普段会話をしている中で、なんとなく相手が自分を下に見ているような発言をしている、さりげなく自慢してきたり「どう、羨ましいでしょ」とでも言いたげな口調で接してくる。
表面的には和やかな会話のはずなのに、いつしかどちらが格上or格下であるかをはっきりつけさせることに夢中になるマウントをとる会話というものは、していてあまり楽しいものでは無いと思います。
今回は、そんな会話におけるマウントの種類、そして各種マウントの特徴、それをする人の心理や思惑などについて、お話しいたします。
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会話におけるマウント取りの種類と各種マウントの心理に関する考察
年齢に関するマウント
年齢に対するマウントは若さを競うものもあれば、逆にどれだけ年上かを競うものもあります。
若さに関するマウントが年齢的に厳しくなったとした場合、今度は年齢を重ねていることを利用して同様にマウントが取れるため、とにかくマウントを取りたがる人からすれば、好都合なネタと言えます。
また、「年齢によらず若いor老けている」「年の割には落ち着いているor落ち着きがない」など、ただ年齢という数字でマウントをとるだけでなく、そこから受ける印象をネタにしてマウントをとれるなど、応用の効きやすさがあります。
出身地、居住地に関するマウント
自分の出身地や居住地に関する情報は、普段の会話や初対面の自己紹介の中で話題に出しやすいとの同時に、マウントする材料として利用しやすいものです。
わかりやすい例を言えば、都会出身者が田舎出身者を「田舎者」として下に見る。逆に、田舎出身者が「都会の人は冷たい」として下に見ることは、あるあるな話でしょう。
どちらか一方がマウントされっぱなしというわけではなく、双方マウントの取り合いができてしまうため、マウント合戦に拍車がかかりやすいものです。
また、出身地が同じであっても、出身地の中で都市部の出身の人と田舎出身の人とがマウントし合う、町内単位・校区が違う者同士でのマウントの取り合いなど、大まかに言えば同じ出身地だからこそ知っている文化・風習を題材にして、(表面的には穏やかに見えて)激しいマウントを取ることもあります。
学歴、頭脳、知識など賢さに関するマウント
出身校、成績。偏差値、勉強に関する資格の有無や英会話能力など、賢さに関する話題もマウントに使われやすい話題の代表です。
クイズ番組のように「これ知ってる?」「これわかる?」と質問責めにして、相手に「わかりません」という言葉や態度を引き出すことに成功すれば、相手の(ある特定分野での)無知を白日のもとに晒せる。
同時に、その無知に対して知識を授けるという名目で、(ただ個人的に自分の賢さを自慢して周囲から注目を浴びるための自己中心的な行為を正当化して)堂々とマウント取りに行けるという、厄介さが際立ちます。
しかし、賢さでマウントするときに付きまとうのが、自分がマウント取りで利用する知識や情報の正確でなければ「知ったかぶってマウントを取る痛い人」のレッテルを貼られてしまい、見下されてしまうリスクです。
自分の専門外の分野の話に首をつっこ無と同時にその分野の専門家面をしてマウントを取ると、非常にボロを出しやすく、逆にマウントを取られやすいという特徴もあります。
仕事、収入など社会的・経済的豊かさに関するマウント
有名な企業で働いている、恵まれた職場で働いている、収入面や待遇が優れている、安定していてやりがいのある仕事が出来ている…など、社会的・経済的豊かさに関する話題も、マウントのネタとしては鉄板でしょう。
仕事・お金という、ほとんどの人の人生の大半において関わりのあるネタであり、それこそ、年齢・性別・国境を無視して多くの人にマウントが取れる。
ただし、ほとんどの人に関わりがあるネタであるため、それだけ自分がマウントを取られる側になるというリスクも高く、自分がいつも頂点にいられるとは限らない話題でもあります。
また、マウントをとって調子に乗ること自体が、自分の社会的信用を落としかねなリスクもあるので、無闇にマウントのために話題に出すのはハイリスキーと言えます。(現代なら、炎上案件にならないとも言いきれない。)
運動神経、身体能力、体力や健康面に関するマウント
学生をはじめとした若い人、あるいは年齢を感じさせないほどの体力を持っている人に多いのが、自分の身体能力や健康に関する話題でマウントをとることです。
走るのが速い、運動神経が優れている、健康体で皆勤賞をとっていたなど、老若男女から受けが良いネタであること。そして賢さ、社会的地位、経済的豊かさに恵まれていない人でも、容易にマウント合戦に参戦しやすく、注目を浴びやすいネタと言えます。
