繊細で敏感な気質であるHSPが、本やメディアに取り上げられて認知度が高まってきたこともあってか、HSPに関する資格の存在をネットで検索していると見かけるようになります。
いわゆる、カウンセリングをメインとする心理系の資格の一種のように思われますが、一方で「資格商法」のように、資格という商品・サービスを売るためだけに、HSPが利用されているのではないかと感じることもあります。
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資格商法とは
資格商法とは、何らかの資格を取得するために高額な受講料を支払わせたり、資格を取得後に登録費や会員費と称して資格取得者から金銭を徴収するという、資格にまつわる悪徳商法のことです。
資格を取得後「資格を取得していること」を材料にして自身の活動を行なうときに、資格発行者に使用料を支払ったり、自身の売上の一部を団体に献上するといった、マルチ商法、ねずみ講、ネットワークビジネスのような仕組みを持つものもあります。
また、資格によっては、そもそもの認知度が低いあまりに、就職や転職などで材料視されるものですらなく、ただ資格にまつわる商品を、資格の取得者に売りつけるためだけに存在しているケースあります。
資格商法は「先行き不透明で不安定な世の中だからこそ手に職をつけたい」という消費者が持つ不安心理に漬け込んだ悪質なビジネスです。
しかし、そもそもで言えば「資格商法」という言葉が広まっておらず、取得者が騙されている事実に気づきにくいのが問題です。
また、資格取得時に、悪質な自己啓発セミナーに見られる洗脳・マインドコントロールを行なうことで、資格発行者及び団体に対して疑いの目を向けないように仕向けているために、被害の声が上がりにくいことも、資格商法が暗躍する一因と考えられます。
心理系の資格と資格商法の関連性
もとより、心理系の資格は
- ○○認定カウンセラー
- ○○セラピスト
- ○○式ヒーラー
- ○○認定メンタルコーチ
など、知名度がない民間団体(場合によっては個人)が発行している民間資格が多く、資格を取ったからと言って就職に有利とは呼べず、仕事に結びつくわけでもないものが目立ちます。
また、いわゆる子宮系、占い、霊視などのスピリチュアル系の資格(○○スピリチュアルカウンセラーなど)も心理系の資格の一種として分類されることもあります。
これらの資格は、高額なお金をだせば短期間で簡単に取得できる手軽な資格であるものの、スクールカウンセラーや福祉、医療などの職に就く際に有用ではなく、同じようにスピリチュアルに興味がある人同士でしか、資格の効果を発揮できていないという、資格そのものの効果が過度に限定的なのが象徴的です。
なお、一般的に心理系の仕事に求められる資格は、唯一の国家資格である公認心理士(2017年9月施工)か、民間資格の臨床心理士の二つが代表格。
そのほかにも、学校心理士、臨床発達心理士などが有名ですが、どれも大学院修了が前提で、数日や数週間で取れる手軽な資格ではありません。
HSPの資格に感じる資格商法の影
心理系の資格に関する背景について説明をしてきた上で、HSPに関する資格を見て感じる怪しさや疑わしさをまとめて説明していきます。
数日ほどの短期で取得可能である
資格を取得するための日数が、1日(数時間程度)のものであったり、数日感に渡るカリキュラムを受講すれば、資格が発行されるという手軽さが気になります。
公認心理士や臨床心理士が大学院終了過程…つまり、数年単位の時間が必要なのと比較すると、極めて短時間であるため学べることが限られます。
勉強時間に換算すると、十数時間程度の講座で取れてしまう資格が、果たしてどれだけの効果があるのか…疑問が拭えませんん。
なお、短時間で資格が取れることは、資格取得が容易さをアピールし、なるべく多くの受講者を集めるための(商売上の)戦略とも見て取れます。
資格を取得するための試験・テストが無い
公認心理士や臨床心理士資格の取得には、試験が必須です。
しかし、HSPに関する資格を調べていると、試験らしい試験が存在しておらず、受講料を払って講義を受ければ、自動的に資格が取得される仕組みが散見されます。
これは、事実上「金さえ払えば手に入る資格」と見てとれます。
