成功が怖いと感じる「成功恐怖理論」について

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人間には自分の可能性を広げたいという欲求を持っています。

心理学ではこの欲求のことを自己拡大と呼び、

  • 学業や仕事で成功を収めたい
  • 部活の試合・大会で活躍したい
  • 一芸に秀でて作品を発表したい

などの、自分の夢や目標へのモチベーションとなっています。

しかし、心から成功したいという強く願う場面で、

  • なんとなく成功するのが怖い
  • 成功することそのものが怖く感じてしまう
  • いっそのこと失敗したら、心が落ち着いてホッとできる気がする…

という、自分の弱さ、未熟さ、拙さを感じたり、自分の中で破滅願望のような邪悪な気持ちが渦巻いているのを感じた経験はないでしょうか。

もちろん、ここでは成功が怖いだなんて情けない、メンタルが弱いから鍛えるべきと言うつもりはありません。

それもそのはず、成功が怖いと感じることは既に心理学で研究されており「成功恐怖理論」という名前が付いているのです。成功するかもしれない場面で恐怖感を抱くのは、人間の当然の心理とも言えるのです

今回は、成功恐怖理論についてお話いたします。

成功恐怖理論とは

成功回避理論は、1968年のアメリカの女性の心理学者ホーナーによって提唱された理論です。

成功回避理論はその名のとおり、人は無意識のうちに成功することへの恐れを感じてしまい、自ら成功を回避する心理があるという説です。

ちなみに、成功を回避する傾向はとく女性とされていますが、その理由は、この説が提唱された当時のアメリカの社会情勢が影響していると考えられています。

当時は、今ほど女性の立場も強くなく社会参加もまだ現代ほど進んでおらず、そんな状況で、女性として社会的に成功すれば

  • 「(当時のアメリカの価値観からすれば)あの人は女性らしくない人生を歩んでいる」と避難される事への不安。
  • 女性らしくない人生を歩んでいることで、自分の中の女性らしさやアイデンティティが失われてしまう事への恐怖。
  • 女性のくせに社会的に成功している事への妬み、やっかみを女性からも男性からも受ける事への恐怖。

などの、成功することへの不安や恐怖を抱くの女性が多くいました。

また、ホーナー自身も女性の心理学者ということも影響してか、とくに女性が感じる社会的な成功への不安を、成功回避理論は説明していると考えることができます。

もちろん、女性に成功回避傾向が多いと言っても、男性に全く無いというわけではありません。

性別関係なく、成功した後に付きまとう様々な不安を避けるために、あえて成功を避けようとする心の動きが人間には備わっていることが成功回避理論からわかったのです。

ちなみに、成功回避理論は本によっては「成功回避」「成功不安」とも呼ばれています。

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成功を恐れてしまう理由

成功には失敗が付きまとうと考えてしまう

何かで成功したいと願う場面では、成功することもあれば失敗することもあります。

その失敗を過度に恐れて「必ず失敗するに違いない」と失敗を極端に考えてしまうことから、成功を恐れてしまうことがあります。

例えば大学受験の場合なら「成功=志望校に合格」「失敗=志望校に不合格」となり、不合格という失敗(リスク)と、合格という成功(リターン)は表裏一体です。

しかし、受験は必ず誰かと競い合わねばならず、いくら模試で成績がよかったとしても本番でしくじれば不合格になるので、必ず成功するものではありません。

また、模試の判定で一番良いA判定でも、合格確率80%以上という表記にとどまっており、合格する確率は高いけれども確実に合格するわけではない以上、ひょっとしたら当日調子が悪くて失敗することもないとは言い切れません。

それらの確率は低いけど、リスクがゼロではないという事に過剰に反応してしまい、失敗するようなことを避ける、つまり成功そのものを避けようとするのです。

なお、成功が怖くて受験を途中で諦めてしまえば、失敗(不合格、リスク)してショックになることはありませんが、成功(合格、リターン)がないことは自明です。

成功した後の不安を想像して怖くなる

成功を回避する人の傾向として

  • 成功した後に他の人から嫉妬されたりしないか?
  • 成功したことで調子に乗りすぎて嫌われるのではないか?

と、成功をした後の不安を想像することで、成功が怖くなることがあります。

ことわざの「捕らぬ狸の皮算用」のように、成功してすらいないのにあれこれ想像したものの、想像した結果がどれもネガティブなものばかりなので、成功が怖いと感じてしまうのです。

例えば起業を考えている場合なら

  • 事業が成長したタイミングで不景気になって倒産するかもしれない。
  • 業績が良くても仕事が忙しすぎて過労死するかもしれない。
  • お金に目がくらんで身の丈に合わない投資をするかもしれない。

など、社会的な成功であっても次々と不安材料が出てきて「やっぱり何もしないのが一番」「現状維持が一番」と考えて何もできなくなるのがいい例です。

成功したらそれ以外の生き方ができなくなると考える

成功してしまうと、もうそれ以外の生き方ができなくなるという不自由さ感じて、成功を避ける人もいます。

例えば、自分の夢はスポーツ選手で、無事に夢を達成できた姿を想像してみると

  • ひょっとしたら自分にはスポーツ選手以外の生き方があったかもしれないのに、わざわざスポーツ選手になってもいいのだろうか。
  • いつもスポーツのことで頭がいっぱいになり、実は思っているほど楽しい生活ではない気がする。
  • 普段からスポーツ選手らしい生き方や振る舞いをしなければいけず、案外窮屈な生き方になるのではないか。

