すぐに人の話を信じてしまう人は素直な人、純粋な人という好印象で語ることもできれば、人の話を鵜呑みにして自分でよく考えない人、詐欺や胡散臭い話を見抜けず騙されやすい人と悪印象で語ることもできます。
もちろん、純粋さ素直さを否定するわけではありませんが、ただ純粋なばかりで嘘を嘘だと見抜けなかったり、信じ込みやすく騙されやすい自分の性格について何の対策を立てないまま暮らすことには疑問を感じます。
先行きの見えない信じたいものばかりを信じて生きていければ、見たくないものを見ずに楽に生きていけるので幸せかもしれません…。
しかし、そういった信じたいものばかりを見る特徴を持った人を相手にした商売(マルチ商法、スピリチュアル系、「副業で楽に儲かるよ」「不労所得が手に入る」などの情報商材ビジネス)のカモにされる恐れがあるので、信じやすい性格は無批判に肯定できるものとは呼べません。
とくに、胡散臭いビジネスをしている人は、いかにしてカモにお金を出させるかという目的で心理学を熟知している人も多いものです。胡散臭いビジネスを生業にしている人からすれば、まさに心理学は人を操る催眠術か洗脳術だと認知しているのではないか、と思うことも多々あります。
今回は、そんな信じやすい人が自分の信じやすさの原因に気が付けるように、信じやすい性格や心理についてお話いたします。
他人を信じやすい人の心理・性格
他人に気に入られたい
- たくさんの人から気に入られたい
- 自分が尊敬している人から好かれたい
など、他人から見た自分をよく見せたい気持ちが強い。
そして、純朴で純粋で素直な自分であれば他人から「いい人」だと思われる確率が上がるために、進んで他人の話を素直に信じこむ癖がついてしまうことがあります。
もちろん、他人から気に入られたりいい人だという評価を得ようとすること自体は誰にでもあることです。
しかし、どうして他人から気に入られたいのかを詳しく見ていくと、後述する自分への自信のなさがあり、自信がないからこそ世間から認められている人や組織(=権威のある存在)に気に入られる事(=権威主義)に重きを置いているのだと考えられます。
自分に自信がないから他人にすがりたい思いが強い
自分の考えや主張に自信を持ちにくい。漠然とした自己不全感や自分に対する不信感を抱いているからこそ、それらを払拭するために自分以外の誰かが話していたことを信じ込み、自分の自信の無さから目を背けようとするのです。
とくに自分のやることなすことに対して自信を持ちにくい人は、そんな頼りない自分の背中を押してくれるような優しい言葉を言ってくれる人を待ち望んでいることが多いものです。
自分一人では中々行動に移す自信が持てないからこそ、他人からの暖かく優しくポジティブな助言(「あなたなら大丈夫」「必ずうまく行く!」など)を聞けば、半ば藁にもすがるかの思いで信じ込んでしまうのです。
ただし、そもそも自信のない自分と向き合うことを避けて、他人からの助言という無責任極まりない言葉を信じ込んで衝動的に行動している節が否めず、信じて進んだ行動が本当に自分の利益になるのかどうかという点には疑問が残ります。
権威主義的、権威に弱い
自信がないからこそ、「有名人が言っていた」とか「国や自治体のお墨付きである」という権威があるものに対してすがることがあります。
「有名人が言っていたから正しい」「国や自治体のお偉いさんが発表しているのだから間違っているわけがない」などの権威ある存在に対して無批判に受け入れてしまう態度をとり、簡単に信じてしまうのです。
例えば、健康食品の紹介でよく見かける
- 「某国立大学の教授が監修!」→ 国立大学教授という権威ある存在が裏にいることで商品の効果・効能の説得力を強化させる。
- 「海外のセレブも愛用!」→「流行の最先端である、海外のセレブが使っているというネタが説得力を強化させる。
などの宣伝文句も中にも、権威を感じさせる言葉が散りばめられていることが多いものです。
健康食品の多くは、なんらかの健康増進効果を期待させるであろうことを商品の紹介に含めることが消費者のハートをつかむためにもかかせないものです。
しかし、ただ商品の写真や栄養素などを羅列してばかりではハートをつかめないことは容易に想像できるため、「某国立大学の教授が監修!」「海外のセレブも愛用!」などの、権威ある人の言葉を用いて商品の説得力を高めるのです。
たしかに、全く無名の凡人が勧める健康食品よりも、大学や海外セレブのような後ろ盾や知名度のある人がオススメしている健康食品の方が効果がありそうに感じるものです。
しかし、「権威がある=本当に効果がある」と信じることについては疑問が残ります。
さきほどの健康食品の例で考えると、健康への効果が期待されるかどうかには大学教授や海外セレブなどの権威ある存在よりも、食品に含まれている成分や栄養素の方がメインのはず。
しかし、信じ込みやすい人は全く目が「なぜ効果があるのか」よりも「どんな効果があるのか」そして「その効果はどんな立場の人が言っているのか」ばかりを見ている傾向があります。
もちろん、信じこみやすい性格だからこそプラシーボ効果(偽薬効果)が働き、実際に効果があると感じているのかもしれませんし、権威ある存在が後光のように全てを良く見せる(ハロー効果)ために信じやすさを促進していることも考られますが、いずれにせよ食品の成分は二の次である点には変わりはありません。
