無機質な人といえば、人間として持つべき温かさや他人に対する配慮思いやりの心が乏しく、まるでロボットのように感情や気持ちがわからない人のことをイメージするかと思います。
もしも、無機質と言う言葉は鉄、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどの鉱物やミネラル分、あるいはその性質を持つことを指す言葉であり「無機質な人=鉄のように心が冷たく温かみが感じられない」と結びつけて、無機質な人は人間味が人間味がない人を指す言葉として日常生活の中で使われるようになったのだと考えられます。
今回はそんな無機質な人の特徴や心理についてお話しいたします。
無機質な人の心理・特徴
他人と親密な関係になろうとしない
無機質だと感じさせるのは、他人に対して心を開こうとしなかったり、お互いに打ち解けて親密な関係になろうとしない行動が原因として考えられます。
一般的に人間関係においては、
- 親しくする事は良い事
- 距離を縮める事は良い事
と言う共通の認識があるものですし、学校や職場でも距離を近づけて仲良くなることが、当然のこととして扱われているものです。
しかし、無機質な人は、親しくする事に対して興味や関心が薄かったり、そもそも他人に対してあまり心を開くことを好まないことが多く、どうしても周囲と距離ができてしまい孤立しがちです。
距離を縮める事が常識的だとか一般的だと考えている人かすれば、周囲から距離を置こうとする人の言動は非常に奇妙に見えると同時に、距離を置かれてその人の人となりがよくわからないので、つい「人間味のない人」と考えてしまいがちです。
もちろん、近づいてくる人のことが嫌いだとか、苦手だからあえて距離をとっている場合もありますが、必ずしもそのケースばかりではありません。
他人と近づきすぎると他人と近づきすぎると強く影響されて精神的に疲れてしまうために、あえてひとりでいることを好み、静かで穏やかな生活を求める…と言う、しっかり理由を聞けば非常に人間味に溢れている人もいるので、無機質な人とレッテルを貼ってしまっては、相手に対して無理解な態度を示すことになります。
他人からの評判や意見に対して興味・関心が薄い
無機質な人は、他人から自分がどう思われているかとか、世間が自分をどう評価しているのか…といった事柄について興味・関心が薄いのが特徴的です。
学校でも職場でも人は集団生活を送っており、その集団内において自分の立ち位置や振る舞いを確認したり、周囲からの要望や期待に応えて集団の一員として認められ評価されることに喜びを感じるものです。(参考:マズローの欲求段階仮説の社会的欲求、承認欲求)
しかし、無機質な人は、
- 例えば先生から褒められる
- 知名度の高い大学や企業に入ることを目指す
- 職場で成果を上げて表彰を受ける、昇進をする、
など、他者からの評判や意見に対して無頓着。よく言えばマイペースであり、悪く言えば協調性がない人と映ります。
また、あまりにも世俗なことに興味や関心がなく、お金が欲しいとか地位や名誉が欲しいなど欲望が希薄であるために、まるで山にこもって隠遁生活をするような、世捨て人のように思われることもあります。
喜怒哀楽の感情表現が乏しく何を考えているかわかりにくい
無機質な人によく見られるのが、喜怒哀楽の感情表現が非常に乏しく、周囲から見て一体何を考えているのかさっぱりわからないと言うことです。
普通に接していても、どこかつかみどころがなく、共感することが難しく親近感がわきにくく、自分と同じ人間なのにどこか人間としての感情や心を持っていないような不気味さを感じることもあるでしょう。
また、それなりに感情表現をして、周囲に合わせようとする無機質な人もいるものですが、よく見ているとどこか無理をして周囲の雰囲気やノリに合わせよう無理をしているのが表情から見てとれます。
例えば、作り笑いが非常に上手だが、心の奥底では何を考えているのかわからない不気味さがある、と言うように、見せる表情がどこか不自然で演技のように見えてしまう。それゆえに、無機質さから来る不気味さが強調されてしまうのです。
多くの人が楽しい・嬉しいと感じることに対して無頓着
無機質な人は、多くの人が楽しいとか嬉しいとか喜びを感じる場面において、周囲と同じ表情を見せるのではなく、そのまま真顔でいたり無表を情貫くことが特徴的です。