ステップアップ式に複数のプランが用意してある
短期間で資格を取得できる初心者向けプランと、中・上級者向けの上位プランなど、資格取得者のニーズに合わせた複数のプランが容易されている例が目立ちます。
こうしたプラン分けは、初心者向けプランは上位プランへの客をおびき寄せるために用意した撒き餌のようなものであり、高額の上級者プランへの成約が本当の狙いだと考えられます。
また、初心者向けプランなら、多少内容が拙くとも「これは初心者向けプランなので、もっと詳しく学びたい方は上級者プランを申し込んでください」と、スムーズに契約させるための材料になり、資格に対する違和感や不自然さを覆い隠すこともできます。
こうした仕組みは、マルチ商法や自己啓発セミナーなどでも見られるもので、敷居を低くして新規参入者を集めつつ、初心者をヘビーユーザーに育てて収益効率を上げるための仕組みと言えます。
権威付け活動が目立つ
資格そのものの知名度の低さ、歴史の浅さ、漠然とした疑わしさ…など、いわゆる悪材料となるものを払拭し「この資格はクリーンで、安心できますよ」と宣伝するために、
- 背後に団体や組織がいることを宣伝する。
- 団体・団体関係者が書籍を出していることを宣伝する。
- 団体・団体関係者が上場企業や大学などの研究機関とのつながりがあると宣伝する。
- メディアや雑誌などで紹介されているを宣伝する。
など、資格に対する権威付けの活動が目立つことです。
当然ながら、上場企業とのつながりがあるからと言って、その資格が素晴らしいものだと感じるのはあくまでも錯覚に過ぎません。
書籍が出ている言っても、出版社から原稿料が出て出版されているものと、原稿料なしの自費出版とを比較した場合、どちらも「本を出した」ことには変わりないものの、その言葉を捉える意味合いが異なります。
なお、権威は言い換えれば「ブランド」のことであり、「この資格はブランドがあるから安心できる」と参加者に考えを促すために、あえて誇張して宣伝しているのだと考えることができます。
なお、権威付け活動は、権威があることでなにもかもが素晴しく感じてしまう「ハロー効果(後光効果)」を悪用しているという見方もできます。
資格取得後にどういったメリットがあるのか漠然としている
資格が取得できる講座ではあるものの、資格取得後のメリットが漠然としています。
歴史が浅い、知名度が低い民間資格が微妙なので、仕事に役立つメリットらしいメリットが乏しいので、説明不足になっているのだと考えることもできます。(そもそもHSPの概念も歴史が浅いのですが…)
なお、就職での効果に触れられていないことからで、自身がカウンセラーを名乗って、HSP専門のカウンセリング業を行いたい層に向けられて、資格を発行しているのではないかと考えることもできます。
それでもHSPの資格取得を考える場合
こうした疑問点が多い中、それでもHSPの資格を取得している人に向けては
- 様子見をする
- 資格取得者のその後を調べる
- 「特定商取引法に基づく表記」を確認する。
の、3つの方法をおすすめします。
資格商法そのものが、藁にもすがる思いで資格に過度な期待を見出している人を対象にした悪質な商売であるため、引っかからないためには、焦る気持ちを抑え時間をとって様子見をすることが肝心です。
また、資格取得者のSNSやブログなどを確認して、その資格がどのように扱われているか、取得者にとって何らかの利益があるのかを時間をかけて調べていくことも肝心です。
最後に、ネット上で資格という商品を売っている…つまり資格も一種のネットショップの商品であり、ネットショップを行うのに必要な「特定商取引法に基づく表記」の記載が義務付けられています。
特定商取引法とは「取引の公正性と消費者被害の防止を図るための法律」と言い換えることができます。
商品の売買において弱い立場にたつ購入者を守り、また販売者を明示することで商品の流通や提供を明確化していくためのものになります。
また、特定商取引法に基づく表記は、契約に関する支払い方法や返品の可否について記載が必須です。
とくに、契約のキャンセルに関わる情報がしっかり記載されているかについては、よく調べておくことをおすすめします。
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