人間は孤独な状況を避けて誰かと一緒にいたいという欲求が本能にあります。この欲求のことを「親和欲求」と呼びます。
親和欲求があることは人間関係を築き社会生活を送る上では欠かせない一方で、親和欲求が強すぎるために、周囲の合わせすぎて自分を見失う、嫌われて孤立するのを避けるために八方美人になってしまうというデメリットもあります。
「誰かと仲良くしたい」という気持ちは、エスカレートしてしまうと「仲が険悪にならないように、自分を抑えるべき」「嫌われないように言葉に気をつけるべき」という「○○すべき」という考え方を招いてしまい、人付き合いで疲れる原因にもなります。
誰かと仲良くしたいという気持ちばかりが膨らまないように適度にコントロールすることが、良好なメンタルを保つためには大事なのです。
今回は、親和欲求に関してお話しいたします。
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親和欲求とは
親和欲求とは、誰かと一緒にいたいという人間が持っている本能の一種です。
具体的に例を上げるとするならば
- 周囲の人と仲良くしたい
- 仲間と一緒に過ごしたい
- 自分のことを受け入れてもらいたい
- いつも誰かと一緒に行動をしたい
- 気持ちが落ち着く人と一緒にいたい
などの気持ちや感情のことを指します。
仕事、学校、部活、サークルなどの人間関係で友達を作り、その人たちと良好な関係続けていきたいという、ごく自然で誰でも持っている欲求です。
もちろん、友達だけでなく恋人や親子関係にも親和欲求は見られ、不安とストレスが多い孤独な状況を避け、より安全で安心できる環境を選ぶための人間の本能の一種でもあります。
また、親和欲求の強さには個人差があり、一般的に男性よりも女性、内向きな人よりも社交的な性格の人、一人っ子、長男・長女が強くなる傾向があります。
親和欲求は不安やストレスで強まることも
親和欲求に関して、心理学者のシャクターは被験者に「これから実験として電気ショックを与える」と告げた後に被験者がどのような行動をとるかについて実験を行いました。
この実験によると、電気ショックが行われるまでの待機時間に、ひとりでいることよりも、誰かほかの人の一緒にいることを希望する被験者が出てきました。
この実験から、人間は明確な不安やストレスを感じると、親和欲求が強まり誰かと一緒にいたいという気持ちが強くなることが分かりました。
電気ショックに限らず、例えば受験や就職活動といった人生を左右する大きなイベント、自然災害や事故などの命に関わる出来事を前にすると、一人孤独な状態ではパニック状態になったり、強い不安で精神的に押しつぶされそうになってしまうのは想像できますよね。
不安なことに対して孤独に耐えるのはそれだけ強いストレスがかかるの、そのストレスを回避するために誰かと一緒に耐えようとする本能が働いているのが考えることができます。
不安なときは一人でいるよりも、誰でもいいから側にいるだけでなんとなく気持ちが落ち着く、不安が少し収まったように感じるのはこのためなのです。
普段から孤独や寂しさに敏感、ひとりでいることに過度な恐怖感を覚える人の場合、親和欲求が強くいつも友達や恋人と一緒にいないと気持ちが落ち着かない、構って欲しいために他人を振り回してしまうことがあります。
本人は不安な気持ちをなんとかしたいがために行っているのですが、周囲からはその意図が伝わらず、「あの人は自分勝手で他人を振り回す人」だと思われて距離を置かれ、より孤独を強めてしまうという悪循環に陥ることもあります。
親和欲求が弱い人の特徴
不安やストレス、孤独に強い
不安やストレスをあまり感じない人は、親和欲求が低くなる傾向があります。
不安なことを前にしても「誰かにいてほしい」「人恋しい」という気持ちにならないので、メンタルが強い人だと思われ憧れの対象となることもあります。
マイペースな人
仕事も趣味も自分一人で好きなようにやりたい、すなわちマイペースな人も親和欲求が低いと言えます。
マイペースな人にとっては、誰かと一緒に何かをやることにストレスを感じたり、逆にイライラしたりすることが多いので、なんでも自分で決められる状況を好む傾向があります。
他人への興味が薄い人
