映画やドラマ、素晴らしい風景や日常の中の些細な出来事に対して、何かと感動しやすい人というのは、感受性が豊かでたいへん人間味のある人ととして高評価されることが多いものです。
しかし、どうして感動してしまうのか、なぜ感動しやすいのか…という理由について詳しく見ていくと、ただ「感受性が豊か」という言葉には収まりきらない、その人の性格や心理、物事の捉え方などが隠れているものです。
今回は、そんな感動しやすい人の性格や心理について、深堀してお話しいたします。
感動しやすい人の性格・心理
感受性が非常に強く、些細なことでも大きく感情を揺さぶられやすい
「感受性が豊か」という言葉で説明できる部分を詳しく見ていくと、些細な出来事に対して敏感に反応してしまうと同時に、それに応じて感情も大きく揺さぶられてしまうことが、感動のしやすさに繋がっていると言えます。
多くの人がそこまで感動したり、ジーンとこみ上げてくるような刺激があまりない映画を見たとしても、感動しやすい人は弱い刺激でも強い感動を呼ぶ刺激と感じ取ってしまうからこそ、強い感動を覚えてしまうのです。
言い換えるのなら、平均的な人よりも感動に関するセンサーが発達しており、小さな出来事でも大きな感動を呼ぶものとして受け取るのです。
なお、こうした些細な出来事に強く反応してしまう一面は、繊細で敏感な気質を持っているHSP(ハイリーセンシティブパーソン)の人に通ずるものがあります。
HSPの人が刺激に強く反応してしまうのは、主に自分と他人(or集団)との心理的な境界線が薄く、他人に起きた出来事をまるで自分に起きた事として受け取ってしまうことが原因と考えられています。
物語の中の人物に感情移入しやすい、他人の話につい心を打たれてしまい強い感動を覚えるのも、心理的な境界線の薄さゆえに、他人の感情を自分の感情のように受け取ってしまうHSPの人に見られる気質が影響しているとも考えられます。
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理屈よりも感情優先で物事を見てしまう
感動しやすい人に見られるのが、物事を見る時に理屈よりも感情面を優先して見ることです。
感動できる映画やドキュメンタリーを見ても「冷静に見ればツッコミどころがあるから、本当に感動できるのだろうか…?」という、一歩引いた理屈っぽい視点で捉えるのではなく、「これ泣ける」「尊い…」と、感情の方が優先した物の捉え方をしてしまうのが、いい例でしょう。
(そもそも感動できる物語や状況について、理屈を持ち出す事自体、たいへん野暮な事をしているようには思いますが…)
なお、感情優先な人に関連が深い心理学用語として「感情一致効果」というものがあります。
感情一致効果とは、人間は無意識のうちに自分の感情に一致した情報ばかりを集めてしまう現象です。感動しやすい人は無意識のうちに、自分に関わるものに対して感動できる要素ばかりに注目しているからこそ、より強い感動を覚えるのだと説明できます。
そして、感動できる要素ばかりに注目するからこそ、感動話に隠されているツッコミ所や疑問点には注意が向かず、ただただ感動の渦に飲み込まれているのかもしれません。
他人や集団の影響を受けやすい、雰囲気やペースに飲み込まれやすい
某24時間TVのような、露骨なお涙頂戴番組では、感動を誘うためのしつこい演出が、これでもかというほどに盛り込まれているものです。
もちろん、この演出は「この番組は感動ものですよ!」という雰囲気を作って、視聴者の感動を誘う目的があるからこそ、やたら盛られているのですが、その雰囲気に飲みこまれるかどうかには個人差があります。
感動しやすい人というのは、ただ感受性が強いから感動しやすいのではなく、こうした感動を呼ぶ雰囲気に弱く、容易に流されてしまうことが影響しているとも考えられます。
いわゆる「もらい泣き」のように、周囲の人が泣いているペースに逆らえず泣いてしまう。泣くことが推奨される場面にて、その場のノリに反発しにくい性格が影響しているからこそ、流されて泣いてしまうとも考えられます。
被暗示性が高い
