かまってちゃんと言えば、他人から注目を集めようとあらゆる行動に出てしまった結果、他人に迷惑をかけてしまう人を指すネットスラングです。
かまってもらうための行動が他人を煽ったり、挑発するような不快感を誘うようなものになる。被害者ヅラをして周囲から慰めの言葉をかけてもら得そうな素振りをしてきてめんどくさい。
また、露骨なまでに「かまって欲しい」というメッセージを発していることが感じ取れるため、「そんな人に構ってやるもんか」と反発心を抱いてしまうことで、お互いの関係は深まらず、ただただ嫌な印象ばかりが残ってしまう。
そんなかまってちゃんですが、心理学の知識を用いて見た場合、その特徴は「自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)」に通ずるものが多々あります。
今回は、そんなかまってちゃんと自己愛性パーソナリティ障害の関連性についてお話いたします。
自己愛性パーソナリティ障害の診断基準から見るかまってちゃん
米国精神医学会が定めた自己愛性パーソナリティ障害の診断基準に記載されている、診断項目を見ていくと、「かまってちゃん」の行動の特徴をよく表している記述が見られます。
1.自己の重要性に関する誇大な感覚 (例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないのにもかかわらず優れていると認められることを期待する)
2.限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
3.自分が特別であり、独特であり、ほかの特別なまたは地位の高い、人、集団、組織にしか理解されない、あるいは関係があるべきだと信じている。
4.過剰な賞賛を求める。
5.特権意識。つまり、特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由もなく期待する。
6.対人関係で相手を不当に利用する。自分の利益や目的のために他人を利用すること。
7.共感の欠如。他人の気持ちを理解しようとしない。
8.しばしば他人に嫉妬する。あるいは、他人が自分に嫉妬していると思い込む。
9.尊大で傲慢な行動や態度。
(参考:『パーソナリティ障害がわかる本』より)
診断基準は全部で9つ。うち5つ以上当てはまると、自己愛性パーソナリティ障害と診断される。
項目の中で赤色で目印をつけている4,5,6,9は、かまってちゃんの特徴と類似…というか、むしろかまってちゃんの特徴そのものを端的に表していると感じます。
他人から注目を集めるために、他人の事情を無視して自分の要求(認めて欲しい、受け入れて欲しいなど)を一方的に押し付けようとするところ。周囲からチヤホヤされて、特別扱いされる事をナチュラルに求めるところ。自分の個人的な(承認)欲求を満たすために、他人を利用して貢がせたり、褒めさせたりして、他人の時間・労力・金銭を奪うような行動に出てしまうところ。そして、そんな傲慢な行動をやってのけてしまうところ。
かまってちゃんな人が見せる、自分勝手でわがままな行動を見ていけば、それらは自己愛性パーソナリティ障害の診断基準に書かれていることそのもののように感じます。
「自分は他人から構ってもらって当然」という考えが人間関係のトラブルを招く
かまってちゃんが周囲の人と衝突する原因になるのが「自分は他人から構ってもらって当然」という、自己中心的な考えの強さでしょう。
他人からチヤホヤされたり、常に賞賛や絶賛の声をかけられたり、尊敬や憧憬の眼差しを受けるだけでなく、場合によってはあまりの魅力に嫉妬する人も出てくる違いない…という、自意識過剰な考えで普段から他人と接してしまう。
しかし、「常に」注目を集めるほど、周囲の人も暇を持て余しているわけではないし、ましてや注目されて当然と思っている当人に、人をひきつけるほどの際立った魅力があるとはお世辞にも言えず、ごく平凡かつ妥当な扱いを受けることになる。
そんな平凡人扱いされている状況に対して、「構ってもらって当然」と考えているかまってちゃんな人は強い違和感と不快感を覚えてしまう。
そして、モヤモヤとした気持ちを晴らすべくも、
- しつこくかまってもらうためのアピールする。
- 他人から注目を集めるためにも他人を挑発したり扇動する方法で注目を集めに出る。
- 注目しない人「あの人を見る目がなくて残念な人」を見下し蔑む態度で接する
など、穏やかではない行動に出て顰蹙を買ってしまうために、人間関係での衝突が堪えないのです。(もはや、かまってちゃんではなく困ったちゃんと表現したほうが良いかもしれない)
なお、そのほかにも、
- 炎上スレスレのような倫理・公序良俗に反する行為に出ることで注目を集めようとする。(例:バイトテロ、過激・極端・奇抜な行動に出る…など)
- 注目されない状況を前に被害者ぶって、同情や憐憫を誘う事で注目を集めようとする。
- あえて泣く、泣く素振りを見せる(=嘘泣き)など、涙を使って情に訴えかけようとする。
- あえて無視する、いじける、拗ねることで相手の関心を引こうとする。
- 注目を浴びるために嘘を付く。デマ情報をばらまく。
など、注目を集める方法としては問題点が多い行動に出てしまい、半ば悪目立ちをするような形になってでも、かまってもらうことを周囲に期待する。
しかし、当然ながら問題点が多いため、指摘や非難(場合によっては罵詈雑言)の声が集まってしまい、チヤホヤされる状況とは程遠い状況になって苦しむ。
あるいは周囲の人がかまってちゃんの行動パターンを学習し「ま~たいつもの炎上芸が始まった」と感じて、次第に相手にされなくなり孤立してしまうのも、かまってちゃんならではです。
なお、人によっては炎上したことで「アンチが出て来るぐらいに自分は人気者である」と現実を都合よく歪めて解釈しているように見られるかまってちゃんもいます。
ネット炎上が持つ情報拡散力がビジネスとなる「炎上マーケティング」に長けている人の中には、かまってちゃんに通ずる特徴を感じさせることもあります。
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防衛機制の退行、合理化から見るかまってちゃん
心理学の防衛機制の一種である「退行」と「合理化」も、かまってちゃんと非常に関連深いものがあります。
退行とは、心理的に受け入れがたい状況に陥った時に、以前の発達段階の状態に戻ることでその状況に対処する防衛機制の一種です。(なお、「退行」と表現するよりは、「幼児退行」「赤ちゃん(幼児)返り」と表現したほうが馴染み深く理解しやすいと感じます。)
立派な大人なのに我慢したり、対等な交渉によって構ってもらえる状況を獲得するのではなく、子供のようにダダをこねる、拗ねる、いじけるなど、立派な大人であればまずしないような方法で構ってもらえる状況を獲得する様子は、まさに「退行」することで受け入れがたい状況に対処していると考えられます。
一方で「合理化」とは、都合の悪いことに理由をつけて自己正当化し、受け入れがたい状況に対処することです。
かまってちゃんの人が、自分のかまってほしいがためにやっている自己中心的な行動を反省もせず、改めることもしない。それどころか「人を見る目がない」とか「どうして自分のことを構わないのだろうか不思議」とか「嫉妬しているから自分に構おうとしない」など、他人に原因があると都合よく解釈して、構ってもらえない状況に対処することは、まさに「合理化」していると言えます。
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