なんとなく恋人として今後の関係を続けていく事に疑問や不安を感じる時期(いわゆる倦怠期)に差し掛かった。
淡い夢を見る時間から覚めて、「やっぱり別れたほうがお互いにいいよね」という雰囲気が漂って来たのを察すると、真っ先に自分から別れを切り出して関係解消に躍起になる人というのは、なんだか見て言て冷たいというか、あまりにも自分本位な人のように見えてしまう。そして、そんな人に心を許していた自分が自分で情けなくなる気持ちに襲われる事もあるかもしれません。
今回は、そんな「振られる前に振る」人の心理について、お話しいたします。
振られる前に振るのはプライドの高さが影響している
振られる前に振る行動の原因としては「プライドが高すぎる」ことが根底にあると考えると納得いくものがあります。(なお、ここでいう「プライドが高い」とは、自尊心、自己愛、理想化された自己イメージの高さと言い換えてもいいでしょう。)
高すぎるプライドが傷つくのを恐れるために、振られるという自分のプライドが傷つくことが濃厚な状況になったときに、あえて自分の方から相手を振る事で、自分のプライドを守ろうとする。
- 振られてから別れる
- 振られる前に振って別れる
どちらも関係を解消する事には変わりはありませんが、その過程において、なるべく自分の高すぎるプライドが傷つかないような方法を選ぼうとするのです。
ただし、関係を解消するにあたって、プライドの高さゆえに
- 自分の非や至らなさを頑なとして認めようとしない。
- 振ろうとしている自分が被害者であるかのような態度をとる。
- 円満な別れを目指すのではなく、手のひらを返したような冷たい態度をとる。
などの、自己中心的で高圧的で冷静さを欠いた別れ方、まるで人を人と見ず、利用価値があるかないかというモノ扱いしている(=見下している)心理を垣間見せる別れ方になり、たいへん後味の悪い気分になるのが特徴的です。
振られる前に振る人が恐れている事
このような後味の悪い別れ方になるようなことは、できれば避けたいものです。
後味の悪さが尾を引き、学校や職場にて変な噂が流れて居場所をなくしたり、嫌なムードを引きずらせて他の人も巻き込むようなことにならないよう、なるべく円満な別れ方を目指したいと思う人が多いものです。
しかし、振られる前に振るという、やや乱暴な別れ方をしてしまう人は、別れた後に起きうる悪影響よりも、自分のプライドが傷つくことを強く避けたいと思う気持ちがあるために、乱暴且つ尾を引きやすい別れ方を選んでしまうのです。
- 別れた後のゴタゴタ
- 別れを切り出されてプライドが傷つくこと
のどちらも恐怖を感じるものではあるものの、プライドの高い人は後者の方をより強く恐れているので、何としてでも避けたい気持ちが強くなる。
では、この場面での「恐怖」とは一体なんなのかについて、詳しく説明していきます。
自分が恥をかかされる場面を恐れている
プライドの高さゆえに、自分が恥をかかされるような場面を強く嫌がる傾向があります。
別れを切り出されるような場面は、言い換えれば
- 自分は恋愛する相手としてふさわしくない、魅力がないという事実を他人から突きつけられる。
- 相性が悪かったために相手に不愉快な気持ちを与えてしまった、恥ずべき点や反省すべき点の多い人間である。
と、強く恥をかかされる場面のように受け取ってしまうからこそ、それを避けたいという気持ちが強くなるのです。
その結果、自分が恥をかくぐらいなら、(もと)恋人に恥をかかせることを選んでしまう…つまり、振られる前に振るという行動に出てるのです。
…なお、そもそも恋愛においては恥をかくことが必須のようには思います。しかし、プライドの高い人は
- 自分の内面を晒す事で感じる恥。(=自分で振る事)
- 自分の内面を晒される事で感じる恥。(=相手から振られる事)
では、後者の方がより強い恥であり恐怖だと感じるために、何としてでも避けようとします。自分で内面を晒すことは自分である程度コントロールできるものの、内面を晒される場合は基本的に他人からされる事なので、自分ではコントロールできない。