例えば、誕生日やカップルの記念日のように、お祝いをして愉快に楽しむべき場面やっても、どこかそのこと自体に対して無頓着で関心がない。
普通ならお互いに楽しい気分に浸るはずの場面なのに、普段通りに単調で変化がない日常を好む姿から、「あの人には『喜び』と言う人間なら持っているはずの感情が欠落しているのだろうか?」と言う気持ちを抱いてしまうことでしょう。
合理主義である
無機質な人の中には、自分の持つ感情を周囲に見せず、徹底的に合理的な行動をとる合理主義な行動が目立ちます。
例えば、仕事において利益のためにリストラを平然とやってしまう。リストラされる人が自分と同期であったり、結婚や出産などでお金が必要な事情がある事がわかっているのに、平然とリストラを告げ、淡々と自分が与えられた職務を合理的に遂行していく…というものです。
利益のためなら感情を捨てて、血も涙もない行動を続けていく人は、ビジネスでは評価の対象となることがある一方で、1人の人間として見た場合はあまりの薄情さに「(あの人は人間の心がないのか」と無機質で自分とは相容れない人だと言う印象を抱きます。
また、リストラの他にも
- 平気で嘘をついたりごまかそうとする
- お客様が損をするのをわかっているのに契約を迫ろうとする
など、良心の呵責にさいなまれるような場面ですらも、感情的にならず淡々とやってのけてしまう行動に、無機質さを感じるものです。
友達、恋人がおらず一貫して孤立を貫く
上でも触れたように、他人からの評判や世間に対して関心が薄いために、友達や恋人がおらず一貫して孤立を貫く傾向があります。
また、当の本人も孤立していることそのものに対して危機感や違和感を抱いていない。むしろ、孤立している状態の方が心地よい、気楽である、と肯定的に捉えており、改める気がないようにすら見えます。
なお、こうした徹底した孤立を貫く姿勢は、HSPと言う敏感で繊細な気質を持つ人にも通ずるものがあります。
HSPの場合は、人間や集団から受ける刺激に対して過剰に反応して疲れてしまうので、それを避けるべくあえて孤立を選び自分にとって住み心地が良い環境構築しているのです。近寄りがたく何を考えているのかわかりにくいですが、しっかりとした理由があるからあえて孤立を選んでいるわけです。
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無機質な人=冷酷、サイコパスな人ではない
無機質な人というのは、どうしても近寄り難さや何を考えてるのかわからない人と感じるため、「冷酷」「サイコパス」と言う偏見で語られることが多いものです。
確かに、フィクションの世界では何を考えているのかよくわからない人が、凶悪犯罪や残酷な事件の構成員・首謀者となることは多く、「無機質な人=犯罪者予備軍」というイメージで、つい人を判断してしまう事も無理はないでしょう。
また、現実においても、2008年に起きた秋葉原の無差別殺傷事件のように、社会から孤立した人や人間関係が希薄な人が、凶悪な犯罪を起こす可能性があると言う考え方を強める事件が、たびたび起こっています。
しかし、あくまでもこうした事例は例外的なものです。ましてや、フィクションの場合ならフィクションを楽しむ人が理解しやすいように作った、わかりやすいキャラ設定でしかありません。
「無機質な人=冷酷、サイコパス」と言うステレオタイプで判断することは、勘違いに他なりません。
無機質な人とシゾイド・スキゾイドパーソナリティ
最後に、無機質な人と関わりが深い心理学用語通じて、シゾイド・スキゾイドパーソナリティについて触れておきます。
シゾイド・スキゾイドパーソナリティとは、他者への関心や社会との関わりに対して興味・関心が乏しく、普段から孤独でいることが性に合う、などの特徴持つ人を表す言葉です。
上でも触れたように
- 喜怒哀楽の感情表現が乏しく、表情が平坦である
- 親しい友人や恋人がおらず、家族との交流も希薄
- 世間の出来事や評価に対してに無頓着
- 流行やファッションに疎い
等の特徴が見られ、無機質な人と共通点が多いパーソナリティといえます。
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