前回の記事で紹介したハロー効果には、あるひとつの特徴を元にその人の印象を全て変えてしまうという人間の心理を指す言葉です。
高学歴なだけで、勉強以外の私生活や趣味、性格や交友関係までも素晴らしいものに違いないと感じるのがいい例です。
冷静に考えれば、高学歴だからといって勉強以外の全ての分野において秀でていると決め付けることは、少々無理な話しであることはご理解いただけると思います。
また、ハロー効果には
- ポジティブハロー効果:ある特徴をもとに良い印象を与える
- ネガティブハロー効果:ある特徴をもとに悪い印象を与える
の2種類あり、とくに採用や人事などの仕事の場面で評価を受けるときに、良い意味でも悪い意味でも影響を受けてしまいます。
もちろん、自分をよく見せるためのアピールそのものを否定しているわけではありませんが、想像以上に自分を良く(or悪く)見せたことが原因で、他の人から「公平な評価ではない」と言われたり、身内贔屓を招いてしまうことがあります。
なるべく、ハロー効果のようなバイアスがかかった状態に陥らないようにすることは、
採用・人事におけるハロー効果
就職・転職活動・昇進・昇給などの誰かを評価・判断する立場の人は、ハロー効果によって現実離れした評価を下さないように気をつけておくことが大事です。
知らず知らずのうちに公平さを欠いた評価を下してしまったり、相手に対する過剰評価や拡大解釈を招いてしてしまう恐れがあります。
ポジティブハロー効果による影響
ポジティブハロー効果により、相手のある特徴を元にして現実とはかけ離れた勘違いしてしまい、過剰評価をしてしまうことがあります。
例えば、就職活動で「体育会系の部活動に所属しており全国大会に出場した」エピソードを聞けば、そのエピソードに心を打たれて、さもその人が実務でも優秀そうに見えてしまうことは、ポジティブハロー効果によるものです。
もちろん、部活同で立派な活躍を残したことは素晴らしいですが、だからといってその経歴を元にして、スポーツとは関係のない事柄までも「素晴らしいに違いない」と考えてしまうのはバイアスのかかった見方です。
何か一芸に優れているからといって、その一芸だけでその人の全てを判断することは、客観性に欠けた判断になります。
ネガティブハロー効果による影響
ネガティブハロー効果により、たった一つの欠点を元にしてその人を過小評価しすぎてしまうことがあります。
例えば、採用する場面で相手が太っていることを材料にして
- 私生活はだらしがなく仕事をやっても怠けるに違いない。
- 家庭で甘やかされて育ってきただろうから、働いても続かないだろう。
- 自分に甘いから、期限や約束事を守れず放置しそうだ。
と、太っている体型を元にして、様々な悪材料を考えてしまうのがネガティブハロー効果です。
もちろん、太っているから仕事ができない人がいないわけではありませんが、かと言って太っているという一面だけを見て、何もかもわかったように判断することは、冷静に考えれば客観性に欠けた判断になります。
また、ネガティブハロー効果はしばしば差別、偏見(ステレオタイプ)、レッテル貼りにつながりやすい考え方であり、自分では正しく評価したつもりでも、相手からすれば単純に嫌がらせを受けたと感じ取る事もあります。
ハロー効果に影響されないための対策
自分と仲がいい人だからといって、その人の全てをなんでも好意的に解釈するのもハロー効果の一種です。
しかし、仕事においては仲が良いからといって公私混同した評価を下せば、他の仕事仲間への不満やモチベーションの低下を招いたり、馴れ合いや身内贔屓を招く恐れがあります。
それらを防ぐための対策に付いてまとめました。
ハロー効果の影響を受けないルールを作っておく
ハロー効果で相手を過大(過小)評価しないためには、ハロー効果の影響を受けないようなルールを決めておくことが大事です。
例えば
- 学歴、見た目、過去の経歴だけで判断しない。
- 長所も短所も含めて総合的に判断する。
