共依存の関係と言えば、DV(ドメスティックバイオレンス,家庭内暴力)を振るうパートナーと別れるに別れられない人のことを想像する人が多いと思います。
しかし、共依存に陥るのは必ずしも男女間の関係、恋人や夫婦関係に限らず、親子関係、友達関係、仕事の上司と部下の関係など、あらゆる人間関係で起こり得るものです。
人間関係の和や協調性を尊ぶ日本人の国民性の影響か、滅私奉公という言葉にあるように自分を犠牲にしてまで他人に尽くすような人間関係がお手本とされ、知らず知らずのうちに自分が共依存関係に陥り苦しい関係を断ち切れずにいる…と言う悩みを抱いている人は、珍らしくないものだと感じます。
今回はそんな「共依存をやめたい」と悩んでいる人に向けて、共依存の克服の方法についてお話しいたします。
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目次
まずは自分が共依存だと自覚することから始める
共依存は、アルコール依存症やギャンブル依存症など、いわゆる依存症の一種として分類するされます。
心理学で言う依存症には、
- 物質への依存:アルコール依存、タバコ依存(ニコチン依存)…など
- 人間関係への依存:共依存、家族依存…など
- 行為(プロセス)への依存:ギャンブル依存、仕事中毒(=ワーカホリック)、ゲーム依存…など
の3種類あり、共依存も立派な依存症の一種です。
これらの依存症の治療欠かせないのは、まずは自分が依存症に陥っていると自覚することです。
例えば、アルコール依存症の人が「自分はアルコール依存症ではない!」と言い続けており、現実を否認しているばかりでは、自然と依存症の治療に取り組む事はありません。
当の本人が「自分はアルコール依存症ではない」と認識しており、治療は必要ないと考えているからこそ、治療されないまま症状が悪化してしまうのです。
そうならないためにも、まずは自分が依存症に陥っていると言う現実をしっかり認識すること。自分が治療が必要な状態にいることを理解することが、アルコール依存症の克服の初期には重要です。
これと同様に、共依存関係に陥っていると薄々感じている人も、はっきりと「自分は共依存の関係に陥っていて苦しい状態が続いているのだ」と今の自分の状況を冷静に受け入れて、共依存を克服するための第一歩を歩むことを心がけるのが大事です。
なお、余談ですが「共依存」という言葉は、アルコール依存症の夫を支える妻の関係がルーツです。
夫は自分の不始末や世話をしてくれている妻に依存している。妻は夫の世話をすることに充実感を抱いており精神的に依存している。
つまり、お互いがお互いを必要として依存している状態であり、支援者がこれを「共依存」と表現したのが始まりとされています。
依存している相手と一緒に克服しようとしない
共依存をやめたいと感じている人に見られるのが「自分が依存している相手と一緒に共依存を克服したい」と言う願いです。
依存している相手が、友達、恋人、家族のように、自分にとって大切だと感じている人であれば、その人と一緒に共依存状態を抜け出して、お互いに幸せになるようになれるように望むこと自体は自然なことといえます。
しかし、共依存を克服するためには、依存している相手と一緒に克服するのはたいへん難しいこと理解することが大事です。
共依存はお互いの距離感が近すぎるために、精神的に依存してしまい苦しい関係になっている状態を指します。そんな状態において「一緒に共依存を克服する」と言う考えは、適度な距離感を取れているとは言えません。
一緒に克服しようと言う願望は、共依存関係から抜け出して自立した生活を送る事とは全く正反対の状態に自分を追い込みかねない。すなわち、共依存関係を断ち切れず、そのまま関係を維持させる、あるいは悪化させるリスクがあります。
相手と適度な距離を取って精神的に自立できるようになるためには、相手を裏切ることになるかもしれませんが、まずは相手に構わず自分が自立することを目標にしていきましょう。
心理カウンセラーや共依存の自助グループの協力を得ることも検討してみる
共依存を克服するためには、依存している相手との適度な距離感が保てるように、相手と会う頻度を少なくすることや、場合によっては関係を解消する(別居、離婚、恋人と別れる…など)が必要です。
しかし、それらを全て1人で行うのは難しいものですし、何より心細さや不安が募ることで「やっぱり共依存の方が心地が良い」と感じて、挫折を招く原因になります。
このような事態を防ぐためにも、心理カウンセラーや共依存の自助グループなど、専門の知識や経験を持った人たちの協力を得て、共依存を克服していく事も検討しておくことが大事です。
また、各都道府県に設置されている精神保健福祉センターも、共依存の悩みを相談する場所の候補の1つです。
自分が共依存に陥った背景や原因についても調べてみる事を忘れずに。
依存を克服する上では、自分が共依存関係に陥ってしまった背景・原因についても調べてみることが重要です。
たとえば
- 親がアルコール依存症であり親の世話をする生活が当たり前だった、ネグレクト(育児放棄)で親の愛情が十分ではなかったなど、自分の家庭環境に問題があったため、共依存の関係になっていることに自覚できない自分がいた。
- あらゆることに不安を感じやすく、他人に依存しやすい性格・気質が災いして、何事も自分で決められないまま大人になってしまい、友達、恋人、職場の人と共依存に陥った。
- 人恋しさを感じやすく、孤独に苦しむぐらいならいつも誰かと一緒が良いと言う感情に支配されていた。
- 他人から認められることに飢えており、つい暴力を振ったり乱暴な言葉遣いをする人の後始末のような役割であっても、その働きを周囲の人やパートナーから褒められることで充実感を感じている自分がいた。
- 他人の無理なお願いを断れない優しさ、責任感の強さ、そして自己犠牲を厭わないことこそ自分らしさ(アイデンティティ)だと自負していたが、その自負が災いし自己犠牲を強いられる自分を大事にしない相手との関係でも、やめるにやめられず苦しむ羽目になった。
…など、ただ共依存をしていた相手やその時の状況だけに目を向けるのではなく、そうなるに至った自分の性格や生育環境、思考の癖などについても知っておくことが、共依存を再発させないためには欠かせません。
なお、こうした自分の見たくない部分を振り返る作業は、精神的にも辛いものがあり、そう簡単には行えないものでもあります。
振り返ることに辛さを感じている場合は、時間をかけてゆっくりのんびりとやるようにしてみたり、上でも触れたように心理カウンセラーをはじめとして専門的な知識を持った人たちの協力を得たり、図書館で共依存に関する書籍やエッセイを読むなどして、自分のことを冷静に分析してみるようにしましょう。
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