twitterやFacebookのようなSNSのタイムラインを眺めていると、あんまり目にしたくないショッキングな写真や差別や攻撃的な書き込み、キラキラした妬ましいと思える日々の写真などをつい目にしてしまい、精神的にブルーになってしまうという経験はないでしょうか。
SNSでそういった内容をつぶやくアカウントをフォローしていなくても、リツイートやシェア、広告などでふとした時に流れてきて、ついつい流れを追いかけてしまいストレスを抱えるというのは、SNSが一般的になった現代ならではの現象です。
筆者も数年前に、「人工中絶の真実を知ろう」とか「殺処分される犬や猫を救おう」という内容で、ショッキングな写真や動画がタイムラインに流れてきて、興味を持って調べた結果精神的に参ったことがあります。
また、イスラム国による活動が話題になったときは、世界で起きている戦争やテロの恐ろしさを知ってもらおうと、あえて過激な写真付きの投稿が流れてきたのを目にしてしまい、同様に詳しく検索してストレスを抱える経験もありました。
このように、自分にとってストレスになるということが予想できているのに、つい深入りして精神的なダメージを受ける事を「ソーシャル自損事故」と命名した人を見かけて、今まで感じたモヤモヤとした感情を的確に言い表していると感じています。
今回は、SNSを快適に使うために必要な「ソーシャル自損事故」についてまとめていきます。
ソーシャル自損事故とは
ソーシャル自損事故とは、自分にとってストレスになる、見ると精神的なダメージを受けてしまうのがわかっているのに、つい読んでしまって精神的なダメージを受けてしまうという状態を表した言葉です。
言葉が出来た浅いので、リツイートのようについ自分の意志に関わらずつい目にしてしまうものから、ストレスになるとわかっているのに自分からストレスになるつぶやきを見に行ってしまうという事を指して使っている人もいます。
実際の自損事故のように、あくまでも自分自信に原因があり、自分でストレスの発生源に近づき傷つきに行っている状態です。ネットスラングで言えば、自分から地雷を踏みに行っているという状態になります。
このような見てはいけない物を見てしまう、聞かなきゃよかった事を聞いてしまうことで、精神的に傷つく事は、SNSに限らず現在世界でもある事です。
親しい友人の過去、自分の両親や親戚の秘密など、他人には言えないからこそ黙っていた、秘密にしていたものをむやみに聞き出せば精神的にダメージを受けてしまうことがありますね。
「知らない方が幸せ」「聞かなければよかった」という言葉のように、何もかも知ろうとすれば、当然自分にとっていい情報だけでなく悪い情報も知ってしまう場面が出てきてしまうものです。
ソーシャル自損事故が起きる背景
いいねやRTの数に同調圧力を感じている
SNS上で自分にとってストレスになっているのに関わらず、つい投稿を読んでしまって傷つくのは、読もうとしている投稿に「いいね」や「リツイート(RT)」などの数字が付いていることが影響していると考えることができます。
「いいね」や「RT」などの数字が大きいという事は、言い換えれば多くの人がその投稿を見ている、興味を持っているという事になります。
これに関して「たくさんの人が見ているのに、自分だけ見ないのは変」「みんなRTやいいねをしているのに、自分だけしていないと嫌われてしまうのでは」というように感じた経験はありませんか。
他人の行動に敏感で同調圧力を感じやすい気質の人の場合、たくさん「いいね」がついている投稿を無視する事よりも、SNS上の周囲の行動に合わせない方がより大きなストレスと感じてしまいます。
いずれにせよストレスを受けるのなら、重い方よりも軽い方を受けた方がいいと感じるので、みたら気分が悪くなるのに見てしまい、ソーシャル自損事故を起こしてしまうというわけです。
周囲に流されやすい、多数派の意見に同調してストレスを抱えてしまう人は、人間関係の中で適切な距離感を取れるように心がけ、ストレスを溜め込まないようにしていきましょう。
ネットにつながっていないと不安を感じる
ソーシャル自損事故をしないためには、SNSからログアウトしてオフラインの状態で過ごすのが一番効果的な方法です。
しかし、ネットにつながっていないとぼんやりとした不安を感じる。不安を感じるからこそ、目的もないのにただなんとなくSNSを開いてしまうという経験はないでしょうか。
人間にはリアル、ネット関係なく誰かとつながっていたいという「親和欲求」があります。親和欲求が強い人ほど、誰かとつながるための行動を起こしやすくなります。
SNSが登場する以前であれば、親和欲求が強い人は、頻繁に電話をかけたり、手紙を出すといった行動で、人とつながろうとしていました。SNSが登場してからは、電話や手紙よりも手軽で(スマホ代・通信費)を除けば安く済むSNSに没頭してしまいます。
