あらゆることに敏感で繊細なHSPの人は、怒られることに対しても苦手意識を強く感じる傾向があります。
もちろん、たいていの人が怒られることに対して苦手意識を抱いているものではありますが、特にHSPの人は怒鳴り声や気迫、周囲から向けられる視線、などの刺激に強く反応してしまい、怒られることに強い緊張を感じます。
ひどくなると怒られる場面から逃げ続けて社会不適応を起こしたり、怒られるような自分が悪いんだと自己嫌悪に陥り、憂鬱な気分が抜けずに苦しむことがあります。
HSPは「怒り」の感情にも敏感する
HSPは先天的な気質です。その特徴としては自分と他人との境界線が希薄であり、相手の言葉を真に受け強く傷つくという点です。
怒られる場面ともなれば、他人の怒りという攻撃的で凶暴な感情を前にして、HSPの人は強く反応することで精神的に消耗しがちです。
そして特に多いのが、怒られているときに出てきた言葉を「自分自身の人格が否定された」と感じてひどく落ち込むと言うケースです。
- 「仕事が遅いからもっと余裕を持ってやりなさい」
- 「なんでミスが起きたのかをちゃんと調べなさい」
などの、仕事に対する注意や指摘を、繊細であるがために自分自身への攻撃や人格否定と感じ取ってしまい、ひどく動揺してしまうのです。
またHSPの人は、怒鳴り声(音)や大勢の人の目(視線)などの刺激に対しても敏感であり、非HSPの人よりも強いショックを受けてしまいがちです。
怒鳴り声や視線を強く感じすぎて過度な緊張から頭の中が真っ白になったり、頭が真っ白になっている状態で「あなたは何で怒られているのかわかってるの?」と質問されて更に緊張してしまいがちです。
そんな経験をしたことで、HSPの人は怒られることに対する苦手意識が強まるのです。
HSPの人が怒られる場面でよくあること
細かい部分にこだわりすぎて仕事のスピードが遅くて怒られる
HSPの人は自身の繊細さを活かして、細かい作業や丁寧な仕事が実力を発揮することがあります。
しかし、その繊細さが仇になって、気にしなくてもいい所にまで気を遣いすぎ進歩が遅れることで、怒られてしまうこともあります。
とくにタイトな締切の仕事の場合は、百点満点を目指した結果進歩が進まず締切を破ることよりも、満点でなくてもいいから締切内に合格ラインまで進めて作業を終わらせることが大事です。
そんな仕事でもHSPの人は完璧を目指しすぎた結果、仕事が遅れそのことで怒られる。
また、怒られている内容が「仕事の繊細さ、丁寧さ」の場合は、自分の個性や長所が否定されたと受け取り強いショックを受ける傾向があります。
些細なミスでも激しく落ち込んでしまう
HSPの人は些細なミスや比較的穏やかな指摘であっても、そのことを針小棒大に感じ取ってしまい激しく落ち込んでしまうことがあります。
非HSPの人なら簡単に受け流すことができるようなことや、そこまで気にならないようなことでも、まるで自分の人生を全て否定されたかのように感じてしまう。そこから転じて自己否定や自己嫌悪に繋がることもあります。
「普通の人が平気なことでひどく落ち込んでいる」自分を意識してしまう為に、自分に自信が持ちづらい。そして、そのことが更なるミスやミスを招くこともあります。
怒られた後の気持ちの切り替えに時間がかかりすぎる
HSPの人は怒られることに強いショックを感じるために、怒られた後の気持ちの切り替えに時間がかかりすぎてしまう傾向があります。
いつまでも「自分が悪い」「申し訳のない気持ちでいっぱい」と自分を責め続けて仕事が滞る。そしてそのことで怒られて更に気持ちが沈む…という、悪循環を招く事もあります。
ミスやミスは過去に戻って取り消すことができない以上、怒られたらなるべく速く気持ちを切り替えて改善点を洗い出したり、気持ちを切り替えて行くことが大事です。
いつまでも過去のことを悔やんでいてばかりでは合理的ではありませんし、これが仕事となればクヨクヨしてい時間を浪費していては他の人に迷惑をかけてしまうリスクがあります。
過度に萎縮して意思疎通ができなくなる
怒られた経験がトラウマになり、怒った人に対して過度に萎縮して意思疎通が出来なくなることがあります。
- 過度に気を使いすぎて急によそよそしくなる。
- 逆に、ご機嫌をとることに夢中になってわざとらしい態度で接してしまう。
などの行動をとってしまいがちです。
怒られた経験がトラウマになっているからこそ、そのトラウマを刺激しないようにしたい思惑で萎縮した行動をとっているのですが、そのことが癪に障って更なる怒りを招くこともあります。
