に見られる考え方や感じ方をするようになるのです。

なお、自分の成功を自分の手柄であるとして認知できない事は、心理学の認知の歪みの1種である「過大視と過小評価」に通ずるものがあります。

そのほかにも原因帰属の外的統制(型)も、インポスター現象と関連がある心理学用語と言えます。

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インポスター現象の問題点

インポスター現象に悩んでいる人は、日常生活の中で成果を出さなければいけない場面にて、自分が他人を騙していることを気づかれないために、二種類の対策をとることがあります。(ただし騙していると言う考えは、本人の思い込みでしかないのだが…)

一つは、頑張りすぎてしまうこと。もう一つはあえてサボり、自ら失敗するような状況を招いてしまうことです。

頑張りすぎてしまう

学業の話を例に各対策を見ていきましょう。

頑張りすぎるパターンは、自分は周囲の人を欺いて好成績をあげていると感じている。そして、いずれは周囲の人が騙されていた事に気がつかれ「自分は対して評価に値しない人間だとバレて責められるのではないか…」と言う不安に怯えています。

その不安を払拭するためにも、普段から誰よりも勉強に励み、過剰なまでに努力を重ねる。過剰な努力をしておけば、その分テストで本当に良い成績を取れる可能性が高まる。そして、周囲の人が騙されていることに気がつかないままの状態でいてくれる可能性も高まります。

しかし、この対策の弱点は、過剰な努力を毎回テストのたびにすることが難しいと言う点。そして、仮に今回はうまくいったとしても、その次もうまくいくかわらない。「いずれ自分は他人が思っていることを評価に値すべき人間ではない」と言う、隠しておきたい詐欺師の仮面の下に隠された素の自分が、周囲の人にばれてしまうことへの不安が高まってしまうことです。

頑張って好成績を収めても、どこか罪悪感いや緊張感が消えない。むしろ頑張れば頑張るほどに、自分が精神的に追い込まれているように感じて、しんどくなってしまうのです。

あえてサボる、手を抜く

サボるパターンは、テスト前なのにもかかわらず、あえて勉強とは関係ないことに時間を費やしたり、徹夜をして寝不足の状態のままでテストに挑むなどして、悪い成績を出してもおかしくない状況を自分で作ってしまうことです。

このような行動は、社会心理学ではセルフハンディキャップイングとも呼ばれており、あえて自分が不利な状況に追い込むことで、失敗してもおかしくないように仕向けるという、非合理的な行動と言えます。

当然ながら、ろくに勉強もせず、集中力も鈍っている状態ではテストで良い成績を取れる見込みは下がるであろうことは容易に想像出来るでしょう。自分で自分に不要なハンデをかけていることから、テストの成績はよくて横ばい、悪ければ右肩下がりになるので成長は見込めないのは明白です。

しかし、ここで悪い成績を取ったとしても「今回のテストは調子が悪かったから駄目だっただけ」とうまくいかなかった原因が明確にあるので、自分自身が傷つく事は避けられる。

また、サボった割には良い成績が取れた場合は、「サボっていても自分は良い成績を取れるだけの潜在的な実力がある」と周囲に自分の実力の高さをアピールすることができます。

なお、良い成績を取ってしまった時に「運がよかっただけ」と自分以外の何かに成功の要因がある考えてしまう場合もあります。

上でも述べたように、自分の社会的な成功を自分以外の何かに見出す考え方の癖が、失敗した場面にも影響を及ぼしていると言えます。

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インポスター現象に悩む人は、本当に悪人なのか?

インポスター現象に悩んでいる人が、本当に詐欺師のように悪いことをしているかどうかについて、2005年にデポー大学の心理学者フェラーリが調べました。

フェラーリの研究では、自分はインポスター(詐欺師)と思うことが多い人たちが、詐欺行為などの不正行為をどのくらいの頻度で行うかについて調査。

その結果、インポスターを自覚している人たちは、インポスターを自覚していない人たちよりも不正行為を働く頻度が少ないと言うことが明らかになりました。

つまり、「自分は他人を騙している」と言う考えはあくまでも自分の思い込みでしかなく、非インポスター傾向の人と比較すれば、そこまで悪人ではないと言う結果になりました。

なお、他人を騙すと言えば聞こえは悪いですが、インポスターを自覚している人は実害がないことで人を騙していると言う思い込みが強い。

そのため不正行為のような明らかな実害が伴うものについては、インポスターを自覚している人はしようとしない。その結果として、非インポスター傾向の人と比較すると不正行為を働く頻度が低いのではないかと考えることもできます。

インポスター現象に悩む人が抱えている罪悪感とは、法律で裁く対象となるもの(暴行を加える、金品を奪うなど)に関する罪悪感ではなく、道徳や倫理の対象となるもの(軽い嘘をつく、素直な態度をしないなど)に対して感じる罪悪感であるのだと考えられます。

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