愛されたい、受け入れられたい、認められたい…など、他者から自分が承認されたいと思う欲求は、人間なら誰もが多かれ少なかれ持っているものであり、子供も例外ではありません。
特に、子育てにおいては子供の承認欲求を満たすことは、親子の信頼関係を築いたり、子供の自己肯定感を育む上では欠かせないものです。
ただし、大人と違って子供の場合は、年齢が幼すぎて「承認欲求」という抽象的な概念を理解するだけの知能を持つ発達段階にはまだ至ってなかったり、自分が親からどう認められたいかをうまく言葉で表現出来るだけ語彙力を持ってないことも影響してか、承認欲求が満たされない辛さを一人で抱え込んでしまうことがあります。
今回は、そんな子供を持つ親に向けて、子供の承認欲求を満たすための方法についてお話しいたしします。
子供の承認欲求を満たすには無条件の承認をする
子供の事を認める際にまず気をつけておきたいのが、「○○したらあなたを認めます」というような条件の付きの承認ではなく「たとえ○○しなくてもあなたを認めます」という、無条件の肯定をする事です。
例えば、「勉強をしていい成績を取ったら認めます」という認め方は、子育てではよく見られる認め方かもしれませんが、これは条件付きの承認であり、子供の承認欲求を安定して満たせるものとは言えません。
子供からすれば「勉強していい成績をとっている間は認められるけど、もしも途中でつまづいて成績が落ちたら見捨てられるのでは?」という漠然とした不安を抱えながら生活を送るハメになります。
また、どうしても成績の悪化が避けられない状況になった場合、つい出来心でカンニングをすることで表面的な成績のキープを図る…という、自分のためにならない悪癖が身につく恐れもあります。
このような事態を防ぐためにも「勉強の成績が悪くても、勉強が嫌になっても、あなたの事を認めます」と、成績の善し悪しや勉強の好き嫌いに関係なく、子供を認める姿勢を持つことが大事です。
こうした無条件の承認により、子供は承認欲求が満たされなくなる不安やストレスから解放され、のびのびとした生活を送れるようになるのです。
もちろん、親としては自分の子供に対して
- 勉強ができるようになって、より上のクラスの学校へ進学して欲しい。
- スポーツができるようになって、部活で大きな活躍を残して欲しい。
- 人間関係で上手くこなせるコミュニケーション能力を身につけて、充実した学校生活を送って欲しい。
と、親の愛情とも言い換えできる期待や理想を押し付けることはよくあることですし、それ自体は否定しません。
しかし、いつしか期待通りに自分の子供が育たないことで子供への関心が薄れてしまう。あるいは、期待通りになったときだけは子供を褒めて、そうならないときは無関心になる…というような、条件付きの承認が常体化し、まるで子供に毒を与えるような接し方に発展してしまうと、子供のメンタルに余計な負担をかけてしまう原因になります。
(なお、条件付きの承認のように、子供の心に毒を与えるような育て方は、いわゆる「毒親」と呼ばれる人によく見られる子育ての代表例です。)
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子育てにおける具体的な承認の仕方
子供の話をしっかり最後まで聞く
単純なようで結構難しいのが、子供の話をしっかり最後まで聞くことです。
話の最中に「それって○○だよね」と子供の話を最後まで聞かずに結論づけることもなく、「でもそれって○○だよね」と話を遮って質問をすることもなく、最後まで子供の話を聞く態度を持って、子供が安心して自分のことしっかり話せる状況を作ることが大事です。
子供がどんな感情を持っても、それを受け入れる
子供が自分の事を話す場面において、ひょっとしたら親である自分には受け入れがたい感情を口にすることもあるかもしれません。
好き嫌いに関する話や、聞いてて悲しくなったりイライラしてくるような話をされると「そんな話は聞きたくない!」と、つい言ってしまい、子供との会話を拒絶したくなる衝動に駆られることも出てくるかもしれません。
しかし、ここで子供を拒絶してしまえば、子供は「親から受け入れられるような話をしなければ、自分は受け入れてもらえない」と感じる…つまり「親が喜ぶように建前の自分を演じなければ、自分は認めてもらえない」と感じてしまい、自分のことを素直に話せなくなる悩みを抱えます。
親として大事なのは、子供が自分にとって受け入れがたい感情を打ち明けてきたとしても、それを受け入れる姿勢を持つことです。
子供を励ます・応援する姿勢を持つ
自分の子がうまい事生活を送れていようといまいと、自分の子を励ましたり、応援する姿勢を持つことで、子供をしっかりと勇気づけることが大事です。
もちろん、励ますのは「勉強で上手く行ったとき」のように、親である自分の期待通りの結果が出ているときだけすればいいものではありません。
勉強で躓いている時でも励ましたり、ときには慰めて共感したりして、どんな状況であっても子供を突き放すことなく応援する姿勢を持つ。「自分は味方ですよ」と寄り添う姿勢を持つのが大事です。
よその子と比較せずに、自分の子供の個性を尊重する
子供を認める際は、「うちの子は○○さんの子と比べて△△だから自慢の子です」というような、よその子を比較して自分の子を認めることも、上述した条件付きの承認の一種です。
子供からすれば、○○さんの子と比較して優れているから自慢の子として自分は認められていると感じてしまう。つまり、比較なしのありのままの自分は親に認められていないことで不安を感じます。
もちろん、自慢できる要素に限らず「うちの子は○○さんの子と比べて▲▲だから本当に困っています」と、謙遜としてよく使われる言い方も、間接的に「▲▲な自分のままでは認めてもらえない。○○さんのようにならなきゃ自分は認められないんだ」と言うプレッシャーを子供が抱える原因になります。
よその子との比較関係なく、自分の子供が持っている個性や特徴をしっかり認めて受け入れることを大事にしましょう。
兄弟姉妹関係なく、なるべく平等に認める
もしも、兄弟や姉妹がいる場合はなるべく平等に、そして無条件に認める事を心がけましょう。
「お兄(姉)ちゃんとして、ちゃんと育児や家事を手伝っているから褒める」のではなく「弟(妹)として、兄(姉)に負けないように頑張っているから受け入れる」のでもなく、どの子も一人の人間として尊重する姿勢を持つことです。
また、複数子供がいるとどうしても「長男(長女)が可愛くない」とか「ふたりの目の子供の方が可愛い」と感じて、自分の愛したい子供ばかり優先して愛してしまうこともあるかもしれませんが、こうした不平等な承認の仕方では、愛されない方の子が家庭に居場所を感じなくなり、親子関係にヒビが入る原因にもなります。
具体的な言葉で褒める、認める
最後に子供を褒めたり、認めるときに「すごいね」「よかったね」と、シンプルすぎる言葉ばかりを繰り返していても、子供からすれば「またいつもの反応か…」と感じてしまう。場合によっては「自分の事をしっかり見ていないから、適当でシンプルすぎる反応になるんだ…」と、親に対する懐疑心を強める原因になります。
確かに褒めることで子供の承認欲求を満たすことはできますが、ただ定型句を繰り返されているばかりでは、子供だけでなく大人でも「自分は本当に認められているのだろうか?」と疑心暗鬼になってしまいます。
それを防ぐためにも、なるべく具体的な言葉で褒めることが大事です。特に、頑張っているときのプロセス(過程)を褒める、親だからこそ知っている自分の子の何気ない姿や良さを褒めることを意識してみるようにしましょう。
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