上からの続きになりますが、他人の影響を受けやすい、集団のペースに飲み込まれやすいことは、心理学では「被暗示性」と呼びます。被暗示性はその名のとおり、暗示や催眠へのかかりやすさを意味する言葉です。
ポジティブに言えば、「被暗示性が高い=協調性があり他人の気持ちや集団の流れに合わせるのが得意」と表現できますが、ネガティブに言えば「被暗示性が高い=他人や集団のペースに逆らえず自分を見失いやすい」とも表現できます。
また、被暗示性の高さの傾向は
- 男性 < 女性
- 大人 < 子供
- 知能の高い人 < 知能の低い人
という説があります。被暗示性が高い=暗示にかかりやすい…つまり、感動を誘うための演出に弱く、すぐに感動してしまうと言えます。
この説を踏まえると(言い方は辛辣ですが)やたら感動しやすい人は、子供っぽくて頭が悪く、感動を誘うための露骨な演出を見抜くだけの知識や冷静さを持ってないからこそ、すぐに感動してしまうという身も蓋もない説明ができます。
露骨な感動物の番組で泣く人に対して抱く妙な嫌悪感は、ひょっとしたら「こんな露骨な演出で泣いてしまうような知能の低さ」に対する嫌悪感なのかもしれません。
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情緒的な不安定さがあり感情のコントロールが苦手
感動しやすい人というと、小さなことでも幸せや満足感が得られるポジティブなものとして捉えられがちですが、一歩引いてみれば、情緒的な不安定さがある、感情のコントロールが苦手である、感情を抑えられず衝動的になりやすい危うさを持っているとも解釈できます。
感動して涙を流したり、自分で自分をコントロールできなくなることは、言い換えれば冷静さを失い、非常に不安定な心理状態へと自分を追いやっているのと同じと言えます。
なお、情緒的な不安定さは「感動」以外の感情でも同様に見られます。
特に「怒り」「不満」「憎悪」などの、ネガティブな感情を前にすると、自分をコントロールできなくなり、ついカッとなってキレてしまう、衝動的に怒鳴り散らしたり、八つ当たりをするなど社会から逸脱した行為に出てしまうことが、感情をコントロールできない人にはよく見られます。
感動しやすい性格は本当に幸せなのか?
何事にも感動しやすい性格の人を語るときに、たいていの人は「小さなことで感動できて羨ましいなぁ」と、さもその人が幸福な生活を送っているようなニュアンスで語ることが多いものです。
しかし、感動しやすさの元となっている考え方、物事の捉え方について知れば知るほど、「幸せだと決め付けて納得してしまうことは、本当にに正しいだろうか?」という、疑問が出てきたのもまた事実です。
繊細なことでも強く反応するHSPに通ずる特徴は、感動しやすさと深い結びつきがある一方で、他人の些細な言動に深く傷ついたり、一般の人が感じにくい不安や恐怖までも敏感に感じとってしまうことと切っても切れないものです。
他にも、被暗示性の高さは、他人に騙されやすく社会的・経済的な損失を受けやすい、詐欺のターゲット(要するにカモ)になりやすいとも解釈できます。募金詐欺のように、同情や慈悲を誘って金を騙し取ることを企てている人からすれば、感動しやすい性格の人はまさに好都合かもしれません。
また、情緒的な不安定さにより、自分の感情を適切にコントロールできないことで苦しむ…など、その人なりの苦労や悩みがあるように感じます。
しかし、そうした苦労は「感動しやすい」という部分だけを切り取れば、まず見えてこないものです。
また、仮に苦労の部分を主張されても、既に感動しやすくて幸せそうな人という先入観で相手を見てしまっているがゆえに「あらあら、贅沢な悩みをお持ちで…」と、皮肉混じりなコメントを返してしまう。結果としてお互いの理解が進まず、それ以上関係が進展しないままになることも、あるかもしれません。
他人の幸福についてどうのこうの語る事自体、非常に無粋で野暮なことだとは思いますが、勝手に他人のいいところを見て「幸せな生活を送っているにはずだ」と納得することは、相手のことをきっちり理解することから最も遠い行為のように感じた次第です。
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