SNSを学校や会社の人間関係でも使う場面はありますが、パワハラのように上司や先輩という立場を利用して、部下や後輩に嫌がる事をしてしまうケースがあります。
SNSを利用した嫌がらせは「ソーシャルメディア・ハラスメント(ソーハラ)」と呼ばれており、パワハラの一種とされることもあります。
何気ないSNS上でのやり取りが、いつの間にか相手に不快感を与えていたり、ストレスの原因で気分を悪くさせてしまうと人間関係に亀裂が生じる原因になってしまいます。
今回はSNS全盛のご時世だからこそ気をつけたい、ソーシャルメディアハラスメントについてお話いたします。
ソーシャルメディア・ハラスメントとは
ソーシャルメディア・ハラスメントとはSNS上やSNSを用いて行われる嫌がらせのことを指す言葉です。略して「ソーハラ」と呼ばれることもあります。
冒頭にも書いたように、仕事でSNSを用いる時にSNSの会話で暴言を吐いたり、嫌がっていることを強要させることもできるので、「パワーハラスメント(パワハラ)」の一種として考えられています。
参考:厚労省による主なパワハラの種類
パワハラの一種と言いましたが、パワハラにも暴力や暴言で自尊心を傷付ける体罰のようなパワハラもあれば、無視やプライベートをしつこく聞くこともパワハラにあたります。
前回、部活動とパワハラについて書いた記事のなかで触れましたが、厚生労働省のホームページではよくあるパワハラの例を以下の6種類に分けています。
- 身体的な攻撃 … 殴る、蹴る、たたくなどの暴行行為
- 精神的な攻撃 … 暴言、罵倒などで精神的に傷つける行為
- 人間関係からの切り離し … ブロック、仲間外れ、友達・グループの解除など
- 過大な要求をする … 「いいね」や「RT(リツイート)」の要求。友達申請を迫る。
- 過小な要求
- 個の侵害 … プライベートや友人、恋人家族関係について詮索する
ソーシャルメディアハラスメントの場合、SNSの仕様上物理的に殴る、蹴るといった身体的な攻撃はできませんが、暴言を吐いたり性的な言葉など相手が嫌がる言葉を気軽に言いやすいのが特徴的です。
また、友達を解消する、グループから追い出す、アカウントをブロックするなど、仲間はずれにするのも簡単にできてしまいます。現実の人間関係以上に、いつ切り離されたのかの記録がくっきりと残るので、当人が受ける精神的なショックも大きくなります。
更に、大抵のSNSには学歴や職歴、誕生日は家族関係などのプロフィールを(任意ではありますが)載せるのが一般的。プライベートな情報を誰でも閲覧できるようにしていると、その情報を利用して過度な要求や嫌がらせを受けてしまうことがあります。
SNS自体が友達や職場の人とネット上でも交流するために使うものなので、自分が誰と仲が良いのかが可視化され、必要以上に詮索しやすいという欠点もあり、余計なストレスを貯めないためには全てのSNSを辞めるというのも賢明と言えます。
ソーハラしてるのに「自分は悪くない」と言い張る理由
SNSでのコミュニケーションは、対面で行うコミュニケーションと違って、相手の表情が見えないという特徴があります。
そのことで、相手が嫌がっているのがわからず言動がエスカレートしてしまう、自分にとって都合のいい思い込みばかりで話が進めてしまい不快感を与えやすくなります。
対面で話していれば相手の表情を見て「ちょっと今の言葉は言いすぎたかな?」と自制したり、話題を変えることもできますがSNSではそうは行きません。
また、SNS上で「相手に不快感を与えているのでは?」と内心では悪気を感じても…
- 「相手は何も嫌がっていないに違いない」
- 「自意識過剰になっているだけだ。気にしすぎだ。」
- 「仲良くなろうと話しかけているのに、無視されて私のほうが傷ついている」
と、自分が悪いと考えず、無意識のうちに相手を悪者に仕立て上げ「自分は正しい事をしている!」「私は間違っていない!」と自分で自分を守るような行動をとることもよくあります。
このように、相手を悪者にして自己正当化を図るのは、防衛機制「投影」と考えることができます。
投影は、自分の中にある認めたくないもの、受け入れられない感情など(影[シャドウ])を、無意識のうちに相手が持っているものとして自我を守るというわけです。
パワハラのように相手を不快にする行為はしてはいけない、という考え方が一般的なのにもかかわらず、自分がその行為をしてしまったと認めるのには苦痛は伴うものです。
プライドが高き自分の非を認められない、今の立場や評価を失いたくないという気持ちが根底にあるというわけです。
写真のアップ1つでもソーシャルメディアハラスメントに
ソーシャルメディアハラスメントは、SNS上のデジタルなやり取りに限らず、SNSにアップするための写真撮影にも当てはまる言葉です。
SNSでは自分の写真をアップして、「いいね」をもらう、リプライのような反応を貰うことでコミュニケーションをするのが一般的です。
