誰かと話すときや一人でいる時に、つい腕を組んでしまう人はきっと多いと思います。
腕を組んでいると妙な安心感と言いますか、収納すべきものがちゃんともとの場所に収納されているかのような安定感を感じるので、つい腕を組んでしまうのだとと思います。
しかし、心理学では腕を組む心理は、他人と壁を作るという心理の表れとして考えられており、安心感ではなく不安や緊張感の表れと考えられています。
実際に無意識のうちに腕組みする癖が身についており、気が付けば肩や首の筋肉が凝っていたという経験をした人も多く、自分の感じる不安や緊張が腕組みという仕草に出ていると見る事ができます。
また、自分はかっこいいと思って腕組みをしていても、その腕組みを見て「どこか近寄りにくい人」という印象を持たれてしまっては勿体ないものです。
今回は腕を組む心理について、お話いたします。
腕組みをするのは不安や緊張が原因
心理学では腕組みをする心理は、自分の感じる不安、緊張、拒絶の感の表れであると考えられています。
腕を組むことは、自分のパーソナルスペース(≒なわばり意識)を広げて、自分のスペースを増やして安心したい、気持ちを落ち着けたい、自分を守りたいという心理の表れと考える事ができます。
また、腕を組むことは自分と相手との間に「腕」という物体を置き、腕を組んでいない時と比較して相手が近寄って来れなくするという特徴もあります。
図で表すと
- 腕組みあり : 自分 = 相手
- 腕組みあり : 自分 = 腕 = 相手
と、数十センチほどではありますが腕がある距離だけ相手は近寄ってこれなくなるので、その分安心感を得ることができます。
人と仲良くなるためには距離感を縮めていくことが大事ですが、かと言って距離感を縮めすぎて目の前まで迫ってこられたら誰だって不信感を抱くものです。
腕組みをする人は、自分に近づいていくる人への不安、急に距離を詰めてくる人への警戒心の強さが、無意識のうちに腕を組むという行動に出てしまいます。
腕組みは直接言葉で言わなくとも、その態度から「あんまり近づかないでね」という無言のアピールをしていると見ることもできます。
また、いくら爽やかな笑顔をしている人でも腕組みをしていると
- パッと見は爽やかなのに、どこか近寄りがたい雰囲気を醸し出している
- 社交的に見えて、奇妙な威圧感を感じる…
という気持ちになるのは、顔は爽やかさで社交的、でも体は腕組みで警戒や拒絶を示しているという、顔と仕草から感じる情報の不一致ゆえ起こるものだと見ることができます。
オープンポジションとクローズドポジション
腕組みに関する用語として「オープンポジション」と「クローズドポジション」という言葉があります。
オープンポジションとは
オープンポジションは、腕や足などを開く行動を指す言葉です。
人間は精神的にリラックスしていると、腕や足、指などの体のあらゆる部分が開き、体だけでなく心も相手に対して開いているとアピールすることができます。
- 腕を広げる
- 手のひらを相手に見せる
- 指を広げる
- 脚を開く
- 膝・つま先が外側を向いている
など、体のあらゆる部分が外向きに開かれている状態であり、その行動を見るだけでも落ち着きや安心感を抱いていることがわかります。
ただし、オープンポジションは場合によっては相手に失礼な印象を与えたり、マナー違反(電車内で足を広げすぎてしまう)や下品さ(女性が不用意に脚を開くなど)を与える行動と映ることもあります。
クローズドポジションとは
一方クローズドポジションは、腕や足などを閉じる行動を指す言葉です。
人間は不安や緊張を感じると、腕や足、指などの体のあらゆる部分が内向きに閉じてしまいます。
- 腕組み
- 手をポケットに入れる
- 膝組み
- 膝をくっつける
- 内股になる
