お盆やお正月に実家に帰省する人がほとんどだとは思いますが、中には「実家に帰りたくない」と思いつつも、実行に移せず渋々実家に帰らざるを得ないという人も少なくないと思います。
単純に「帰省ラッシュに巻き込まれるのが嫌だ」とか「実家が遠方にあるので移動が大変」という理由で実家に帰りたくないことも考えられますが、あくまでもそれは表面的な理由でしかなく、裏の理由はなかなか人に共感されにくいものである、という人もネット上でよく見かけます。
もちろん、結婚相手の実家(義実家)に帰省するのが苦手という場合なら、それなり共感を呼びやすいとは思います。
ですが、今回の記事では自分の生まれ育った実家に帰りたくないという、悩みを持つ人の心理についてお話しいたします。
休みに実家に帰りたくない裏にあるもの
自分の生まれ育った実家なんだから、多少面倒でも安心感を味わいに帰るのが普通」「親に顔を見せて親孝行するのが普通」と考えている人は多いことでしょう。
心理学においても家族は人間関係の基本であり、(基本的には)安心できる居場所なので帰るべき場所ではありますが、
- 身体的・精神的虐待を受けた。
- 精神的に追い詰める毒親家庭だった。
- 家庭に対して居場所を感じられなかった。
などの出来事が原因となり「実家に帰りたくない」という気持ちが生まれてしまうのです。
それでは、以下で詳しく説明していきます。
毒親・毒家族に会いたくない
毒親とは、毒のように子供の(主にメンタル面に)悪影響を与える親のことを指す言葉です。
家族としての機能が不十分な家庭で育った子供を指す「アダルトチルドレン(AC)」から派生した概念でもあります。
わかりやすい、毒親の例としては
- アルコール依存性・ギャンブル依存性などの依存性を患ったまま育児をした。
- 身体的虐待・精神的虐待・ネグレクト・モラルハラスメントなどを行っていた。
- 子育てに対して強迫的で過干渉、あるいは無関心で養育を放棄。
- 兄弟姉妹間で愛情の格差、つまり愛したい子と愛せない子を作り接した。
- 子供に精神的に依存し、自立を妨げるような育て方をした。
主に、毒親と言えば「母→娘」向けに書かれている本や記事が多く見られますが、当然ながら「母→息子」「父→娘」「父→息子」間や「両親→子供」間でも起こります。
また、あまり使われていませんが、兄弟姉妹や祖父母などの家族全体で特定の子供に精神的に負担を与える「毒家族」という概念もあります。
このような、毒のある家庭でストレスを受けて育ってきている人からすれば、自分が生まれ育った実家に帰ることは、まさに自分からストレスを受けに行って疲れてしまうことと同じです。
せっかく(毒)親元を離れて穏やかな生活を送っているのに、わざわざしんどい思いをするために実家に帰る気持ちには到底なれません。
もしも実家に帰ろうものなら、例えば高圧的に支配しようとしてくる親に追い詰められたり、あまり言いたくないと感じているプライベートな話(恋愛の話、夫婦関係、子供の予定など)を無神経に聞いてくることに疲れ果ててしまいます。
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家族、親族との仲が悪い
毒親とまではいかなくとも、純粋に家族であっても性格や考え方が合わずに家族仲が悪い、あるいは親戚との仲が悪いという理由から実家に帰りたくないというケースもあります。
多くの人は「家族は仲が良いもの、安心感を覚える関係」だと感じているものですし、仮に仲が悪くても「そういうことよくあるけど、家族なんだからそのうち仲良くなれるものだよね」とピュアな気持ちを持つものでしょう。
しかし、そんな言葉が通用しないほど仲が悪く、顔も見たくなければ思い出すのも辛い、できれば実家に近寄らずに穏やかに暮らしたいと、人にはなかなか打ち明けられない悩みを抱いている人もいるものです。
また、親族であっても
- 価値観や道徳感が違いすぎる
- 毒祖父母や毒親族なので会いたくない。
- 親族間で確執がある
などの原因で、実家に帰るのが嫌だと感じることもあります。
子供嫌いで親戚の子供の相手をしたくない
純粋に子供が嫌いという理由から、帰省するのが嫌だと感じることもあります。
帰省するとなれば、親戚の子供や従兄弟、年の離れた弟妹の相手する場面も出てくるものですが、子供嫌いのせいで年の離れた子供の面倒を見るのが嫌なので実家に帰りたくないと感じるのです。