他人への興味が薄い人は「誰かと一緒にいたい」と思うこともなく、また他人への興味のなさ故に有効な関係を長く続けたいと思うこともありません。
他人への興味が薄いと書くと寂しい人のように思われるかもしれませんが、その分人間以外の例えば芸術や学問、経済やビジネスなどといった世界への興味を持っていることもあり、決して魅力の無い人というわけではありません。
適度な距離感を保てる人
人間関係を長続きさせるのには、お互いに精神的な負担をかけず、程よい距離感が取れていることが重要です。
ベタベタとトイレの時でも食事の時でもいつでも行動を共にしたがるような人間関係は、ついてくる方もついてこられる方も精神的な負担を感じて疲弊してしまいます。
適度に距離感を持てる人は必要ならば誰かと一緒にいたい、必要でなければ一緒にいなくてもOK、と状況に応じて距離感を保てるので、人間関係に過度に依存せずお互いに心地よい人間関係を築ける傾向があります。
親和欲求が強い人の特徴
親和欲求は低いことよりも高いことの方が人間関係でトラブルを引き起こす原因となりがちです。
親和欲求が高いということは、それだけ誰かと一緒にいたがることになるので、過干渉や精神的な依存へとつながりやすいのです。
いつでも仲のいい人と群れたがる
単独行動をするよりも、安心できる人たちと一緒に群れて行動したがる人は親和欲求が強いといえます。
人間関係の和や協調性を大事にするので集団をまとめるリーダーに向いている面もありますが、集団の空気を重視するあまりに自分の意見が言えなくなってしまったり、集団から村八分にされてしまうことを過度に恐れてストレスを抱えてしまうことがあります。
周囲に賛同や承認を求める
「あの人は面白いよね」とか「あなたもそう思うでしょ?」自分の気持ちを周囲の人に伝えると当時に、自分に対して賛同や承認の意見を求める人も、親和欲求が強いといえます。
賛同の意見を相手に求めることは、見方を変えれば自分のことが周囲から受け入れられているかを確認する行為であり、「賛同してくれた=自分が受け入れた」と感じて安心感を覚えるのです。
しかし、賛同の意見を求めすぎると図々しい人、押し付けがましい人だと思われて、次第に距離を置かれる原因ともなります。
また、賛同欲しさに賛同の意見しか認めず、指摘やアドバイスなどの賛同以外の意見が出たとき相手を拒絶して受け入れようとしないこともあります。
SNSやメールをよく使う
親和欲求の強さはリアルの人間関係だけでなく、ネット上のSNSやメールなどのデジタルな人間関係にも現れます。
親和欲求が強い人は、親しい人との人間関係を維持したいという気持ちが強いために、SNSに何度も投稿をしたり、メールやラインで友達や恋人に頻繁に連絡を取ることがあります。
また、既読無視やスルーをされてしまうと強いショックを感じて、相手を傷つける、ブロックするなどの衝動的な行動を取ってし舞うこともあります。
親和欲求が強すぎると「かまってちゃん」になることも
親和欲求が強い人は、誰かにベタベタくっついてと行動するだけでなく「かまってちゃん」になることもあります。
かまってちゃんとはかまって欲しいがために、人にちょっかいをかけたり、悪ふざけや嫌がらせをする人のことで、子供だけでなく大人にも見られます。
親和欲求の強い人の中には、一人ぼっちにになることに関して強い恐怖を感じている人もおり、誰にも相手にされず無視されるぐらいなら、例え周囲に迷惑をかけることであっても注目されたい、受け入れられたいと感じて迷惑行為に手を染めてしまうことがあります。
かまってちゃんという言葉はあまりポジティブな意味で使われることはなく、
- 自分の都合で他人を振り回す人
- 自己顕示欲や承認欲求が強すぎて他人を思いやれない人
というニュアンスで使われることもあります。
また、かまって欲しいがために、嘘を流したり、自傷行為をすることでネットで炎上したり、振り向いて欲しいがためにネットストーカーに走り警察沙汰になることもあります。
孤独に関して恐怖や不安を感じるのは自然なことなのですが、その解消法として人に迷惑をかけたり、自分を傷つけることが癖になってしまうと、また別の問題が出てきます。
孤独との上手な付き合い方を探ることが重要なのです。
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