自己愛性パーソナリティ障害を始めとして、自己愛の強い人は表面的には自分をよく見せることが上手であるため、その魅力に惹かれた人と恋に落ちることがあります。
自己愛が強さゆえに、やたら社交的でガツガツとした肉食系の性格をしているため、男女関係なく一定の人に支持されるだけの魅力を持っている人でもあります。
しかし、自己愛の強さが災いし、恋愛関係においては恋人をぞんざいに扱うような態度を取ってしまったり、まるで恋人を自分の子分のように扱ってしまい、DVやモラハラに発展しかねない危うい性格の持ち主でもあります。
綺麗な花にはトゲがあるように、表面的な魅力ばかりを見てお近づきになってしまうと、自分が痛い目を見る可能性があるため、用心するに越したことはない相手といえます。
今回は、そんな自己愛の強い人の恋愛の特徴についてお話致します。
自己愛が強い人の恋愛の特徴
自分がマウントを取られない相手を恋人にしたがる
自己愛の強い人は、あらゆる人間関係を対等なものではなく上下関係で見る傾向があります。
- 「自分と関わる人は自分よりも格上なのか?格下なのか?」
- 「マウントを取れる相手か?それとも取られる相手か?」
と、自分と他者との立場関係に敏感であると同時に、自分の方が格下の存在になることを極度に嫌がる人でもあります。
こうした考えは恋人に対しても同じであり、自分の恋人があらゆる場面で自分より格下である、あるいは上回る心配がないような人を恋人にしたがる。つまり、マウントを取られる危険性がなく、自分の意のままにコントロールしやすい相手を恋人に選ぶ。「自分は恋人よりも優れている」という関係を築くことで、自己愛を満たそうとするのです。
なお、「自分を見下してなんて失礼人なんだ」と反発する勢いがある人は、自己愛の強い人のターゲットになっても逃れることが比較的容易です。
しかし、自己肯定感が低くて自分をぞんざいに扱う人の方が安心感を覚えてしまう人や、自己愛の強い人が持つカリスマ性に半ば心酔している人は、自己愛の強い人のターゲットになっても、なかなか逃れれらないままの状態になりがちです。
恋人を自分の引き立て役として利用する
マウント云々に通ずるものでもありますが、自己愛の強い人は恋人を自分よく見せるための引き立て役として利用することが目立ちます。
例えば、恋人の方が学力やコミュ力などの本人の能力と呼べるものが低ければ、その分能力の高い自分の有能さが際立たせて周囲からの注目を集めることが可能になる。
また、能力が低い恋人に対して優しく接すれば「能力が低くて見下されがちな人に対して優しく寄り添える」自分を演出することでも、自分をよく見せられます。
いずれの場合も、恋人を一人の人として尊重せず、あくまでも自分をよく見せる引き立て役として利用しているため、傍から見ていると仲が良さそうに見えるも、どこか後味の悪さ残ってしまう関係に見えることがあります。
恋人に対して自分の要求や願望を一方的に押し付けようとする
自己愛の強い人は「自分は特別な存在である。だから、周囲の人は自分の要求や願望を自然と受け入れてくれるに違いない」という、独特の思考の癖をもっていることが目立ちます。
- 恋人だからこそ、自分の身の回りの世話をしてくれるに違いない。
- 恋人だからこそ、いつでもおごってくれたり、プレゼントをもらえるに違いない。
- 恋人だからこそ、自分の無理なお願いを聞いてくれるに違いない。
など、自分の願望を一方的に押し付けてしまい、恋人の精神や財布に負担をかける関係になる。言い方を悪くすれば、恋人から愛情、金銭、時間、労力を搾取するような関係に陥ってしまう危うさがあります。
ただし、自分から恋人に対してプレゼントをすること等は少ない、あるいはプレゼントをしても簡素なモノや上辺だけの感謝の言葉にとどまり、自己愛の強い人の方があらゆるものを多く受け取っている関係になります。
なお、恋人の方が「せっかく付き合ったのだから別れるわけにはいかない…」と、関係解消に難色を示している場合は、より自己愛の強い人が増長する原因になります。
自分を棚に上げて恋人をしつこく非難する
上でも触れたように、自己愛の強い人は様々なトラブルを起こしますが、それを指摘されることは肥大化した自尊心がひどく傷つくため嫌がります。(何より、指摘をすると「マウントされた」とするので、指摘させないように威圧することもある。)