見ればストレスになると分かっていても、自らソーシャル自損事故を起こしてしまう人には、親和欲求を満たすためにあえて傷つくとわかっているのに、自分から情報の荒波に飛び込んでしまうということが考えられます。
親和欲求そのものは決して悪いものではなく、孤独による不安やストレスで潰れないための大切な欲求です。問題は親和欲求のコントロールができていないという事です。
なお、親和欲求に似たような欲求に自己承認欲求があります。自己承認欲求は「自分を認めて欲しい」という欲求ですが、よくよく見れば「自分を認めてくれる誰かとつながっていたい」という人とのつながりを求めているという心理も含まれています。
SNSは知りたいと刺激を煽られやすい
SNSの世界では、テレビや新聞などのマスメディアには無い即時性があり、リアルタイムに多くの情報を手に入れることができるという特徴があります。
そのため、たとえ見れば傷つくとわかっている情報であっても、キーワードが検索に引っかかるとリアルタイムに大量の情報が見つかります。
また、検索の仕様として「実はあなたが今検索している情報には、こんな関連情報やキーワードがありますよ。」と関係のある情報がサジェストされてしまい、気が付けば際限なく情報知ろうと行動していた、という事にもつながってしまいます。
検索のサジェストそのものは、検索してきた人がより詳しい情報を知るためのサービスに過ぎませんが、一方でストレスになるとわかっている情報を知りたいという気持ちを煽るという側面も持っています。
自分の評判が気になってエゴサーチをしてしまう
一つ上の内容の派生ですが、自分自身や自分の意見が、SNS上でどんな風に思われているか調べることを「エゴサーチ」と呼びます。
スポーツ選手や芸能人のようなTVで見かけるような人に限らず、ごくごく平凡な生活を送っている学生や社会人であっても、自分の見ていないところで自分に関する根も葉もない噂や悪口を言われたり、実は影で褒められているファンがついているということがSNSの世界ではあります。
もちろん、自分にとって肯定的な意見であれば安心できますが、悪口や批判を見ればショックや怒りを感じて精神的なダメージをくらいます。
エゴサーチをしてしまう人は、「自分は他人からどう見られているのか」が気になって仕方が無いという気持ちが強く、人間関係に過剰なまでに気を遣ってしまうという傾向があります。
SNSは公的自己意識や対人認知が強い人がのめりこみやすい
「自分が他人からどう見られているか」という事は心理学では「公的自己意識」と呼ばれています。
この公的自己意識が強い人ほど、周囲の目に敏感で、周囲から浮いてしまう事を恐れてしまいます。
また、公的自己意識と似たものとして「対人認知」と呼ばれる欲求ももあります。
対人認知は、心理学の言葉で他人がどんな考えかたや性格、行動をする人間なのか知ろうとする事を指し、対人認知が強すぎると他人に依存してしまう、過剰に気を遣ってしまうことになります。
公的自己意識や対人認知が強い人はSNSのような周囲の評価がすぐにわかる、数値化されてしまうツールにのめり込みやすく、気が付けば、SNS上の他人の評価や目線に生活を支配されてしまうということがあります。
精神的な自称行為の一種
手首を刃物で切るリストカットや髪の毛を抜く(抜毛症)、爪を噛むといった自分で自分の肉体を傷つける行為を自傷行為といいます。
SNSで傷つくのがわかっているのに、投稿を見てしまう人には、この自傷行為と近い意味合いがあるという見方もできます。
肉体を傷つける自傷行為は、普段の生活でストレスや不安、自己否定感を和らげるために、あえて痛みを感じて脳内麻薬を出すために行っているという側面があります。
精神的に傷つく経験にも、肉体を傷つける自傷行為のように、不安やストレスを紛らわすために行っていると考えることができます。
なお、自傷行為という言葉の定義は、厳密には体を傷つける、体に毒物を摂取するといった肉体を傷つけることであり、精神的に傷つくという事は含まれていませんので「精神的な自傷行為」として説明しています。
ソーシャル自損事故を防ぐためにできること
ソーシャル自損事故の背景には、自分の思考や日常生活がSNSにどれだけ支配されているか、または精神的な悩みの解消先がSNSに依存しすぎていないか、といったことについて考えていくことが大切になります。
スマホ依存のようになってしまえれば、当然ソーシャル自損事故に巻き込まれる場面も増えてしまいます。
スマホ依存を克服するには、SNSを使う時間を限定する、フォロワーや友達を整理する、ミュート設定などで見たくない情報にフィルターをかける、最終的にはSNSをやめる事も視野に入れた対応をとっていくことになります。
また、SNS以外にも楽しめるものや熱中できるものに時間を費やすよう習慣を身につけていくようにしましょう。
精神的な自傷行為がクセになっている場合は、どんな小さなことでもいいので自信や自己肯定感を身に付ける、精神的な自傷行為が起きる原因となっているストレス源から離れるようにするのが重要になります。