などの、不安を感じるのがいい例です。

とくにスポーツ選手などの芸能人、タレント業が成功だと考えている場合、個人としての生き方は優先されにくく、公人として所属している団体としての行動する場面や、プライベートを追われる生活になることもあります。

また、その生活はスポーツをやめた後も続き、一度成功してしまうと、もはや平凡な一人の人間として生きるのが難しいというジレンマから、成功が怖く感じるのです。

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自分の成功回避傾向の強さの調べ方

自分がどれだけ成功に対する回避傾向が強い(=成功への不安を抱きやすい)のかを調べるには、「ビジネスで成功したらお金持ちになった自分の姿」を想像して見て調べる方法があります。

想像したイメージが

  • 更なる成功を手にする : 資産運用で更にお金を増やした、事業を買収して成長させた、メディアやSNSで注目を浴びた、など
  • 妥当な成功を手にする : 老後に困らない平凡な暮らしを手に入れた、お金持ちになったけど仕事は続けて堅実に生きた、など
  • 人生が転落してしまう : 仕事仲間に裏切られてお金が盗まれた、浪費癖がついて前より生活が苦しくなった、など

のうちどれになるかで、自分が成功に対して不安を感じやすいかを知ることができます。

上の三択の場合なら「更なる成功を手にする」が成功回避傾向が弱く、リスクのあることでも積極的にチャレンジできるタイプです。しかし、リスクが大きすぎて一度の失敗で大きな損害を抱えるリスクもあります。

一方で「人生が転落してしまう」と答えた人は成功回避傾向が強く、リスクのあることが中々始められず、受験や仕事で自分を低く見積もり過ぎたり、失敗を恐れて進学も就職をしない生き方を選んでしまうことがあります。大きなリスクこそありませんが、リスクを恐れた何もできない生活になる懸念があります。

なお「妥当な成功を手にする」と答えた人は、地に足を付いた考え方ができるタイプで、安定や無難な成功のために行動しやすい人と言えます。

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若者と成功への不安

長年続く不景気や先行き不透明な経済状況が続いているせいか、10~20代の若い人を見ていると極端に失敗することを恐れているために、成功することにも不安を感じているように見えることがあります。

受験で失敗したら人生終わり、就職活動が失敗したら人生終わり、転職活動が失敗したら人生終わり…というような意見あエピソードはSNSでも度々話題になっているのを見かけます。

また、浪人生の末路や就職活動で挫折した人の残念なその後などの、人生の節目での失敗に関する情報がネットで簡単に手に入ることも、成功への不安を強めているように感じます。

ネットがなかった頃と比較すると昔以上に「失敗したらどうなるか」という情報が簡単に入手でき、その情報はどれも見るに堪えない辛い人生なのが大半です。

その辛いエピソードが記憶に残って失敗するような場面、すなわちリスクをとって成功を掴む場面を積極的に避けている人が多くなっているように感じます。

また、現代なら失敗した様子をスマホで簡単に写真・動画撮影できますし、ネットやSNSに晒されて、不特定多数の人から笑いものにされてしまう恐れもあり、迂闊に失敗すらできない状況になっています。

何年か前に関西の方で話題になった某号泣議員のように、一度ネットにアップされた自分の醜態が笑いものにされるだけではなく、ネットユーザーにより動画が加工・編集されて一生笑いのネタとしておもちゃにされてしまう状況もあるので、成功も失敗もない生き方が一番と考えるのも至って自然だと思います。

しかし、失敗も成功もない人生や、失敗したくないから必ず成功することだけする人生は、やれることも限られており、想像以上に不自由なものになります。

そんな生活は不満ばかりだけど、かと言ってその不満を打破するためのリスクは取れず、更に不満を募らせる…というメンタル面でもあまり快適な生活とは言えません。

なお、成功せずに何者にもなっていないときは、不安と同時に「自分はどんなものにもなれるかもしれない」という妙な自信が沸くこともあって厄介なものです。

モラトリアム満喫中の大学生が、将来どうするかという不安を抱きつつも、どこか堂々としていて気力に満ち溢れているように、妙な安心感故に何もしないまま時間だけが過ぎてゆき、気が付けば留年・退学となっては困りものです。

過度に失敗・成功を恐れないためには、適度にリスクを取ることを恐れないことです。仮に失敗しても、そこまで大したことがないという経験が積めれば、きっと成功に対する恐怖がマシになると思います。

国立大教育学部卒、専攻は心理学。発達心理学、教育心理学、スポーツ心理学、社会心理学を中心に心理学に関する記事を執筆中。そのほかにも、人間関係やコミュニケーション、性格、スマホ、SNS、ゲームなどのあらゆるテーマを心理学の知識を用いて詳しく、面白い記事を書くことを心がけております。

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