就職や転職で新しい環境に身を置いた時はよかったものの、すぐに仕事が嫌になりやめてしまう人は少なくありません。
新卒にしても、最近では「どんな仕事でもまずは3年耐えなさい」という言葉よりも、
- 「ブラック企業ならすぐにやめるべき」
- 「自分の成長が見込めなさそうならすぐに転職すべき」
という意見もリアル、ネット関わらず見かけるようになって久しいですが、思い立ってすぐに仕事を転々とすることはあまりオススメできません。
心理学では仕事を辞めたがる人の心理について「ハネムーン効果」と「ハングーオーバー効果」という言葉で説明することができます。
今回はこれらの用語も踏まえて、仕事をすぐに辞めたがる人の心理についてお話いたします。
目次
仕事を辞めたがる人の心理
心理学者のボスウェルらが、仕事に関する満足度の違いに関して行った調査により、「ハネムーン効果」と「バンクオーバー効果」と呼ばれる概念が作られました。
「ハネムーン効果」から見る仕事を辞める人
ハネムーン効果とは、新しい環境に身を置くとやる気やモチベーションが高まる事を表す言葉です。
ハネムーンという言葉にあるように、仕事や学校などの新しい環境に身を置くとまるで新婚気分のように気分がハイになり、現状に対して満足感を得やすくなります。
そのため転職をして新しい職場で働き始めてまもない頃は、仕事に対する満足度は高くなり、
- 「転職して良かった」
- 「この仕事を選んで良かった」
- 「新しい人間関係がとても自分に合っている」
- 「待遇や給料も前の職場と比べて満足できる」
と思って、まさに新婚気分同様に有頂天で楽観的になりやすいのです。
「ハングオーバー効果」から見る仕事を辞める人
新しい環境での生活も次第になれて送ると、ハイな気分が抜けてしまい現状に不満を抱くようになります。
これを、「ハングオーバー効果」といい、転職や就職をしてしばらくするとだんだん仕事が嫌になる人によく見られます。
- 仕事を始めた気にならなかったようなことでストレスや不満を感じる。
- 次第に仕事内容に飽きてきて、また転職したくなる。
- 今の仕事に対してやりがいや充実感を感じにくくなり、仕事を辞めたいという気持ちが強くなる。
- 「もっと給料や待遇のいい仕事があるのでは」と欲が出る
これらの仕事を変えたい、辞めたいという欲求もハングオーバー効果によるものだと考えることができます。
ちなみにハングオーバーは英語で「二日酔い」の意味です。
新しい仕事に就いて間もない頃は、まさに酔っ払うように心地よい気分だったのに、時間が経つうちに気持ち悪さや不快感がどっと出てくることから、心理学でも使われているのです。
仕事への不満が強まるほど新しい職場への期待は強くなる
人は現状に飽きたり、行き詰ったときほど、
- 新しい環境に行けば自分は変われるに違いない
- 新しい環境にはもっと刺激的な生活や変化のある暮らしがあるはず
だと、期待や妄想を膨らませがちです。
それは仕事でも同じで、ある程度仕事に慣れてくると何かと考える余裕ができて、転職への欲求や「自分はこのままこの仕事を続けていいのだろうか」と不安になるものです。
ハネムーン効果でも説明したように、実際に転職をして新しい環境に身を置いた当初は新鮮さで気分がハイになっていますが、ただ環境を変えた止まりで自分の考え方であったり、仕事に対する「お客様気分」が抜けなければ、バングオーバー効果により満足感が減り、仕事を変えたくなる欲求が強まります
理想が高い人に見られる「青い鳥症候群」
「自分にはもっとぴったりの仕事があるに違いない」と感じて、転々と職場を変えて行く人は、青い鳥症候群になっている可能性も考えられます。
青い鳥症候群は、精神科医の清水將之が提唱した概念で、理想を追い求めるあまりに現実を直視できず、次々と新しい物を手に入れようとしたり、環境を変えて行く人のことを指す言葉です。
「今の職場に満足せず更に理想を追い求める」と言えば聞こえはいいですが、
- 高すぎる理想のせいでなにをしても満足感を得られない。
- 理想が高すぎるあまり現実的な考え方できなくなる。
- 一つ仕事が長続きせず周囲からの信用を失う。
というようなデメリットもあります。
また、高すぎる理想を周囲の人にもぶつけてしまうとトラブルのもとになります。
理想を高く持つことを強要したり、高い理想を持っていないからと言って周囲を見下したり馬鹿にするような言動をすれば、職場で居場所を失って仕事を辞めたい浴が更に強まる現委任もなります。