加えて、散々指摘されてもおかしくないことをやっているのにもかかわらず、自分のいたらなさを棚に上げて、恋人に対してとにかくマウントを取るかごとく、非難や指摘を繰り返す。
そして、恋人の自己肯定感や反骨心を削いでいき、確実に自分が支配出来る相手になるように接していくことがあります。(その様子は、さながらマインドコントロールのようである)
なお、自己愛の強い人から見て、自分のわがままが許される状況は「自分は特別な存在だからこそ、その後始末や尻拭いを恋人にやらせても問題ない。むしろ特別な存在だからこそ、多少のわがままを求めて何が悪い?」と解釈することもあります。その思考の癖は、さながら独裁者のようです。
自己愛が強い人が恋愛で起こすトラブル
いつも自己愛の強い人ばかりが恋人から承認・賞賛・プレゼントなどを搾取するという、不均衡でつらい恋愛関係に陥ることから、後述するようにモラハラ、DV、精神的な依存など、深刻な問題を引き起こすこともあります。
恋人を恐怖でコントロールしようとする(モラハラ、DV)
「自分を棚に上げて恋人をしつこく非難する」のところでも触れましたが、恋人から指摘を受けないように、高圧的な態度を取って恋人に恐怖心を植え付けようとします。
具体的には揚げ足を取って貶すような言葉を口にしつつも「そんな貶されるべき存在であるお前を認めているのは自分だけだ」と寄り添う。
他にも、収入、学歴、社会的地位など、自己愛の強い人の方が優れている点を強調して上下関係をはっきりさせ、自己愛の強い人に精神的に逆らえないような状況を作るなど、言葉・態度・状況により恋人を支配下に置こうとします。
こうしたいびつな関係が進展すると、モラハラやDVに発展してしまう。しかし、被害者となった人は既に恐怖心を植えつけられているため、自己愛の強い人のもとを離れたくても離れられず、なし崩し的に苦しくつらい関係に付き合い続ける羽目になります。
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内面の不安定さから恋人に精神的に依存する
自己愛の強い人は、傍目には自信満々で不安や悩みなんてあるようには見えないことがありますが、その内面は非常に脆い。まさに「豆腐メンタル」のように、些細な出来事でボロボロと崩れやすい、不安定なメンタルの持ち主でもあります。
上でも触れたように、人間関係は常に「格上か、格下か」と、緊張感に苦しむ物の見方のせいで、普段から精神をすり減らしがち。そして、そんな磨り減った精神を癒してくれる役回り、自分が安心出来る居場所を、恋人に求める傾向があります。
自己愛の強い人から見れば、恋人は自分の自尊心が脅かされることがない(と感じている)唯一の安心出来る存在。しかし、一方で恋人が自分のもとを離れてしまったり、自分の知らない人間関係を持つことになれば、自分の安心できる居場所を失い、辛くて優しくない環境で生きていく恐怖がある。(といっても、それは自己愛が並の人から見た、ごく普通の現実の人間関係だけれども…)
この恐怖をなんとしてでも避けるためにも、自己愛の強い人は恋人を束縛し、独占しようとするのです。
不安定な自尊心を恋人に支えてもらわなければ、自分が不安に押しつぶされてしまう。そうならないためにも、恋人に精神的に依存すると同時に、恋人の自由を奪い自分の支配下に置くのです。
自己愛の強さがトラブルにならない限りは問題ない
最後に補足ですが、自己愛の強い人と恋愛は、お互いのうちどちらかが苦しさや生きづらさを感じていない限りにおいては問題ありません。
現に、自己愛性パーソナリティ障害の特徴を持つ人でも、上手く社会適応できていたり、当の本人や関わる人が苦しさや生きづらさを抱えておらず、問題なく社会生活が送れている例もあります。
あくまでも人間関係においてトラブルを起こしておらず、「ちょっと自己愛が強い人」と一種の個性として済まされている場合においては問題はありません。しかし、どちらか一方がモラハラなどで傷ついていたり、恋人関係でいることに辛さを感じている場合は問題があると捉えるのが賢明です。
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