二次創作活動での承認欲求に関する考察

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公式が発表している作品をもとネタにした創作活動…つまり、二次創作活動をしている絵師(漫画、イラストを書く人のこと)、物書き(小説を書く人のこと)は、自身が抱える承認欲求のせいで悩みやもどかしさを感じる事があるものです。

ここでいう承認欲求とは、自分の作品が多くの人の注目を浴びて評価されていることや自分自身が実力のある絵師、物書きとして注目を浴び、周囲から認められている事と言っていいでしょう。

今回はそんな二次創作活動における承認欲求についてお話しいたします。

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「二次創作活動が受け入れられる=創作者が受け入れられる」わけではない

二次創作活動はあくまでも公式が発表した作品のネームバリューや、自分が創作活動を始める前よりも既に活動している絵師、物書きによるジャンルの盛り上がりに依存しているところがあり、純粋に自分の作品や実力が正しく評価されていると考えにくい部分があります。

そのため、自分が発表した作品が多くの閲覧数を稼いだり、イベントで評判を呼んだとしても、それは公式のネームバリューやそれまでのジャンルの盛り上がりの恩恵を受けただけにすぎず、トレンドに上手く乗れているだけで自分の作品はしっかり見られていないのではないのか…という「承認されていない」と感じる不安があります。

自分の貴重な時間を費やして作った作品も、それを受け取る人にとってはたまたま目に入った流行作品のひとつであり、なんとなく閲覧しているだけでしかなく、その作品に込められた創作者の熱意やこだわりまでを見るには至ってはいない。

数字としては確かに人気を集めていることはわかるのに、それが自分という存在や作品をしっかり受け入れていたり、正しく評価している根拠と呼べるのかわからない不安を感じているのです。

(…なお、そもそもが原作ありきの二次創作であり、二次創作作品を買う人が皆、創作者の方を見て買っていると思い込むのも、やや思い上がりも甚だしいと言う見方もできなくはないですが…)

二次創作活動で集めた承認は流行に左右される不安定さがある

仮に、トレンドに上手く乗れて多くの評判を得る事ができたとしても、他の作品が人気になったことで、自分のファンが減少する…つまり、今まで得ていた承認が得られなくなる恐れがあります。

多くの人に自分の作品を見て欲しいと願っている創作者にとって、一度手に入れた名声や評判が、自分の努力ではどうにでもできない流行り廃りという外部要因によって、簡単に失われてしまうのです。

作品をアップしても、以前のような多くの閲覧数やコメントを得ることができない。アップするたびに反応の伸びが鈍くなる光景にいらだちや不安を覚えてしまう。こうした状況は、想像以上に受け入れがたく辛いものでしょう。

もちろん、今まで自分が乗っていたトレンドの波が危うくなっているを確認できたのなら、別の波に乗り移って、そこで作品を作って承認欲求を満たすことも可能です。

しかし、乗り移った先でも「この人気がいつまで続くかわからない」「次のジャンルを見つけておかなければ…」という漠然とした不安や焦燥が付きまといます。

数字では多くの注目を浴びてはいるものの、その注目がいつなくなってもおかしくない…という、数字に振り回されて消耗してしまう辛さが、多くの人から注目を浴びる上では切っても切れない問題といえるでしょう。

「作品を作りたいから作る」のではなく「注目を集めたい、維持したいために作品を作る」ことに疲れる

ここまで来るとなんとなくお分かりかもしれませんが「作品を作りたいから作る」のではなく「注目を集めたい、維持したいために作品を作る」ことで、しんどさを抱えている事が伺えます。

前者は心理学における内発的動機付け、後者は外発的動機づけと言い換えてもいいでしょう。

両者の違いは簡単にまとめると以下のとおり。

  • 内発的動機づけ:その活動がしたいからしている行動。金、名誉、承認のためではない純粋な自分の好きや熱意からくる行動
  • 外発的動機づけ:何かの目的のためにしている行動。金、名誉、承認のための行動がこれに当たる。

一般的に、行動の続きやすさは「内発的動機づけ>外発的動機付け」とされています。

つまり、承認欲求を満たすという目的のための活動は、ただ純粋に作品を作りたいから作る活動と比較すると続きにくく、承認が得られなくなればやめてしまいがちという理屈になります。

しかし、承認が得られないからといってテスト後に勉強をスパッとにやめるように、創作活動を割り切って止められる人は多くないと思います。

そもそも、創作活動は勉強と違って「仕方なく…」という義務感で始めるようなものではなく、「作りたいから作る」という内発的な動機付けがスタート地点になる人が多いものです。

しかし、活動を続けるうちに「作りたいから作る」という意識が薄れ、

  • 閲覧数
  • コメント数
  • pixivなどのコミュニティ内でのランキング
  • SNSのフォロワー数、拡散されやすさ、いいねの数

…など、自身の承認欲求を満たし、他者からの承認を獲得する目的のための活動へと変わってしまう。

内発的動機付けからくる行動だったのに、承認欲求のための外発的な動機付けと変わってしまった結果、創作活動を続けることが辛さや葛藤を覚えるのです。

承認のために原作へのリスペクトを欠いているという不安

二次創作活動は元ネタあってこそのものであり、原作の権威を借りているという節が否めません。(もちろん、そんなこと気にせず創作している人もいるでしょうけど…)

権威を借りる以上は、原作サイドにとって失礼・無礼がないように、ある程度のリスペクトを払うのが二次創作をやる上でのマナーである、という考えを持っている作家は多くいます。

しかし、リスペクトすることは、同時に自分が作りたい作品が作れなくなるリスクもあり、創作者にとっては実に悩ましいものです。

リスペクトを軽視し、自分なりの解釈や改変を加えた自分が描きたいものを作れれば、自分が作りたいという願いも、自分の作品が認めらて承認されることも叶うかもしれませんが、そのことは同時に原作へのリスペクトを欠いた由々しき行為であると指摘される不安が、二次創作における承認をめぐる悩ましい問題だと思います。

一次創作をすれば問題は解決されるというわけでもない

なお、最初から自分で設定、キャラ、ストーリーなどを全部作るオリジナル作品(一次創作)なら、そうしたリスペクトや権威云々を気にしなくてはいい一方で、そもそもの作家としての自身の知名度がなければ多くの人から見られず孤独味わう辛さがあります。

いくら好きでやっている創作活動とはいえ、これもまた内発的動機付けのみではなく、認められたい、褒められたい、注目を浴びたいという承認欲求を満たすための目的…つまり、外発的動機付けもある程度は含まれているものです。

内発的動機付けと外発的動機付けはどちらも相容れないものであり、人はどちらか一方のみの動機しか持っていないように語られがちですが、実はどちらの動機も持っているものである。

そうした視点を持つことが、創作活動における承認欲求の辛さを軽くするためには大事なのではないのかなぁ…と感じます。

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