なお、健康かどうかはさておき「寝てない自慢」「運動不足自慢」「自堕落な食生活でも大丈夫自慢」など、自分の健康を犠牲にすることでもマウントを取れるのが特徴的です。
一見すると、自分のタフな体をアピールしているようには見えるものの、やはり健康を犠牲にしているほかないネガティブな話題でもマウントをとってしまい、悦に浸れてしまうのが、このマウントの皮肉だと感じます。
友達、恋人、家族、親戚など人間関係の豊かさ、幅広さに関するマウント
友達自慢、子供・家族・身内の自慢、人脈自慢など、自分がどのような人間関係を持っているかについてマウントすることも、会話においては多いものです。
人間関係に関するマウントは、自分の交友関係の広さ、有名人とのつながりという稀少な関係を持っていることをアピールするにおさまらず、そんな人と関わりのある自分の魅力や評価を上げることも可能です。
しかし、よく見ていくと、あくまでも自分と関わりのあるすごい人を自慢しているだけでしかなく、自慢している本人はすごいともなんとも言えずに微妙である。それどころか、自慢している様が滑稽に見えて、見ているこっちが恥ずかしさを覚えてしまうことも多く、マウントの取り方としては決して安全とは言い難いものがあります。(はたして、安全なマウントがあるかどうかはこの際置いておくが…)
「人の褌で相撲を取る」ということわざにもあるように、他人の権威や栄光に便乗しており、自分を大きく見せていることがバレやすく幻滅されやすい。
仮にマウントを取るにしても、自慢する人に恥をかかせないだけの社会的地位や魅力がないと、小物感が出てしまい冷ややかな視線を集めてしまう原因になります。
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自分の趣味に関するマウント
アニメや漫画に限らずある特定の趣味を嗜んでおり、いわゆる「オタク」と呼ばれる人に多いのが、自分の趣味に関するマウントです。
上で触れた賢さにも関わることですが、
- 自分がどれだけの幅広くそして深い知識を持っているかをひけらかす。
- 重箱の隅をつっつくかのように些細な間違いや記憶違いに指摘を入れる。
- 趣味の世界の初心者に対して先輩ヅラをする。
- ほかの人の趣味に対して尊重の姿勢を持てず、自分の趣味の方が格上だと言わんばかりにこき下ろす。
- 趣味を持たない人を見下す。
など、ほかに趣味を楽しんでいる人の評判まで落としかねない、風評被害を招く迷惑なマウントになるおそれがあります。
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病気、不幸、恵まれない境遇をネタにしたマウント
失恋、貧困、借金、大事な人との別れ、いじめ、不登校、大病、メンタル面の病気…など、自分に起きた不幸なネタも、会話の中にそれとなく取り入れて、マウントに利用されることがあります。
不幸なことをネタにしているため、周囲から同情や慰めといった温かい言葉を集めやすく、効率よく自分に注目を集める事が可能。
また、何らかの被害者であるというポジションを獲得できれば、そのポジションを利用して自分の要求を他人に飲ませて、人をコントロールしやすいのも特徴的です。
加えて、不幸を口にしている人に向かって「それは不幸自慢で、本当はかまって欲しいでしょ?」とは言いにくく、不幸自慢をしてくる人のペースに巻き込まれてマウントを取られやすいのも特徴的。
しかし、もしも同じような不幸な経験を持っている人と出くわすと、どちらがより不幸であるかを自慢するという、第三者から見るとあまりにも近寄りがたい見るに堪えないマウントの取り合いが起こりやすいのも特徴的です。
(なお、余談ですが、漫画『ちびまるこちゃん』で家事に遭った永沢君は、まさに不幸マウントのよい例です。)
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悪さ・不良自慢など、倫理的に認められないネタによるマウント
昔はヤンキーで喧嘩、万引き、珍走暴走行為、弱いものいじめ、教師や親に反抗的な態度を取っていた…など、いわゆる「昔は悪かった自慢」をして、まっとうに生きている人に対してマウントを取ることです。
本来なら恥ずべき話題であり、およそ誇らしげに語れるようなものではないことすらも、まっとうに生きている人に浴びせかけてマウンティングに利用する点では、この記事で触れた各種マウントの中でも異質さが際立ちます。
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