感動しても泣けない理由は心理的リアクタンスである

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感動モノの映画なのに全然泣けない、卒業式や別れの場面なのに涙が出てこない…こうした行動は時に冷たい人だと言われて、非難やツッコミの対象になることが多いものです。

しかし、みんなが感動や悲しみに暮れて泣いている状況を見ると、どうしてもその状況に対して反発し、あえて泣かずに毅然とした態度でいたいと思うのもまた人間の心理でしょう。

周りの雰囲気やノリに流されず、自分らしさを貫いていたいと言う反発心がある人からすれば、当然泣くことが求められている場面であえて泣かず、むしろ反発してやろうと言う気持ちが湧いてくるものです。

こうした気持ちは、心理学では「心理的リアクタンス」と呼ばれています。今回は、心理的リアクタンスをもとに感動しても泣けない理由についてお話しいたします。

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心理的リアクタンスとは

心理的リアクタンスとは、自分の態度や行動に対する自由が脅かされた時に、その自由を取り戻そうとすべく反発したり逆らいたくなる心理の事です。

リアクタンスは「抵抗」の意味。人間は誰かや何かから自分の行動を強制される状況になると、無意識のうちにその強制に抵抗し、自由を求めようとするのです。

わかりやすい例で言えば、

  • 勉強しなさいと言われると帰って勉強する気が失せてしまう。
  • 早く寝なさいと言われると、逆に夜更かししたくなる。
  • 周囲で流行っている物や事に対して、あえて反発して興味を見せずマイナーなものを楽しもうとする。

など、他人の言動や周囲の状況などに対して反発してしまうことが、心理的リアクタンスなのです。

また、こうした心理は民話「つるの恩返し」で助けた鶴から言われた「機(はた)を織り上げるまで消して覗かないでください」という約束を破って、つい覗いてしまう行動にも通ずるものがあります。

約束を守り続けるのは、その分自分を抑制したり我慢をするので自由が失われる。一方で約束を守らなければ、(顰蹙は買われるかもしれないが)我慢する必要性がなくなり自由を手に入れられる。約束を守り続けるという不自由な状況に対して反発心を持ってしまう人間の心理が、鶴の恩返しから読み取ることが可能です。

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心理的リアクタンスから見る感動的な場面で泣けない理由

心理的リアクタンスをもとに、感動できない心理を詳しく見ていきましょう。

よくある感動モノの映画やドラマには、いかにもこれから「感動のシーンが待っていますよ!」と匂わせる演出や伏線が数多くちりばめられています。

例えば、戦争がテーマの作品で、自分の故郷や家族の話など回想をするシーンが出てくれば、その後の展開としては改装をしている人物が死ぬのが、フィクションの世界でのお約束です。

もちろん、こうした演出は確かに心を揺さぶられ、思わず感動して涙がこぼれてしまう演出と言われればその通りです。

しかし一方で、フィクションの世界のお約束を知っていると、「感動的な演出だろう?ほら、泣けよ?」とストーリーの製作者の意図や思惑に敏感に感じてしまいます。そして、なんとしてでもそれに反発しようしたくなり、意地でも泣かずに耐えてみせようという気持ちになるのです。

ただ作品を作品として純粋に楽しむのではなく、作品を作っている人の「感動して泣きなさい」と言う押し付けがましさ感じ取る。

そして押し付けがましい演出にそのまま素直に従って泣くのではなく、感動して泣く以外の行動をとり、本来自分が持っていた自由を取り戻そうとしする。こうした心理が働いているために、感動して泣けなくなるのだと考えられます。

実際に、感動モノのドラマや映画では、これでもかと言う位に感動のための過剰な演出や表現が盛り込まれ、まさに「感動の押し売り」と表現されてしまう演出もあるものです。

あたかも

  • 「どうだ感動するだろう?」
  • 「これとても感動できるよできるでしょ?そうでしょ?ね?ね?」
  • 「これだけ感動出来る要素を盛り込んだのだから、泣くのが当然だよね~」

とでも言ってきそうな演出は、視聴する方としては、あまりの過剰演出っぷりにせっかくのムードが台無しになり興ざめします。

もちろんフィクションに限らず、卒業式やお葬式など、周囲に泣いてる人が多数おり、あたかも「泣くことこそがその場で求められている正しい振る舞いである」と感じる場面に対しても心理的リアクタンスは働きます。

多くの人が泣くべき場面で自分も泣く事は、言い換えれば泣く以外の自由な行動を手放し、自ら不自由な状況に飛び込むようなものです。

そうした不自由な状況を避けるためにも、あえてなく以外の行動をとり、自分が持っている自由を取り戻そうとしているのです。

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