- 経歴は経歴で、職務に必要なスキルはスキルで別々に評価する。
などの、ルールを作っておくことで、よりバイアスを減らした評価ができるようになります。
人から評価されやすい目立ちやすい個性や特徴がある人は、それだけでポジティブハロー効果が働き過大評価してしまいがちですので、それらの個性だけで何もかも高評価を下さないために、いい面も悪い面も総合的に見て判断することは大事です。
インターン等で時間をかけてゆっくり判断する
第一印象や一回の面接でその人のことを判断するのではなく、インターンシップや試用期間などを用いて時間をかけて判断していくことでハロー効果によるバイアスを伏せことができます。
時間をかけてその人を見ていくうちに、自己アピールで聞いた経歴の化けの皮がはがれたり、第一印象ではそこまで目立った長所が見えなかったものの、一緒に働いていく中で礼儀正しさや人への気配り、育ちの良さなどの面接ではわかりにくい信用できる材料が見つかり、いい面も悪い面も含めて総合的に判断することができます。
なお、多くの人を短時間で評価しなければいけないという場面になればなるほど、人間は「太っている」などのわかりやすいステレオタイプを元に判断する傾向があります。
ステレオタイプは、偏見や差別を招くデメリットがある一方で、その人の判断や評価にかかる時間を減らして効率的にするメリットもあるので、とくにたくさんの人を評価しなければいけない人だと、多様せざるのも無理はないとも見ることができます。
複数人で話し合って決める
一人を評価するとなると、どうしても評価する人の好き嫌いや共通点(出身地・出身校など)に引っ張られて、良い方にも悪い方にも評価が傾きがちです。
それを防ぐためには、複数人で話し合って評価したり、なるべく意見に偏りが出ないような人選で相手を見て判断することが効果的です。
なお、心理学では集団極化という用語があり、これは人間は集団になると意見が極端なものに偏りやすくなる傾向を指した言葉です。
複数人で話し合うことでハロー効果は防ぐことができますが、話し合いが極端になって保守的or革新的な意見に偏ることもあるので、上にあげた策も同時に行うことが効果的です。
ハロー効果を使う側の人が気をつけるべきこと
もちろん、ハロー効果を利用して自分を良く見せるために身だしなみを整えたり、自分の経歴をしっかり話すというイメージ戦略そのもの否定しているわけではありません。
しかし、自分を良く見せすぎたせいで現実離れしたイメージを持たせてしまうと、そのイメージに合わせるために精神的に消耗したり、イメージに通りにならなかったことで周囲から失望されてしまうリスクがあります。
相手にうまく使うためには相手に合わせる
ハロー効果によって自分をよく見せたいと思ってもアピールしても、そのアピールが必ずうまくいくわけではありません。
自分をよく見せたいという願望が強すぎたせいで、「自分はこんなに素晴らしい才能があるんです!」という承認欲求全開の独りよがりの経歴自慢になってしまっては、アピールを聞く側に呆れられてしまうのも無理はありません。
ハロー効果を使って自分をよく見せたければ、ただの自分語りではなく相手が求めていることや望んでいる事に話を寄せていくことが重要です。
ポジティブハロー効果による評価は「水増し」状態と理解する
ポジティブハロー効果により自分をよく見せることが成功したと感じたときは、その評価はあくまでも水増しされた評価だと理解しておくことも大事です。
一発屋芸人のように、大ブレイクして知名度や評判がうなぎのぼりになった人たちが、自分の実力を勘違いしてその後仕事が激減したり、それ以外の芸を作っていなかったために落ちこぼれて行く光景を見れば、自分をよく見せたことで過信や慢心をすることの恐ろしさを理解できると思います。
想像以上の評価が得られた場合、そのことに気を良くして調子に乗りがちですが、「勝って兜の緒を締めよ」ということわざにもあるように、気を緩めず引き締めておくことは、自分のキャリアを短命で終わらせないためにも大事なことです。