男女の関係としてからかう人といえば、「本当は好意を持っているけど素直にそのことを言えず、照れ隠しとしてからかっているのではないか?」と感じて、からかう原因を想像しやすいものですが、これが同性の関係となると、途端になんでからかっているのかという理由がわかりづらいことで悩む人が多いことでしょう。
また、仮になんとなく理由が想像できたとしても、それがマウンティングであったり、その場を和ますためのピエロ役を自分にやらせるなど、「本当にこの人は私のことを友達として尊重しているのだろうか?」という疑問がつきまとう理由であり、複雑な気持ちになってしまうことも、ひょっとしたらあるかもしれません。
今回は、そんな同性の友達をからかってしまう人の心理についてお話しいたします。
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どうして同性の友達をからかうのか
友達としての仲の良さを確認する狙いがある
からかうという行為はその性質上、あまり親しくない人に行えるものではありません。
もし親しくない相手に対してからかおうものなら、からかった本人は人間関係の距離感をわきまえられない非常識な人間として見られてしまい、自分に対する評価を下げる原因になります。(なお、異性をからかう場合はセクハラとみなされるリスクもつきまとう。)
従って、からかうことが可能なのは、ある程度お互いに打ち解けている関係であることが大前提となります。
以上のことを踏まえると、「問題なくからかいあえる=ある程度お互いに打ち解けているほど仲が良い関係である」という図式が成り立ちます。
友達としての仲の良さや絆の強さを確認したい欲求に駆られている人は、この図式をなんとなくでも理解しており、いわゆる仲良しアピールの一種として同性の友達をからかう行為に出てしまうのです。
からかいが成功すれば「私たちはからかいあっても友情が崩壊しないほど、絆が強い関係である」と言葉にしなくても周囲にアピールできるのです。
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友達を独占したい気持ちのあらわれ
例えば、急に脅かす、ちょっと恥ずかしいことをさせる、気にしていることを軽くいじる…などのからかう行為をする裏には、友達を独り占めしたい気持ち、つまり独占欲が隠れていることもあります。
恋人関係はその性質上1対1の人間関係が基本ですが、友達関係は1対複数人、複数人対複数人でも問題ありません。
しかし、このことはグループの中で特に仲良くしたい友達が一人だけいるのに、その友達に構ってもらう時間を確保しづらいために、独占欲を強めてしまう原因になります。
また、他の友達が見ている中で自分だけが友達を独占したいとことを言葉にして露骨にアピールしようものなら、他の友達から目をつけられてしまい、仲間はずれや無視を食らうリスクもあります。
そんなあらゆるリスクを回避しつつ、そして他の友達から独占欲を悟られないようにして、特に仲良くしたい友達を独り占めする方法が、からかうという行為なのです。
表面的には、からかうことで場の空気を盛り上げ、自分が所属するグループに対する貢献意欲の高さを持っていることをアピールできます。その裏では、ある特定の友達を独占したいという個人的な欲求を満たせます。
ただし、独占欲が強さは、「友達が自分から離れてしまうのではないか」という不安や「(友達として)受け入れられている自信がない」という自己肯定感の低さからくる、対人関係への自信の無さが原因となっている場合もあります。
友達として好きだけど素直に表現できないので照れ隠しとしてからかう
好きな異性に軽くちょっかいをかけてしまうのと同様に、同性の友達として好きなのにそのことをストレートに表現することに恥ずかしさを感じてしまった結果、代わりにからかうことで好意を表現することもあります。
こうした、自分の感情とは真逆の行動に出てしまうことは、心理学では防衛機制の反動形成と呼ばれています。
なお、「ツンデレ」という言葉は、反動形成の仕組みをよく表している若者言葉の一種と言えます。
本心はデレデレとして甘えたい、ストレートに好意を表現したいけれども、それは自分のプライドや普段のキャラ、周囲の状況などを踏まえるとできないために、代わりにツンとした冷たい態度や敵意を向ける態度を取ることで、間接的な好意を表現しているのです。
ただし、からかうことも見方を変えれば、相手に対して敵意を向けることでもあり、「からかうということは、もしかして自分は嫌われているのでは?」と相手が額面通りに受け取ってしまうことで、関係にヒビが入るリスクのある行動とも言えます。
過度なからかいは「いじり→いじめ」に発展することも
仲が良い間柄であっても、からかうことがエスカレートして、いじめや嫌がらせに発展してしまうことがある点について、知っておいて損はないと思います。
からかうことは仲の良さを表す一方で、どうしても強くからかうために口汚い言葉を言ってしまい、ただの言葉や態度の暴力になるリスクもあります。友達(friend)のように見えて実はは敵(enemy)のだったという意味を持つ「フレネミー」になる人も、出発点は軽いからかいだと考えられます。
また、からかうことには「仲の良さを示す」「純粋に敵意や攻撃性を見せている」という矛盾した思惑を込めることが可能な為、からかっている本人は「仲がいいからからかっている」と解釈していても、からかうを受ける方は「ただ嫌がらせを受けている」という解釈の相違が生まれてしまうことがあります。
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友達内でのマウンティングとしても機能する「からかい」
ここまではからかうことをなるべく好意的に見てきましたが、他人を見下したり値踏みするマウンティングとしても機能します。
たとえば、からかっても喜んでいる友達が出てきた場合、からかう側からすれば「この人はからかわれてもヘラヘラするほどにプライドのない人間だ」と見下すことができます。
まるで部活動で上級生が下級生をいびることで、上級生としての威厳の高さを誇示するように、からかうという行為には「どちらが格上or格下か」というお互いの立場関係をはっきりと意識させる側面もあります。
また、からかわれても問題ないことを他の友達が見ていたとしたら「この人はからかっても大丈夫な人間(=いじられキャラ)だから、今度から積極的にからかって場を盛り上げていこう」と認知され、グループ全体である特定の人をからかう…つまり、集団でのいじめに発展する懸念もあります。
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