写真アップが必須のインスタグラムでも、たくさんの人に見られる事で承認欲求を満たしたり、スポンサーがついてお金儲けになる時代です。
写真であれば、たとえ英語が書けなくてもバズが起これば世界中の人に見てもらえることが出来るのも醍醐味と言えます。
しかし、だからといって写真が苦手な人、NGな人も巻き込みネット上で自分の承認欲求を満たすために、なんでもかんでも写真を撮影してアップされるのは苦痛でなりません。
その相手がもしも上司や先輩であれば、同僚や友人と比べて立場上断りにくく、立場を利用して写真撮影を強要しやすいとも言えます。
仮に「私は写真NGなんです」と打ち明けたところでさきほど説明したように「気にしすぎ」「自意識過剰すぎる」と聞き入れてくれないことも少なくありません。
写真を撮られることに何ら抵抗を感じない、むしろ思い出や記念を残すのが当然のこと、いいことだと考えている人ほど、写真嫌いの人はその無神経さに苛立ちを覚えてしまうものです。
また、友人や家族との旅行のシーンや会社での宴会のシーンなどを、写真撮影を断りづらいシーンでなかなか「写真に写りたくない」とは言いにくいものです。
写真を拒否することで人間関係に亀裂が入り、SNSでもリアルでも仲間はずれにされる「ノリが悪い奴」「空気の読めない奴」というレッテルを貼られて、不利益を被ることは少なくありません。
不利益を被るぐらいなら我慢して写真に写るという選択をしても、結局はストレスを受ける事に変わりはありません。
匿名アカウントでも安心はできない
友達の友達から身バレしてしまうことも
日本ではtwitterのように匿名でも交流できるSNSがありますが、つぶやいている内容次第では、匿名なのにそのつぶやきが誰のものなのかが判明してしまう、いわゆる「身バレ」することがあります。
普段なにげなくつぶやいているだけでも、つぶやいている時間や内容(大体の職業や学校名)から、なんとなく匿名アカウントが一体誰なのかを絞り込むことができます。
また、匿名で繋がっている友達や友達の友達が実名アカウントで、年齢や住所、会社や学校などの所属先がわかってしまうということもあります。
流石に友達の友達までは自分のアカウントで「プロフィールを非表示にしてください!」と要求しにくいので、友達では身バレがなくても、友達の友達で身バレが起きやすくなります。
SNS上の上下関係を利用してハラスメントをすることも
twitterのようにSNS上で自分がどれだけの人にフォローされているかが一目で分かる場合、フォロワーが多い人ほど立場が上、逆にフォロワーが少ない人ほど立場が下という上下関係が生まれることがあります。
フォロワーが多い人はそれだけ自分は多くの人に支持されている偉い人間だと感じて、各下と見ているフォロワーの少ない人に対し「俺をフォローするべき!」「友達になろうよ!(ただしならなかったらブロック)」と迫ってくることがあります。
また、フォローしている人に対して「なんで俺のつぶやきをRT(いいね)しないんだ?」「役立つ情報を発信しているんだからRT(いいね)すべきだ!」と横柄な態度をとってしまうこともあります。
多くの人にフォローされていることで精神的に興奮して冷静な判断ができなくなる、さらなる承認欲求を満たすために相手に不快を与えてしまっているというわけです。
なお、フォロワーが多い人のつぶやきには権威がある、役に立つ情報がある、人気者であるという証拠と考えている人も多くいます。
「たくさんの人がフォロー(支持)しているから、この人の言ってる事は正しい」という具合に、現実世界同様にフォロワーの数を周囲の意見とみなして、その周囲の意見に流されていると見ることもできます。
対策はSNSと適度な距離感を取ること
ソーシャルメディアハラスメントの完全な防ぎ方は、SNSを全くしない事ですが、普段の生活を送る上ではSNSを全く使わないというのは難しいものです。
電話やメールほどではないけどちょっと連絡を取りたい、災害時に電話が使えなくなり安否確認をしたい時には、SNSが重宝されることもあります。
その便利さを受け取りつつも余計なストレスを抱えに出来ることは、SNSと適度な距離感を保てるようにする事です。
相手にひどい事を言いすぎていないかを感じることができなくなったら、一旦SNSをやめることで暴言を残す事をしなくても済みます。
気分が高揚してつい調子に乗ってしまう、酔っ払っている時にふざけてSNSで不快感を与えないためにも、事前にルールを決めておき自分の感情がコントロールができない状態になったらSNSを使わないようにすることで、自分も相手も傷つかないようにすることができます。
もちろん、距離を取るのはソーハラを受ける方にも効果的です。
もしもソーハラを感じているのであれば、SNSを必要最低限だけとどめる、現実世界でも迫ってくる相手と距離を置くように心がけましょう。