自己愛性人格障害の人同士による共依存について

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自己愛が強く他人を見下したり、自分を持ち上げてくれるイエスマンばかりを集めたがる特徴をもつ自己愛性人格障害の人は、自分と同じように自己愛の強い人と関わるとなれば、マウント合戦になり、およそ仲良くはなれない…と考える人はきっと多いと思います。

棒磁石でN極同士を近づけても反発しあってくっつかないように、自己愛の強い者同士の意地があるので、打ち解けることは起こりえないし、ましてや共依存の対象にはならない…と考えるのも自然でしょう。

しかし、一方でお互いに強すぎる自己愛からくる、他人には言いにくい悩みを持っていることで共感を覚える。また、お互いに肥大化した自尊心を持っているという共通点があることから、実は自己愛性人格障害の人同士は相性がよく、共依存の関係が起きるのではないか…と感じることもあります。

いわゆる意識高い系と呼ばれる人が、同じく(自)意識(だけ)が高い人同士で集まり、馴れ合いの関係になる。お互いにやたら褒め合って増長し、意識だけが高くて実績が伴わない状況になっても手痛い指摘や非難もしない、生ぬるく優しい世界に浸り続けて特権意識を持った結果、意識高い系以外の人との関わりを持つことが難しくなる。

…そんな意識高い系の人たちの姿を見ていると、自己愛の強い人同士というのは、反発するどころかむしろ打ち解けやすい存在である。そしてお互いの弱点を知っているからこそ、共依存の関係になりやすいのではないか、という仮説を考えるに至った次第です。

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自己愛の強さからくる不安と他人の視線に敏感であることが共依存の関係を誘う

自己愛性人格障害同士での共依存を後押しするのが

  • いつも誰かに評価してもらわなければ不安である。
  • 他人の視線に敏感、他人の期待に応えることが得意。

という、自己愛性人格障害の人に見られる2つの特徴です。

例として、自己愛性人格障害の二人(A,Bとする)がいると仮定し、お互いにこの2つの特徴を持っているとすると

  1. Aが他人から評価してもら得ないことで不安を感じている。
  2. BがAの感じている不安を敏感に察知し、Aを褒めて元気にさせる言葉を述べる。
  3. AはBに褒められたことで不安を解消する。また、BはAの不安を解消させたことで、自分は他人から見て評価されていると感じる。

という、関係が生まれます。

もちろん、これだけを見れば「誰かが落ち込んでいてそれを支える」という、理想的なコミュニケーションであり、およそ共依存というような重く苦しい関係とは全く違うものでしょう。

不安定な自尊心をお互いに支い合う共依存関係

しかし、ここに自己愛性人格障害の人がもつ

  • 批判や指摘、怒られることが苦手。

の特徴が加わることで、冒頭でも述べたように自己愛の強い人同士があつまり、お互いの肥大化した自尊心が傷つかないように、ベタ褒めばかりする馴れ合いの関係が生まれます。

持ち前の顔色を伺うスキルにより、相手が指摘をされるのは嫌がっていることは理解しているし、自分もまた指摘をされるのは好んでいない。

そのため、お互いにお互いを大げさに褒め合い、耳が痛くなるような指摘や現実的な意見を口にしないという、不安定な自尊心をお互いに支い合うことを目的にした共依存の関係に陥るのです。

自尊心が傷つきそうな出来事がことがあったら、すぐさま励ますなり、指摘をしてくる人に「アンチ」などのレッテルを張るなどして、相手の自尊心が壊れないように懸命に支える。その結果として、肥大化した自尊心はポッキリ折れる可能性こそ少なくなりますが、

  • 肥大化した自尊心を適度なものに修正できていない状態のまま放置される。あるいは、余計に自尊心が肥大化してしまい、些細なことで傷つきやすいメンタルになってしまう。
  • 傷つきやすさに拍車が掛かって、自分を支えてくれる人以外の人間関係を築くことが難しくなる。結果として付き合える人間関係の幅が狭まり、余計に今の関係にしがみつくハメになる。

などの問題が起きてしまい、共依存の関係から抜け出すことが難しくなるのです。

不安定な自尊心をお互いに支い合う関係の危うさ

自己愛性人格障害の人の言動は、傍目には自信満々に見えて、不安や心配事なんて全く無さそうに見えるものですが、その裏では理想の自分と現実の自分とのギャップが激しく、情緒的な不安定さが隠れているものです。

過度に指摘や批判されることを恐れたり、怒られて恥をかくことを嫌がるのは、それらが自分の自尊心を傷つける恐れがあるものとして強く感じていることが原因です。

そんな不安定な自尊心が傷つけられる恐怖に対処する方法として、お互いにお互いが不安定な自尊心を支えあう関係を築く。そして、その関係を何としてでも維持するためには、多少辛辣でも言わねばならないことを言ってしまい、相手の自尊心を砕くような事態になる事は絶対に避けなくてはいけません。

もしも、相手の自尊心を打ち砕こうものなら、今度は自分の自尊心が危うくなった場面で支えてくれる人がいなくなる恐怖に悩まされるので、やたら褒める、ネガティブなことは口にしない、都合の悪いことが起きても当たり障りのない言葉を口にして穏便にやり過ごすなどして、お互いの不安定な自尊心が傷つかないように支え合うのです。

ただし、この関係は冷静に見れば、相手を褒めて煽てて付け上がらせたり、反省するべき場面で反省を促さず余計に勘違いした行動を取るように仕向けているとも言えます。

何があっても相手の自尊心を支えた結果、相手がおかしな行動を取るようになり、より生きづらさを覚える状況に追い込まれる事態になることを結果として後押ししている。そして、自分もまた褒められ、煽てられ、付け上がってしまうことで、生きづらさを覚える状況に突き進んでいるに過ぎません。

お互いがお互いの肥大化した自尊心に振り回され、お互いがダメ人間製造機と化してダメ人間になっていっても、そのことに気づけないままになる。これこそ、自己愛性人格障害の人同士の共依存関係の恐ろしさだと感じます。

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参考書籍

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