また、萎縮して過度に気を遣うばかりで、改善すべきことが放置されたままの状態でもあるため、これまた更なる怒りを買う原因になりがちです。
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「絶対にミスしてはいけいない」と考えすぎて逆にミスを招く
怒られて辛い思いをしたことがきっかけとなり「絶対にミスしてはいけいない」と考えてしまい、過度な緊張状態のせいで更なるミスを招くことにつながりがちです。
ミスをしないことに越したことはありませんが、人間である以上はヒューマンエラーをゼロにすることはできず、どうあがいてもミスが起きてしまうのは仕方がありません。
また、過度な緊張状態では「あがり症」のように緊張からくるミスを誘発するのも無理はなく、自らミスしやすい状況を招いているとも見ることができます。
なお、怒られた経験やミス経験から「自分は何をやってもダメ」という思い込みのせいで、ミスしないようなことでもミスを招いてしまうことがあります。
これは心理学の「自己成就予言(あるいは、予言の自己成就)」でもあり、「何をやってもダメ」な自分になるように、無意識のうちに自分の行動をコントロールしてしまっているのです。
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ミスを隠蔽しようとする
怒られることに苦手意識を感じるあまりに、また同じようなミスをした時に嘘をついたり、知らないふりをして隠蔽しようとすることがあります。
隠蔽が成功してその間にミスを自分で解決できていればまだマシですが、ミスが取り返しのつかない規模になるまで放置されてしまうこともあり、決して褒められたこととは言えません。
些細なことでちょっと怒られることですら強い忌避感を抱いているため、小さなミスですら隠蔽して放置したほうがいいと考えてしまうが故に、隠蔽することが癖になり嘘を重ねてしまううこともあります。
他人が怒られている光景を見てひどく混乱してしまう
HSPの人は、自分が怒られることだけでなく、自分以外の誰かが怒られている場面を見聞きしただけでもひどく同様することがあります。
自分と他人とを区別する精神的な境界線が薄いために起きる現象であり、日頃から怒鳴り声や大声が飛び交う環境に置かれると強い緊張感を覚えたり、そのせいでケアレスミスを招いてしまうことがあります。
自分以外の誰かが恥をかく場面において、全く無関係の自分までも恥を感じる「共感性羞恥」に通ずるものがあると言えます。
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HSPの人が怒られる場面で少しでも楽になるために
自分の人格が否定されていると受け取らない
言葉を真に受けてしまうために、仕事のミスを自分の人生や人格を否定されていると捉えがちです。
ここで覚えておきたいのが「ミスはミス、自分は自分」と区別し、一緒くたにしないことです。
「怒られているのはあくまでも、自分の仕事のやり方や内容についてであり、自分の生き方や考え方とは別問題である」と、明確に線引きをすることで、怒られた時の言葉をより柔軟に受け止めるようにしましょう。
指摘を謙虚に受け入れて反省と改善につなげる
自分がしでかしたミスで怒られた場合なら、もちろんしっかり反省して再発防止に向けて改善していくことが大事です。
しかし、HSPの人は怒られてひどく嫌な気持ちをした経験ばかりが記憶に残ってしまうせいで、そのあとに大事な反省と改善までこぎつけずまた同じようなミスをしがちです。
怒られたところを直さなければ、また同じようなミスをしてしまい怒られてしまうことは容易に想像できるでしょう。
もちろん怒られる経験はできればしたくないというのが本音でしょうが、ミスで改善・反省すべき所と向き合うことは時間をかけてでもいいからきっちり行うようにしましょう。
ミスに向き合い改善していけるスキルは、社会生活を営む上では非常に基本的なスキルです。
文章にして何度も見直すようにする
HSPの中でもとくに怒鳴り声(音)に強く反応してしまう人は、自分の反省すべき内容を文章に整理して何度も見直していくことが肝心です。
文章から怒鳴り声が聞こえてくるわけではないので、音に対して過剰に反応する心配はありません。
また、文章にまとめておけば仕事のマニュアル作りや、チェックリストを作るなどの応用も可能です。
自分の失敗談を元に、後輩の育成・指導に役立てて行けたり、同じく繊細なHSPの人を指導する場面でとても重宝されることもあるので、記憶が比較的鮮明なうちに文章化するようにしましょう。