青い鳥症候群が提唱された頃とは違い、現代では転職サイトを見れば自分よりも待遇のいい職場の情報が大量に見つかります。
転職サイトもアパートを探すような感覚で希望する条件を入力していけば、自分が探し求めていたまさに理想の職場を容易に見つけること、どこまでも理想が追うことができる一方で、理想に振り回されて何もキャリアを詰めないままの人生になってしまう可能性も否定できません。
求人情報はバイアスが掛かっていることを忘れてはいけない
今や、転職サイトだけでなく、求人に関する情報はネット上で毎日のように更新され、簡単にみることができます。
誰もが知るような大企業に限らず中小企業やベンチャー企業もネット経由でとにかく自分の職場で働いていくれる人を集めるために、バズが起きるような企画をしたり、ついつい「この職場で働いてみたい」と思わせてしまうような広報活動を展開しています。
企業の公式ホームページやブログ、SNSやyoutubeなどをフル活用して、その職場で働いている人の生の声や楽しそうな様子、社内の設備や待遇などの働く人への魅力が検索をすれば簡単に調べることができます。
リアルの世界だけでなくネットの世界でも人手不足で経営が危うくならないために、どこの企業も一緒に働いてくれる人を集めることに躍起になっているとも見れますね。
更に、ネット上では就職や転職だけでなく、独立してうまくいった話や、フリーランスになって自由と収入のどちらも獲得したという話も簡単に見つけることができてしまいます。
フリーランスという肩書きやカッコよさに惹かれて、「私の理想の働き方はきっと会社員ではなくフリーランスに違いない」と思い立って仕事をやめて、キラキラとした生活をSNSで綴っている人を見ると、「羨ましいなぁ…」という気持ちが沸くのも無理はないと思います。
そのような情報が日々更新されネットで簡単に見れることもあって、自分にはもっと適している仕事があるのではという淡い期待や妄想を膨らませやすい時代になっているともみることができます。
しかし、よその職場は働き方の情報をそのまま鵜呑みにするのはオススメできません。
なぜなら、「自分の企業に新しい人を集める」ための情報発信である以上、その情報にはバイアスがかかっており、求人するに当たっての都合の悪い情報は隠されていること可能性があるのです。
ぱっと見は羨ましく見えるような求人情報でも、あえてよく見せるための編集が施されていたり、いい情報ばかりを抽出して載せていることもあります。
またフリーランスも同様で、正社員時代と比較すると確定申告などの手続きを自分でしなければいけませんし、すぐに仕事に結びつかずに貯金とメンタルをすり減らすなど、キラキラとした姿だけではなくドロドロとした辛さもあるものです。
しかし、そういった辛さをアピールしてしまうと仕事に繋がらない恐れがあるので、無理にでも頑張っている自分をアピールして、仕事を獲得するための地道な営業をしているのです。
仕事を辞めたいという欲求に漬け込む人の存在に要注意
ちなみにですが「フリーランスになったら成功した」という話で、フリーランスに憧れる人を囲い込んで情報商材を売りさばくというような、あくどい商売もネット上ではよく見かけます。
「自由」「不労所得」「好きなことを仕事に」などの、ネットワークビジネスやマルチ商法などでも目にしたことがあるキーワードを使ってフリーランスと名乗っています。
しかし、何かの技術や確固たるサービスを売っているのではなく、どちらかと言えば虚業の類で騙しやすい人から金を絞る取るという、フリーランスの面汚しにほかならないやり口であり、そんな人にそそのかされ衝動的に仕事を辞めてしまう人が一人でも減ること祈ってやみません。
また、最近はブログの広告収入で生計を立てるプロブロガーや、youtubeで動画投稿をしてタレントのように活躍するユーチューバーのように、ネットを使って今までならお金にならなかった特技や趣味ですらお金になる時代であり、聞きなれない職業の名前を耳にすることも増えるかと思います。
しかし、聞きなれない職業名に便乗して、いわゆる信者ビジネスや情弱ビジネスのように、儲かる情報というグレーな商材を売ったり、価値があるかどうかわからないコンサルや資格を売りつけて儲ける人たちの存在にも注意を払っておくことが大事だと感じています。