腕や脚を交差させる手のひら(内側)を隠すなど、あらゆる体のパーツを内向きにさせる行動は、他の人から見ても「なんとなくこの人緊張してはるなぁ」「どこか近寄りがたいイメージがあるなぁ」「何か人に言えない秘密があるのだろうか」という気持ちにさせてしまうものです。
「内向き」という言葉の意味からしても、どこか不安や緊張を感じており、そのことが体にも表れていると感じるのも自然な事です。
ボディランゲージという言葉にもあるように、人間の心と体は密接につながっており、自分の感じているストレスが、言葉や顔の表情として出ていなくても、手や足などの体のパーツの動きとして出てしまうことを覚えておくようにしましょう。
腕組みだけでなく脚組みも不安や緊張の表れ
クローズドポジションから見れば、腕組みだけ脚組み(足組み)も不安や緊張の表れとみることができます。
脚組みをし続けていると足や腰の筋肉が凝るので何度も左右の脚を入れ替えて組み直すことがありますが、これは滞った血流を良くして緊張感を和らげるという側面もあります。
「緊張して足組みをする→緊張ゆえに筋肉が凝ってそれを和らげる」という一連の流れには、それなりの合理性があることが伺えます。
ちなみに、女性の場合はマナーやエチケットの観点から日常的に脚組みをしにくく、代わりに腕組みや膝をくっつけるなどの別の行動で、自分の緊張を表している事もあります。
なお、足の仕草はボディランゲージでも滅多に使うことのない体のパーツであり、何気ない脚の仕草から緊張や不安、イライラや退屈などの本心がつい出てしまいます。
例えば貧乏ゆすりのようにイライラや焦りが募っているとは、顔にそのことが出ていなくても、無意識のうちに足が反応して気持ちが体に出てしまうものです。
腕組みと社長に関する投資家の間で話題のある説
少し心理学とは離れますが、投資家の間では「企業の公式ホームページ等で社長が腕組みをしている写真が掲載されている企業は投資先としてはオススメできない」という説が、実しやかにささめかれています。
大抵の企業ホームページだと、社長のポーズはお辞儀のように手を前で組むか、手を後ろに組んでいるかが大半ですが、ベンチャー企業や社長の年齢が比較的若い企業だと、堂々と腕組みの写真を公式ホームページに載せている例が多くあります。
社長ともなればまさに企業の顔でもあり、ポーズ次第社長だけでなく会社への印象も変わるので、どういうポーズで写真に写るかは重要とも言えます。
そのポーズを見るのは消費者や就活生、転職希望者だけでなく、投資家も同じで、ポーズから感じる社長の心理を投資の判断材料として扱うのも、その会社が本当に投資するに値するかを見極める意味では理にかなっている行動です。
なお、上にも説明したように、腕組みをする心理は緊張、警戒、拒絶の裏返しでもあるので
- 実は緊張しやすい性格で、それが業績にも悪影響するのでは?
- 警戒心から従業員との信頼関係を築けないのでは?
- 警戒心保守的な組織になりやすく、思い切った軽々転換ができないのでは?
- 爽やかな写真とは裏腹に社内は殺伐としててストレスフルな環境なのでは?
- 腕組みで写真を撮影することに疑問を抱かない人ばかりで固めているのでは?
- 腕組みしている自分を客観的に見れない性格なのではないか?
- 腕組みしてドヤ顔に浸っていて、なんだか調子に乗っていそう‥
などの、あらゆる悪材料を「腕組み」というポーズから連想するので、投資家目線で見れば「この会社は投資先としては不向き」と感じるのかもしれません。
上場して間もない企業ともなれば、嬉しさもあれば同時に責任感が求められたり投資家からの意見や批判に対して向き合わなければいけないため、過度に緊張してしまい腕組みをするポーズを自然にとってしまうのだと考えることもできます。
(なお、腕組みをしていると社長らしい肝の座った人間であるアピールができるのと、何よりかっこいいから腕組みしているという理由で腕組みの写真を掲載している可能性も、一応否定できないことは補足しておきます…)
参考文献