家族仲が悪い同様に子供嫌いは周囲から共感を呼びにくいどころか「子供嫌いなんて大人げない」「子供嫌いと言ってる人のほうが子供っぽくて幼稚」と非難轟々になることが多く、帰省しない理由としてストレートに言いにくい風潮があるものです。
子供が可愛いという意見にも同意こそしますが、その意見を持っている人ばかりではありません。
もちろん、子供嫌いだからといって無実の子供に嫌がらせをしようものなら、子供を傷つけるだけでなく、自分の社会的地位を失う羽目になることは理解している人がほとんどでしょう。
そのため、子供が集まる帰省先にあえて行かず、お互いに嫌な思いにならないよう外からは見えにくい配慮をしているのです。
実家に居場所がない
自分が育ったはずの実家なのに、自分の物理的・精神的な居場所がなく安心感を得られないから帰省しないというケースです。
上の毒親の例でも触れたように、家庭内が安心できる居場所とは到底呼べず、実家を離れ独り立ちすることでようやく落ち着ける居場所を確保できた人であれば、わざわざ居場所のない実家に帰るのは自分の意に反する行為といえます。
仮に帰ろうものなら、疎外感や孤立感を覚えて苦しんだり、自分の育った場所のはずなのにないい思い出が残っていないという虚無感に苛まれてしまいます。
結果として帰省する前よりもどっと疲れが増す羽目になってしまいます。
何らかの問題を抱えた人がいて気まずい
帰省すると、大抵は家族や親戚を含めていろんな人と顔を合わせる事になります。
しかし、合う人の中には
- ニート、引きこもり
- 宗教がらみの関係
- マルチ商法などの悪徳商法をしている
- 大量の借金を抱えている
- セクハラ、モラハラしてくる
- デリカシーがなさすぎる
- 別居中あるいは離婚したばかりで気まずい
など、うまく付き合うのを邪魔するような問題を抱えている人と、渋々顔を合わせなければいけないこともあります。
このような人と出会うのは、例え年に数回しかない帰省ですら御免被りたい…。そんな経緯で実家に帰りたくないと感じるのです。
実家に帰りたくない悩みが理解されず生きづらさを感じる
上でも書いたように事情により実家に帰ることに苦痛を抱いていたり、そもそも実家に帰らないほうが落ち着くと感じている人もいるものです。
ですが、「実家のような安心感」という言葉(ただしネットスラングだが…)にもあるように、実家は落ち着ける場所であり帰りたくなるものであるという考えを持っている人の方が多数派です。
そのため「実家に帰りたくない」という正直な気持ちを持っている自分の方がおかしいのではないかと自分をせめてしまいがちです。
また、実際に実家に帰ろうとしない人は
- 自分の家族を愛していない薄情な人。
- 実家に居場所がない残念でかわいそうな人。
- 家族ですら距離を置こうと信じられない人。
と、どこか異質で異物のような人だと思われがちです。
親孝行できないことで自己嫌悪に陥ることも
また、多くの人が盆休みや年末年始に帰省するのが普通だと感じている分、その普通にどおりに動けない自分に対して不甲斐なさや罪悪感を抱いてしまうことがあります。
実際に実家に帰らず自分にとって居心地のいい環境過ごすことを選んでも、周囲や世間に合わせられない自分を自覚してしまい、気分が休まらない休暇を過ごしていることもあるのです。
実家に帰ったらしんどい。かと言って、帰らなかったら親を悲しませているような気がして辛いというジレンマから自己嫌悪に陥ることもあります。
事情も知らない人からすれば、長年実家に帰ろうともしない人は「なんて親不孝者なんだ」と感じることもあるでしょう。
「いつまでもあると思うな親と金」ということわざにもあるように、親の命にも限りがあることはわかっているのですが、その親に会えば自分が苦しい。しかし、帰省しなければ親を悲しませたり、自分の品性を疑われてしまうというジレンマに苦しむのです。
毒親家庭で育った人に多いのが、例え毒になるような親であっても、完全に親に対する未練や執着を立ちきれずに、生きづらさを抱えたまま過ごしているというケース。
毒親と物理的に距離を取れても、精神的に距離を取ることは難しいことを感じる次第です。
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