それゆえに、ひょっとしたら相手のさじ加減次第で、自分のプライドが粉々になるまで容赦なく砕かれるおそれがあるからこそ、まだ自分でコントロールできる方法で対処することを選ぶのです。
自分の抱く理想化・美化された恋愛像の修正を嫌がる
プライドの高さゆえに、自分の恋愛像もプライドの高さが反映された、やたら理想化・美化された恋愛像をもつ事があります。
一例を挙げるとすれば、まるで自分の恋愛は他の人が羨んで真似したくなるような魅力があるものだと考えたり、華やかでキラキラとしてSNS映えするようなものだと思い込むのがいい例です。
しかし、この恋愛像はあくまでも自分の中で作り上げた願望が投影された幻想・理想の類です。
付き合う方からすればその幻想のあまりに現実離れっぷりにうんざりしてしまう。最初のうちは新鮮味があって楽しめたものの、次第に理想の高さについていくことに疲れてしまい、別れたくなる気持ちに駆られます。
また、恋愛像はプライドの高い人のみが抱いているものであり、恋人の意見や要求を反映し、二人で作り上げたものとは違います。そのため、どちらか一方がいつも要求が満たされる、もう一方は相手の要求に応えてばかりで自分の要求は満たされない‥という不公平感が募りやすいのも特徴的です。
こうした不公平感を修正していくことこそ、恋愛関係を続けていくのには大切なのですが、プライドの高い人は自分の恋愛像を修正することを強く嫌がります。
振られる前に振るのは、自分が抱いている理想の恋愛像が否定されるような相手そのものを否定して、自分の恋愛像は修正しなくてもいいものだという実感を得たい気持ちがあるから、強く相手を否定して、振られるよりも前に振ろうとするのです。
他人から否定・拒絶される経験が大の苦手
高いプライドは、「自分の意見や考えは尊重されて当然である」「自分は特別な存在であり、いつも自分の理想通りに他人は動く」という、自分は世界の中心だとでも言いたげな、自己中心的な考え方が目立ちます。
しかし、こうした考えは社会生活を営む上では他人との衝突を起こす原因になるのは明白です。
自己中心的な態度の強さゆえに、自分の態度を改めるような厳しい意見や否定の言葉をうけることもおきますが、そうした自分への否定・拒絶の声を強く嫌うのもプライドの高い人によく見られる特徴です。
もし、受け入れようものなら、それは自分の考えや主張の否定だけでなく、自分のプライドや人格そのものを自分で否定するかのように感じてしまう。(当然そんなことは自分のプライドが許さない)
だからこそ、自分を否定する声以上の声で相手を圧倒したり、相手が自分を否定しそうな状況になる前に、先手を打って相手を否定する…つまり、振られる前に振るという行動に出てしまうのです。
「振られる前に振る」人のプライドの高さを見抜けないわけ
振られる前に振る人は、このように厄介なプライドの高さを持っていますが、実際にその厄介さを見抜くのは、誰でもできるほど簡単なとは言えません。
その理由はというと
- プライドの高さゆえに、自分を表面的によく見せることは得意であり、第一印象の良さゆえに見抜きにくい。
- 過度に理想化された恋愛像を語るために、恋にロマンや刺激を求める人からすれば好印象を受けやすい。
- 「過度に理想化された恋愛像を語る=それだけ自分に好意がある」と捉えてしまい、惹かれてしまう。
- (自分の理想像を叶える都合のいい他人として)恋人の存在を求めている。他者から必要とされたい、認められたい願望が強い人は、多少自分が苦しくなろうとも、自分を必要としてくれる人に尽くす事を選んでしまう。
…などがあります。
プライドの高さゆえに、表面的には魅力的には見えてしまう。しかし、その魅力は行き過ぎた自尊心・自己愛の強さが反映されたものであり、冷静に見れば違和感を覚えてもおかしくないものです。
しかし、「恋は盲目」ということわざにもあるように、恋に落ちて冷静さをかいている瞬間は、この違和感に気づきにくい、むしろ違和感そのものが恋愛の刺激を引き立てるスパイスとなるために、引っかかってしまうのです。
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