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責任を回避したい、リスクに敏感
自信がない、権威に弱いことにつながるのが、責任を回避したい、リスクに対して敏感に感じていることです。
権威にすがってせいでもしも失敗や責任を負う状況になったとしても、「私は悪くない、悪いのは権威のある人や組織のせい」だ、と自分で選んだことを棚に上げて責任転嫁をすることは容易です。
また、権威のものには往々にして他の人の集まって賛同していることが多いために「他の人が集まっているからこそ正しいに違いない」というバイアスがかかります。
同時に「もしも、たくさんの人が皆失敗したとしても、失敗して損をするのは自分だけではない」という集団心理が働き、リスクに対する精神的な苦痛を和らげることも期待できます。(まさに「赤信号みんなで渡れば怖くない」というブラックジョークと同じ)
たくさん人が選んでいるのだからこそ、自分が選んだ人・物・情報は間違っている可能性は低いし、仮に間違っていたとしても自分一人だけが貧乏くじを引いているわけではないので安心感を得やすい…という責任回避およびリスクに過敏なしんりが、信じやすい性格の一因と考えられます。
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「自分にとって分かりやすい=正しい」と感じてしまう
健康食品のパンフやホームページ(ランディングページ含む)をよく見ると
- 図・グラフ・写真を用いて複雑な情報は詳しく解説している。
- はっきりと読みやすいフォント(ヒラギノフォント、明朝体など)やアンダーラインを引いたデザインになっている。
- 白を貴重とした背景で、淡い色使いで統一されている。
など、いかにも健康効果がありそうな分かりやすく読む人を包み込むような温もりを感じるを感じるデザインで、読む側もストレスなくすんなりと理解しやすいであろうことは容易に想像できます。
このように「ストレスなく理解しやすい」事柄に対して、人は無意識のうちに「正しい」「効果がある」と解釈してしまう傾向があります。
このことを認知的流暢性と呼び、シンプルに言えば「分かりやすいから信じる」という(身も蓋もない心理)のことを指します。
信じ込みやすい人は、無意識のうちに自分にとって「ストレスなくすんなり理解できること=真実である」と結びつけていることが考えられます。
なお、健康食品一方で、肝心な効果・効能に関する注意書きなどは隅っこのほうに小さく書いてあったり、最後のペーや別のページに申し訳程度に書いているという、なんだか不自然で作為的なデザインが隠せていないことも多々あるものです。
認知的流暢性を踏まえて考えると、どうしても回りくどい説明や文字ばかりの短調でストレスを感じる内容だからこそ、せっかく買う気になっている人の気持ちを削がないためにも、ストレスを感じやすい類の情報は目立たせないようにしたほうが売り上げに繋がるという戦略が隠れているのだと考えられます。
なんでも「信じたい」から信じる
これまた身も蓋もないことですが、「信じたい」から信じる…という理由ですぐに信じてしまうのです。
例えば占いの場合、自分の運気上昇や「きっといいことがあるよ」的なポジティブな結果が出たとしたら、それを素直に信じ込めば幸福感を味わうことができます(実際に幸福が訪れるかどうかはさておき…)。
もちろん、占い以外でも
- 信じたいスキャンダルや噂話があるから、フェイクニュースやソースの怪しい情報でも信じ込む。
- ギャンブルで勝つことを信じたいからこそ、勝ちそうな情報やネタに対して飛びついて信じ込もうとする。
なども、自分が信じたい情報や未来を意図的に選んで、無批判に信じ込んでいることが多いものです。これは、確証バイアスに通ずるものとも言えます。
信じやすい性格と単純接触効果
「自分にとって分かりやすい=正しい」で触れた認知的流暢性は、恋愛や営業職でよく使う単純接触効果とも関連があります。
一般的には単純接触効果は
人間は何度も顔を合わせる人と親しくなる現象を指す心理学用語
として有名です。
しかし、単純接触効果の対象は人間だけでなく、言葉、情報、物なども含みます。
信じ込みやすい人は、単純に何度も合っている人だからといって親しみを感じて話を信じているばかりではなく
- 自分の住んでいた地域の方言があったりやローカルネタだから信じる
- ネットで何度も見聞きしているニュースや噂話だから信じる。
- よく使っている人を見かける商品だから信じる。
と言った、ストレスなく受け入れることができる言葉、情報、物に対して好ましさを感じることで信じ込んでしまうのだとも考えられます。
ただし、この好ましさはあくまでも錯覚(誤帰属)であるというのが重要。
この好ましいからこそ、なんとなく正しい、効果がある、親近感が沸くという錯覚こそ単純接触効果であり、錯覚であるがゆえに詐欺や胡散臭い方々が利用しやすい心理学のテクになっている節は否めません。
よくある「信じる人は(足元を)掬われる」のは、単純接触効果(=錯覚)もそうですが、分かりやすいから信じてしまうという自身の単純さが原因となっているのかもしれません。
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